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2019年08月09日21:13

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表現の不自由展・その後 からの誤配

ぼくは右寄りであるという自覚がある。もっとも正確な基準なんて知らないが。
たまたま芸術監督の津田大介氏のことは知っていた。知らなければたいした感心も抱かず「キチ○イ左翼が、またやってるよ」で終わらせて、そのうちそんなことすらあったことも忘れてしまっていたのだと思う。それが、たまたま既知の人だったことで考える機会になった。こういうのを氏の友人である東浩紀ふうに言えば「誤配」になるのだと思う。

で、ぼくが考えたのは「考えて言葉にする」ことについてだ。

人類史上もっとも言葉が使われる時代だと思うのだが、誤解を恐れずに言えば…それらの言葉は「よく”考えられた”言葉ではない」。それは2つの意味で。ひとつは「遠慮が機能しない」もうひとつは「選択肢が多すぎる(否定的言説つき)」からだとぼくは考えた。

ひとつめの「遠慮が機能しない」というのを、ぼくなりの言い方にするとこうなる。空間を異にした生身の届きにくい言葉には本来なら備わっているはずの「防御」機能が抜け落ちていて、ことさら「攻撃」面に特化してしまう。つまり面と向かった話し合いや、重苦しい場面でおもんばかるはずの…相手の気持ちや場の空気。それを無視、一方的に都合を通すとどうなるかという話で。普通ならば必ずといってよいほど「手痛いしっぺ返し」がある。その本来あるはずのペナルティがなくなってしまったことによって「遠慮が機能しなくなってしまい」無意識で行っていた「思考の型それ自体」が使用頻度的に「共感や共和」のタイプが多かったものから、テレビやスマホを見る「支配や統制」のタイプの思考を多く使うバランスの方へ変わってきているのだと思うのだ。そしてかつては「TV」に対しての「不能のパラノイア」の「支配、統制型思考」はことごとく失敗していたのだが、ネット社会になってからは徐々に成功体験を得ているのが気にかかる。今回の件はもっともたる好例になってしまったし。パラノイアの成功体験と聞いたら悪い予感しかしない…。でもこの偏執狂も、間違いなくこの時代の主体の一面だと思わざるをえないわけで。

「選択肢が多すぎる」。例えば多すぎるレストランメニューを前にぼくたちは、どうするだろう?迷う?考えるのがめんどくさくなり連れの人と同じものにする。一か八かになる。前もって食べるものを決めておく。だいたい食べる前だけでもこのくらいは何となく考えているものだ。
そして食べるものを選んだとたんに連れの1人から嫌なことを聞かされるのだ…。
「え…それ食べるの?うそでしょ」
味の感想をしゃべればまた聞きたくないことをわざわざ聞かされるのだ…。
「ぜんぜん伝わらない」
この時代の主体の、もう一面はいつもこんな状況におかれている。ぼくたちはたくさんの選択肢に取り囲まれて、その選択肢の数だけ発せられる否定的言説にさらに包囲されている。そしてぼくたちはそのことを嫌というほど身に染みてわかっている。ぼくたちは常に引き算や割り算にかけられて疑心暗鬼になり相対化のブラックホールを背中に感じる日常をおくっている。その抑圧の裏をめくれば、何かを信じてしまいたい慾望があるのではないだろうか。

以上を踏まえ、さらに口語的に表現すると…
「聞き慣れないことを言われても、選択肢(情報)が多すぎてじっくり吟味してられません。悪口ですか?時間がないのでわかりやすく説明してくれますか?やっぱり何を言ってるのかわかりませんね。私には私の好きな世界があるんだバーカ、しね。」
つまり端的に言うと「嫌なことを言う奴ばかりでイヤになる、自分の好きなものの世界でわたしは生きていく!」だとなるわけで…。




「遠慮が機能しない」つまり「匿名性の問題」というのは「フェイスブック」などのアーキテクトの仕方である程度、解消できる問題だと思っています。
でも「選択肢が多すぎる」問題はどうか?ぼくたちの社会が多様な価値を受け入れようとするなら必ず「自分世界に閉じ籠る人」も受入れなければならないし。それは「記名性」にしたからといってなくなるようなものではない。
では 「自分世界に閉じ籠る人」の「よく考えられていない言葉」を「よく考えて言葉にする」ようにさせるにはどうすればよいか?

そこでぼくが希望を持てるんじゃないかと期待している哲学の言葉が最初の方で使わせてもらった「誤配」だ。
その意味は多義的だが、ぼくの使い方もできると思う。
閉じていた世界に別回路から異物が混入することによって世界が少し変容する。



補足…「よく考えて言葉にする」というのは、ぼくのなかでデリダの「エクリチュール」的なものを思い描いている


■神戸市、津田氏登壇のシンポ中止=「あいちトリエンナーレ」芸術監督
(時事通信社 - 08月09日 21:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=5742942


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