mixiユーザー(id:218818)

2018年05月31日13:08

183 view

20180530 桂宮治、瀧川鯉昇師の胸を借りる@日本橋社会教育会館

前に「胸を借りる」シリーズは、神田松之丞が三遊亭遊雀との二人会、というのがあったが、今度は同じ「成金」(落語芸術協会の二つ目の演者のユニット)メンバーの桂宮治が瀧川鯉昇との二人会、宮治がトリを取るというスタイルの会。
この2人、芸風自体は真逆というかなんというか、とにかくものすごい勢いでだだだだーっと語る桂宮治とひょうひょうとした感じの瀧川鯉昇。この2人で「胸を借りる」でどういうことかと思っていたけれど、今日は聴いて納得した。

寄席とか落語会で、前座の落語を聞いてもその噺自体はさほどおもしろくないと感じることは多い。まぁ、芸自体がまだまだというのもあるけれど、前座がやる落語というのは、師匠から習った落語をそのまま演じる、というのが基本だったりする。それはそれで修行だし、ここでいろいろやってもまだいろんなモノが追いついていないんだからダメなんだけど、経験を積んでいって、その噺が身についてくると、即興だったり、あるいはいろいろ考えたりで、古典ものでもいろいろいじり始める。
「噺は生き物」というのはまさにこの面があって、ただただ教わった噺を演じることは、まぁ意味がないとはいわないけど、それはただ昔の噺を冷凍保存しているだけに過ぎない。いつぞや聞いた話で、桂小金治がTVタレントとかの後で高座に戻ったときに、寄席とかでずっとやっていなかったから却って教わった通りの昔の噺をそのままやっていて、却って昔の噺の形が残っていたというのがあるけど、個人的にはそれは、学術的な意味や別の楽しみはあるかも知れないけど、落語で笑いに来る、というのにはやっぱり合わない気がする。

さて、本日の会の2人。まぁ、すごかった。
その噺のアップデート。まずは時事ネタや今の噺を織り込むというのもあって、鯉昇の「ちはやふる」あたりも、タニマチが力士を連れて行く場所が南千住だったり、力士がモンゴル出身だったりという改変を仕掛けてきていた。この手の改変がおもしろいのは、「ウランバートル」とか「チョモランマ」とか、それだけだとそんなに笑いに繋がらない単語が、噺の中に出てくる違和感がすごすぎて笑いにつながるということ。
そして、出てくる登場人物の言動が、現代風になっているという改変。宮治の1席目「青菜」がそれで、出入りしていた旦那を真似する植木屋に建具屋がツッコミを入れていくところ、ただ完コピする植木屋をおかしいというだけでなく、頭がどうかしている人扱いっぽく「わかった。俺には見えないものがお前には見えているんだな」「頼む、頼むからこのゲームのルールを教えてくれ。どうやって応じたらいいのかわかんねぇ」とか。
あー、なるほど。むかーし、高校の頃に落研で、落語(あたしの場合は上方落語だったんだけど)自体はおもしろいんだけど、それをそのままやるのはなんかつまんなくて、当時は円丈とか三枝(現文枝)とかがやり始めていた新作落語のムーブメントがおもしろかったんだけど、それは結局そういうことだったんだなぁ、と。
ものすごく正直に書いてしまうと、今の文枝作とかの新作、さほどおもしろいとは思えなかったりする。若手の落語家さんが面白いと思って演じるのを聞くこともあるんだけど、うーん、やっぱりほとんどの新作が「落語」じゃなくて「物語」なんだよなー(,,゚Д゚) じゃあなにが違うのかと聞かれたらうまく説明できないけど。

そして、この日の2人のうまいところは、枕や直前のトークで何気なく話していたことがちゃんと伏線になっていて、噺の最後の方になってその伏線がちゃんと効いているところ。「ほらね、ちゃんと最初にいっといたでしょ」という感じで。なもんで、さらにそこでのセリフが効いてくる。

トークで、宮治の真打ち昇進の話にもちょっと(面白おかしく)触れられていたけど、確かに、普通だと芸歴10年だとちょっと早いけど、宮治の今日の出来とか聞いてると、一之輔ほどの飛び級でなくても、早めに真打ち昇進してもおかしくはないよなぁ、と思いつつ、だとしたら、松之丞も、小痴楽も、昇々も、だしなぁ(,,゚Д゚) 「成金」って豊作ではあるけど、人材豊富すぎて1人だけ突出しているとかいうのじゃないのが、ちょっと(誰かが悪意でというのでなく)足を引っ張っているのかもなーと思うことしきり。だって、宮治・松之丞・小痴楽の同時真打ち昇進なんて、披露興行を定席だけじゃなくて、それこそグローブ座クラスの会場でもやんないと、定席のチケットなんてプラチナ通り越したものになりそう(,,゚Д゚)


1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年05月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031