今の実家の近くには川がある。
この川には名前が無いと伺った……少なくとも公的な地図に書かれる名前は。
詳しくは後述する為、一旦割愛させて欲しい。
但し、地域で呼ばれている愛称の様なものはある。
この川が私の記憶に登場するのは、私がここに最初に引っ越して来た、1歳と数箇月の頃。
目に映る何もかもが、予備知識無しの不可思議で溢れていた、あの頃。
橋から落ちたり、川沿いの道から落ちたり、魚を獲っていて草履が流されたり、釣り糸を垂れている所を話し掛けられたり、……。
数年前には、一部が道路拡張の為に埋め立てられ、その際に、支流の数本は廃河川に成った。
丁度、魚釣りを楽しんでいた御気に入りの数箇所は、アスファルトの地面と成って、陽射しの熱を溜め込んでいる。
川で洗濯や食器洗いをしている御近所の方も住んで居らっしゃった。
その直ぐ傍で水浴びをしている方が居らっしゃった。
夕飯を調達する、と仰って海老や魚を捕まえている方も居らっしゃった。
私も野菜や果物を洗うのに、この川を今でも使っている。
この川、改めて調べてみると、河川法の適用は受けないが、市区町村郡の管理下にはある……様ではある。
法定外公共物なの……であろうか？
今一分からぬ。
幾つかそれっぽい公的な名前もあるにはある様だが、地図では見付けられず……。
工事関係者と御役所さんと一部研究者からしか、この名前を伺った事は無い。
閑話休題、兎に角、この川は私を育ててくれた一本と申しても過言ではない。
自然に恵まれ、そこでの人々との交流を得られ、自然の厳しさを知り、自然の温かさを感じる。
川は色んなものを橋渡ししてくれるが、この橋渡しが無ければ繋がりは断たれて仕舞う。
この川で橋渡しをしているのは、勿論この川とそこに架かる橋そのものも然りではあるが、誰かが話し掛けてくれる、そして誰かに話し掛け易い、そんな憩いの場としての空間も、その橋の一部なのではないかな。
夜の川も不思議な気分だ。
今年の夏も、蛍が光ると嬉しいな。
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