ツバメの話の続き
ムツゴロウさんならこんな時どうするんだろう・・と必死で考えた。
とにかく、巣があった元の場所に雛を戻せれば親鳥がまた飛んでくる。
それしか方法はない。
雛を入れる入れ物が何かないか、店に戻って探した。
そして、今となっては何を入れてたやつだったか思い出せないけど
ちょうどいい大きさの食品用のタッパーを見つけた。
そこに雛を入れてみる。これをどうにか巣があった場所からぶら下げられれば・・。
しかし、大工の経験も道具も何もない私に出来る事はここまでだった。
もはやこれまで・・。
と思った瞬間ある人の顔が浮かぶ。
朝と夕方に仕上がった物を持ってくる配送の兄ちゃん(真田広之似30歳)だ。
その日は確か私は午後勤務で2時頃に店に入り
ツバメの巣が落ちたのがその少し後ぐらいだったと思う。
夕方の便は4時ぐらいに来る。なんとかもちこたえておくれよ雛たち。
そして真田広之到着。待ってましたとばかりにまだエンジンも止めないうちに
早く早くちょっと来て!かくかくしかじかでこのタッパーをあの上からぶら下げたいんだけど
という事を伝えると「うんうん、わかった!」と、車のなかからドライバーやらトンカチやら釘を持っ
てきて、まずタッパーにぐりぐりと穴を開け
ビニール紐でタッパーをつり下げるようにして、脚立に上がって壁に釘を打ち付け
上からぶら下げる事に成功。落ちないようにしっかり固定していただいた。
私たちがすったもんだしている間にも、親鳥が何度も
巣があった場所に来ては道の向こうの電線に停まりこちらの様子を見ていた。
入れ物が変なものに変わって最初は抵抗があったようだけど
すぐに親鳥が雛の所にやってきてエサを与えていた。
よかったーーーー。とにかくよかったーーーーーー!!!
真田広之には何度も何度もお礼を言った。(缶コーヒーの1本も渡したんだろうか
何かお礼をしたんだろうか思い出せない )
これは今まで生きてきた中で一番のピンチだったかもしれない。
でもそんな時でも救いの神がいるんだなと思った。
そうして無事に4羽の雛たちはタッパーの巣から巣立っていったのでした。
しかしこの話にはまだ続きがあり・・・
次の春、そのタッパーの巣にまたツバメがやってきて卵を産んだ。
(今思えば、そこから巣立ったツバメだったのかも)
白色で若干透けるタッパーなので下から丸見えだし風通しも悪くて
居心地悪かったと思うけどその雛たちもまた、無事に巣立っていきました。
(また次の春も、と期待したけど残念ながらその後は来なかった)
という20年ぐらい前のお話でした。
それ以来、動物にはむやみに近づかず遠くからそっと見守るようにしております。
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