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2015年03月19日23:55

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本当の、境界のないセカイへ

「境界のないセカイ」打ち切りにLGBT団体が立場表明 「他の作品と比べて特段の問題があるとは思われません」
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=128&from=diary&id=3328378

「境界のないセカイ」マンガボックス連載終了のお知らせ
http://ikuya.sblo.jp/article/115089330.html

境界のないセカイ
https://www.mangabox.me/reader/231/

『境界のないセカイ』発売中止・連載打ち切り問題へのレインボー・アクションの立場表明
http://rainbowaction.blog.fc2.com/blog-entry-228.html

 先日、幾夜大黒堂作『境界のないセカイ』の打ち切り問題について、「差別的なのは講談社の方だ。団体は抗議すべき」ということを呟いたら、本当にLGBT団体「レインボー・アクション」が意見表明をした。以下、引用。

> ●この作品の性に関する描写に、他の作品と比べて特段の問題があるとは思われません。
> ●「性的マイノリティの団体・個人の圧力」という多分にフィクショナルな理由に基づき、表現行為に対して自粛を迫るという行為がもしもあったとするならば、それは人権を守るためとても大切な、表現の自由を抑圧するものだろうと考えます。
> ●それはまた、「性的マイノリティの団体・個人」を怪物視・あるいは怪物化し、性に関する差別を助長するものに他なりません。
> ●もちろん、性に関する差別表現に対しては、これからも引き続き闘ってまいります。

 『境界のないセカイ』を一読して分かることは、これが「性の選択が可能になった近未来」というSF作品だということである。「医療技術の発達により、18歳になれば誰もが自分の性を選択することができる」。
 これまでにも性転換の漫画は数多くあった。それらはたいてい「入れ替わりもの」で、近作では森永あい『僕と彼女の×××』が人気を博している。一般的には映画『転校生』が著名だが、もちろんそれ以前から同種の作品は多く、何がルーツかは分からない。しかしなぜ性転換してしまうのか、その原因はと言うと、「偶然」や「事故」によるものが圧倒的多数を占めていて、その結果、いかにして元の性に戻るか、元の性に戻るまでいかにその事実を隠しおおせるか、という展開になるものが殆どだった。性転換してしまったことによるトラブルも描かれるが、最後は「元の性がいいよ」でハッピーエンドになるパターンが定着していたのである(『僕と〜』はちょっと違ってたけど)。
 しかし、『境界のないセカイ』のヒロイン(?)・啓太郎は、自分の意志で「女性」になることを選んだ。しかも「完全」にであり、男性に戻ることはまずありえない。こういう設定の作品はそんなに多くはないんじゃないかと思う(ゴア・ヴィダル原作、マイケル・サーン監督のトンデモ映画『マイラ ―むかし、マイラは男だった―』ってのがありはする)。
 もちろんそこには「女にならなくてはならない」理由が厳然としてあって、コメディとして描かれてはいても、そこには「元男」であったがゆえに偏見に晒されなければならない事情もあって、だからこそ、マンガボックス編集部および講談社が、団体からの抗議を恐れたという事情も「経緯としては」理解できはする。
 しかし、それは「レインボー・アクション」が指摘する通り、逆にLGBTを「怪物化」する差別行為である。そのことを指摘された以上、講談社には、自らの差別行為を認め、LGBTの人たちに不快な思いをさせてしまったことを反省し、作者である幾夜大黒堂さんに謝罪する義務が生じている(連載打ち切りの解除は、既に引受先が見つかりそうなので難しいだろう)。既にマンガボックスのレビュー欄にも批判や抗議のコメントが書き込まれ続けているので、編集部がこのままだんまりを決め込んで、何も立場を表明しなければ、講談社は自らが「差別組織」であることを表明し続けることになる。謝らないわけにはいかないだろう。

 これまでの差別事象については、団体からの抗議を受けて謝罪、連載の打ち切り、というパターンが殆どだった。それが今回は全く逆のパターンを辿っている。ここで講談社がちゃんと謝ることができれば、過剰な自粛はかえって表現の自由を侵してしまう差別に当たるということが、初めて公式に認定される事例になるのではないか。
 講談社には早急に謝罪の声明を発表してほしいと思う。やらなきゃマンガボックスのレビュー欄がますます炎上して収拾がつかなくなることだろう。

 『境界のないセカイ』は、第二のヒロインの聡美が登場したところで中断している。彼女は普通に女子のようだが、果たしてどのような形で勇次たちに絡んで来るのか。また、このセカイの性が選択制であるなら、啓太郎と逆のパターン、女から男に変わった人たちもいるだろうし、彼や彼女たちの性転換の理由も決して一つではないはずである。
 彼ら彼女らの存在が、数々の偏見を越えて、いかに認められていくか。それを描こうとするがゆえに「境界のないセカイ」というタイトルが付けられたのだろう。面白くなるのはこれからである。再開が楽しみだ。
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