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2017年08月20日08:25

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超金融緩和(いわゆるアベノミクス第1の矢)について

 超金融緩和(いわゆるアベノミクス第1の矢)について。

 私は、超金融緩和を決して否定しません。

 ただし、どんな政策でもそうですが、当然この策にもリスクがあります。特に、政府等の債務が莫大な日本においては、そのリスクは大きい。なので、そのリスクを十分承知した上で、支持したり実行したりするべきです。

 ところが、世の中を見渡していると、「絶対反対」あるいは逆に「断固支持」の声ばかりが目立ち、等身大に評価しているものは少ないように思います。私は、批判本は読んだことがないので、批判本ではどうなのか?知りませんが。批判本を批判するヒトの意見を見ると、批判本もハズシているのでしょうか(もしくは、批判本を批判するヒトの読解力が足りないか)?。

 なので、超金融緩和のリスクについて、私の意見を纏めておきます。



 超金融緩和政策には、大別すると以下の5つのリスク、問題点があると思います。


1) 出口戦略が無い。

 物価が上昇し始めたとき、ブレーキを上手くかけられない。よく識者が「国債金利(長期金利)が高騰する!」なんてアベノミクスを批判するけど、アレは超金融緩和している最中の話ではありません。正確には、この出口のときの話ですね。ちなみに少なくとも私は当初からこの点を指摘していた。

 首尾よく目標の年2%物価上昇の目標を達成した場合。それ以上の物価上昇を防ぐため、日銀は国債購入量を大きく減らすことになる。何もしないと、「好景気」+「超金融緩和継続」で、2%以上の物価上昇率になってしまうから。

 ここで、物価が2%上がっているのだから、金利はそれ以上をつけないと、いわゆる「目減り」してしまうので誰も国債を買ってくれない。日銀が大量購入していた超金融緩和の最中なら、金利が物価上昇率を下回っていても「いずれ日銀が絶対買ってくれる」と思えるから、安全資産として購入する場合もあるけれど。日銀が買ってくれるかどうか分からなくなる「超金融緩和の出口」においては、金利を物価上昇率程度ないしそれ以上には上げないと国債が売れない。

 ところが、ここで莫大な政府債務(計算し易いよう、仮に1000兆円とする)が足かせになる。長期金利を2%にすると、毎年20兆円の利払いが増えることになる(実際には約10年程度かけてジワジワ増える)。消費税率にして10%分近い税収が、金利支払いで消えてしまう。

 結果、さらなる赤字国債を発行することになりかねず、どんどん政府債務が増え、それに伴って金利の支払いもさらに増える。負のフィードバック。日本経済が信認されている間は、国債発行残高が増えたって良いんだけど。市場から「日本は返す気が無い、もしくは返す能力が無い」と見られるまで増えてしまうと、国債が売れなくなる。仕方ないので国債金利をもっと上げざるを得なくなる。そうすると、さらに金利の支払いが増えて、という悪循環。

 結果、財政が破綻する。日本政府が政策何も出来なくなる。国債をいくら発行してもお金にならないのでは、使えないから。国民や業者は、お金の代わりに国債を受け取ってくれるワケじゃないしね。

 だからと言って、金利を抑え込んだら。国債を買うものがほとんど日銀しかいなくなる。そうなると、事実上、超金融緩和を継続しているのと同じこと。そうなると、好景気による物価上昇分プラス金融緩和による物価上昇分が合わさるから、物価上昇率が2%を超えどんどん上がってしまう。これは正のフィードバックがかかるから、狂乱物価、ハイパーインフレに繋がりかねない。よくアベノミクス批判者が「ハイパーインフレになりかねない」と言うけれど、あれも緩和している最中の話ではなく、こういう出口での話ですね。

 ちなみに、他国において超金融緩和のリスクが小さいのは、他国では日本ほど政府等債務が大きくないからですね。で、リスクが小さいはずの米国ですら、出口では苦労していますよね。緩和縮小、利上げは、予定よりずっとゆっくり、ソロソロとしか行えていません。政府等の債務がずっと大きな日本においては、もっと苦労することが目に見えています。



2) 長くは続けられない。

 国内に資金需要があまり無い状態での超金融緩和は、事実上の通貨安政策。実際、超金融緩和したら円安になったでしょ?これを、他国、特にトランプの米国がいつまで許容するか?極めて不透明。なぜなら、円安で日本が貿易で有利になれば、他国はその分、貿易で不利になるワケだから。

 欧米(ECBやFRB)も超金融緩和していた頃は、日本のことを非難できなかったけど。2017年夏現在、FRBが緩和を止め、ECBもそろそろ止めそうな状況。今後も日銀が超金融緩和し続けて国際的に許されるか?はなはだ不透明。

 また、上記1)で書いたリスクは、国債発行残高が多額なほど大きい。ところが、超金融緩和を続けると、日銀が買うもの(市場に資金を供給する手段)が尽きてくる。尽きてしまえばそれ以上の緩和は出来ないし、無理矢理国債を増発し支出を増やすと、上記1)のリスクをさらに増やしてしまうことになる。



3) 海外のライバル企業を育ててしまう。

 「超金融緩和で円安になる」ということは、だれかが円を売って外貨を買っている、ということ。

 具体的には、「日本の金融機関から低利で借りた資金で外貨を買い、その外貨で海外に投資している」者(個人または機関)がいるということ。つまり、海外にあるライバル企業に低利で資金を供給しているようなもの。日本企業のライバルを日本の資金で育成してどうする。

 ちなみに、超金融緩和しまくっているのに、黒田の期待どおりに物価が上昇しないのは、この効果が一因ですね「だれかが円を売って外貨を買っている」効果。

 緩和され市場に供給された資金が日本国内に留まっていれば、
   物価≒国内にあるお金の総量/国内にある商品やサービスの総量
なので物価は上がります。ですが、国内にあるべきお金が、どんどん海外に投資され流出していれば、物価は上がりません。黒田は、この効果を軽視したのだろうと思います。この効果は有名なので、知らないはずはない。単に軽視した。



4)海外から日本が安く見える

 円安効果で日本企業の時価総額や、日本人の年収が海外からはとても安く見えてしまう。なので日本企業や日本の人材が、海外企業に買われてしまいやすい。短期的には問題ない、それがグローバル化というものだけど。長期的には日本社会の衰退に繋がりかねない。日本企業と違って、海外企業は日本政府の都合や方針に合わせてくれないしね。

 また、海外駐在員などは苦労する。

 このあたり、アベノミクスファンまで「賃金を諸外国並にまで上げよ」と言うのが呆れるところ。海外から見て、つまりドルベースで見て日本が安く見えるから、アベノミクス第1の矢の効果があるのに。つまり、日本の株価が安く見えるから、海外投資家が日本の株を買ってそれがきっかけで東証など日本の株価が上がるんだし。日本の労働力が安く見えるから、海外で人を雇うより日本で雇った方が良いかな、となり日本の失業率が下がったりする。

 ※ アベノミクスで、当初非正規雇用ばかりが増えたけれど、これは超金融緩和の
  効果ではなく、アベノミクス第2の矢、公共事業増大の効果です。
   超金融緩和(第1の矢)の効果で雇用が増えるのには時間がかかる(新規工場
  投資などに伴う場合でないと、効果が出ない)ので、やっと最近効果が出始めた
  ところです。もっともこれも、団塊世代の大量退職で正社員枠が空き、そこを補
  充するため正社員の求人が出た効果もあるので、超金融緩和だけの効果ではあり
  ませんが。

 なので、日本の賃金を上げれば、日本の失業率が下げ止まったり上がったりするでしょう。アベノミクスファンたちが、超金融緩和の効果を理解していない証拠。

  ※ もちろん、賃上げは必要ですよ。でも、いきなりドルベースで諸外国並にまで
   賃金を上げたら、超金融緩和による雇用情勢改善の効果が吹き飛びます。
   なので、賃上げは慎重に、少しずつしか行えません。

 基本、国内に資金需要が無い段階で行う超金融緩和は、日本を安売り・叩き売りする売国政策なのですね。



5)海外から日本社会が衰退して見える。

 円安になるので、ドルベースの日本のGDPが激減して見える。なので欧米、例えばトランプやメルケルなどは「もう日本の時代じゃないな!今後は中国だ!」と、中国がいくら無体をやっても大して問題視せず、中国に擦り寄ろうとしてしまう。




 以上、超金融緩和にはザックリ考えただけでも大きく5つのリスク、問題点があることがすぐ分かります。ただ、短期的には効果
(株高になったり、為替差で輸出企業の業績が向上したりして、
 人々の気分が明るくなる)
が絶大。なので、短期的にしかやるべきでない政策だと考えます。

 ※ それを安倍首相は。参院選に勝つため、比較的すぐ株価が上がる
   超金融緩和をまず最初にやってしまいました(正確には、黒田日銀
   総裁にやらせてしまった)。これは、リスクを無用に高めてしまう悪手。
    ですが、それをやらなかったら参院選の結果がどうなっていたか?
   分からないワケで、経済的には悪手ですが、政治的には難しい判断
   ですね。


 なので、私はアベノミクス発表当初から

「アベノミクスは手順前後。望ましくは、
 ・まず全力で第3の矢を急ぐべき。これによって景気の自律回復を促す。
   ※ 第3の矢、と言うと新自由主義のことだと誤解されがちですが、
    そうではありませんよ。念のため。

 ・ただし第3の矢は実現にも効果が出るのにも時間がかかる。なので第2の矢で
  その間を繋ぐ。土木系公共事業はやり過ぎると弊害が出るので、ほどほどに抑え、
  他の財政出動(子育て支援など)により重点を置く。土木系は、復興と五輪と
  災害復旧だけでほぼ十分。足りなければ老朽化したインフラの更新前倒しを
  追加すれば良い。

 ・準備が整い、つまり国内に資金需要が出て来てから、景気の着火剤として、第1の矢
  すなわち超金融緩和を行う。そうすれば、国内に資金需要があるのでその効果は
  円安だけではなくより大きいし、円安の程度もより小さい。短期間で終えることが出来、
  国際的に買う顰蹙も少なくて済む」

と主張しているワケですね。


 なお、「日銀のバランスシートが悪化する」という問題点を指摘する論者(河野太郎・現外相など)もいますが、私の意見ではないので省略しました。
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