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2019年01月22日03:27

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受け継がれるチャンプの魂と代理戦争「クリード 炎の宿敵」を観た!

 やっぱボクシング映画はええな!

●クリード 炎の宿敵


【物語】

 アメリカが生んだ英雄・アポロ=クリードの隠し子であるアドニス=クリードは、同じくボクシング界の英雄・ロッキー=バルボアの指導のもとに才覚を現し、ついにチャンピオンベルトを手に入れる。恋人・ビアンカと結婚し子どもも授かり、順風満帆なアドニスの前に一人の選手が挑戦状を叩きつけた。

 ロシアのウクライナからやってきた無名のボクサー・ヴィクター=ドラゴ。彼の父・イワン=ドラゴはかつてアポロを試合上で殺害し、その後ロッキーに敗れ去った過去の亡霊だった。国を追われた後、復讐心ひとつで息子にボクシングを叩き込み、今再びロッキーたちの前に姿を現したのだ。ハングリー精神むき出しのヴィクターを前に、アポロの悪夢をぬぐえないロッキーは試合を受けるべきでないと忠告するも、血気盛んなアドニスは試合を受けると言い放つ。

 因縁の対決と沸きたてるメディア。一人の男として闘志を奮い立たせるアドニス。祖国ロシアを見返すべく立ち上がったドラゴ親子。かつての悪夢に悩まされるロッキー。それぞれの思いが交差する中、試合のゴングが鳴った。


【新世代ロッキーと、蘇る過去のライバル】

 あのアポロに隠し子がいて、それをロッキーがコーチする…予想外の形で始まったロッキー2世もといアポロ2世ことクリードは「もうロッキー戦わせるのはムリやろ」というシリーズを上手く繋げたシリーズでもある。と言いつつも、クリードはおろかロッキーファイナルもまだ観てない自分がはたして観に行っていいものか…と迷っていたところ、あのロッキー4のドラゴが出てくるという事で興味爆発。勢いで観に行ったものの…熱いドラマにただただ涙を流す自分がいた。

 クリード以上に、話のベースとなるロッキー4は冷戦下のもとに作られた異様な作品。アメリカンドリームの体現者にして、アメリカ国内のヒーローとなっていたロッキーが、ロシアからの刺客・ドラゴと戦うというもの。代理戦争…というテーマであり「俺たちは試合を通じて一つになれた」と和平を訴えるロッキーが印象的だったが、試合結果で見れば憎きロシアを打ち倒したアメリカという構図は否めない。どこかプロパガンダめいた作品だった。

 今作ではそのドラゴの末路が描かれる。国の威信をかけて育てられたボクサーが敗北し、地位も名誉も失う。妻であったルドミラからも見放され、男手一人で息子を育てる傍ら自らも肉体労働で日銭を稼ぐ日々。ロッキーとの戦いで得たものはフェアプレイで培った友情などではなく社会的な抹殺だった。このバックグラウンドが重くのしかかる。

 偉大なるチャンプの息子・アドニスのドラマも静かで熱い(赤ちゃんと一緒にボクシングジムに行くシーンが泣ける)が、その対戦相手が否応にもドラマチックな生い立ちで立ちはだかる。名作には名悪役というが、同情すべき対戦相手は悪と呼べるのだろうか? 単なる敵味方でなく、全員が戦うべくして戦う土俵に立ち上がる本作は「勝敗ではなく、いい試合ができたかどうか」というスポーツドラマの神髄を見た気がする。

 また、イワンの動機こそ復讐と国への見返しだが、息子に接する態度は父親の愛がこめられており、息子も言われるがままに戦う戦闘マシーンでなく、父を慕いともに歩んできた良き子供である。かつて戦いだけが全てだったイワンも子を持つ事で精神的に成長を遂げた事がわかる。皮肉にも、父を失ったアドニスや、息子と不仲になってしまったロッキーが手に入れられなかった家族の幸せがそこにあった。


【蘇る闘争心】

 ドラゴの家族ドラマについ目が行きがちだが、アドニスのファイターとしての苦悩も本作の見所だ。父・アポロをほうふつとさせる軽いフットワークを武器とするアドニスのボクシングは軽快かつ爽快だが、高身長からのリーチと重い一撃を武器とするヴィクターのボクシングには歯が立たない。素人目に見ても体格差はもちろんだが、原始的なトレーニングを積んだヴィクターの重みに、最先端のトレーニングを重ねるアドニスの「こりゃ無理だろ」感がひしひしと伝わる。冷静に考えればトレーニングの質比べなんて無粋だが、スポ根ものにおいて「過酷な環境でのトレーニング」ほどの説得力のある画はない。

 そこでアドニスはロッキーの指導のもと、わざわざ砂漠の荒野へ行き、タイヤを引っ張ったり野外リングでヘッドギアなしでスパーリングをやったりする。これでヴィクターと同じ「野生の力を手に入れる」…なんて陳腐な展開だが、その陳腐さが実際心地いいのだからしょうがない。陳腐が王道たりうるシチュエーションと盛り上がるBGMが説得力を帯びてくる。増してや一児のパパになったばかりだ「良い父親になってみせる」と奮起するアドニスに共感しない男性は(既婚・未婚問わず)いないだろう。

 ところで、本作は清々しいまでにロッキー「2」と「4」の良いとこ取りである事に驚かされる。ドラゴ一家との対決や野生トレーニングは4だが、アドニスが結婚し子を授かる流れは2のロッキーそのものだ。風来坊だったロッキーが家族を手にし、自分以外に戦う理由を見出すというドラマは、ただアポロと再戦するだけという筋書をはるかにドラマチックに仕上げ、シリーズ屈指の感動作へと押し上げた。そこに4独自のエモーショナルさが加わった結果、とんでもない熱量を帯びた作品になったと思うのだ。


【まとめ】

 クリード前作だったり、ロッキー4などある程度下地や予備知識は必要だが、シンプルにまとめられた脚本とドラマが生み出す最高のドラマ。往年のロッキーシリーズが持つ情熱と闘争をそのままに、現代舞台で見られるなんて贅沢にも程があるぞ!
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