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2014年04月04日01:40

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10cmの津波を笑う人たちへ

津波60cm観測 http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=2828588

ツイッタ他で「へ? 10cm? www たかが10cmの津波って、波がチャプチャプと同じ高さっしょ? 
なに警報とか出してんの? ワロスww」などとの文言を見かけたので、警告をこめて以下に書く。
全体公開にしておくので、津波をバカにしたり軽んじたりする人には、ぜひ読ませてやって欲しい。

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大学生の夏、外房に海水浴へ行った。
友人たちと真夏の海を満喫していたわたしは、ふと見た水平線に冷たい違和感を感じた。
水平線が、白かったのだ。 
白いなぁ、夏だなあ……アレ? 水平線って白いもんだったっけ?

ひざまで海につかっていたわたしは、少し先の沖で泳いでいる友人に向かって叫んだ。
「コナ〜〜ン! 海を見てぇ〜〜〜ッ!」

友人コナンこと すっぱち は、犬かきをしながら
「へ? なに言ってんの?」 「いいから、海を見てええ〜〜〜〜ッ!!」

他の友人たちも気がついて、あれはなんだろう?と指さした。
最初は絹糸のように細かったその白いすじは、みるみるうちに太くなっていった。
絹糸からタコ糸へ、毛糸へ、綱へ、そして神域をしろしめす〆縄へ。

近づくにつれてそれの正体は、海水が階段状に持ち上がっているのだと判った。
たった一段、たった10cmの幼児でも登れるような、小さな階段だった。
だが、長さは10km超で湾内の端から端まで届いており、途切れている部分はどこにもなかった。

あと50m。浜辺に居ただれもが、小さな水の階段に気がついた。
あと40m。となりの家族連れでは父親がおどけて、それを一足にまたぎ越してみせるぞ、と笑った。
あと30m。浮き輪をした少女が、波乗りみたいにそれに乗るのだと張り切って下唇をなめた。
あと20m。おもちゃのバットを持った男児が、素振りの練習をしだした。水の階段を打ち砕くために。
あと10m。空は青く、海も青く、入道雲は白い。平和な光景だった。いなたい海の家が、ヒビ割れたオンボロ拡声器で、かき氷の宣伝を始めた。間延びした声が流れる。レモン、いちごにミルク、ブルーハワイはいかがッスか?



フォト








津波がやってきた。


あ。
と、思った時にはもう、わたしは転倒して海水の中に居た。
激しい衝撃にひざを猛打され、とても立ってはいられなかった。誰かに蹴られたかと思った。
ぐるんぐるんと海水が廻る。砂をなめ、空をあおぎ、また砂をなめ、また空をつかみ。

ゆがんだ青空には、視界の半分を占める入道雲が居た。
雲入道の、もくもくと盛り上がった肩、隆々と力強い腕、たなびく広い裾野。
想像してほしい。幅10cm×長さ10kmの、全湾におよぶ長い長い板を。
そして思い出してほしい。不用意に飛び込んだプールの水面が、いかに固く腹を打つか。


入道は、その板を手に入れたのだった。そうして渾身の一撃で、それを水平になぎ払ったのだ。
神速のフルスイングだ。わたしたちは全員、痛烈なゴロ球のように打ち返された。


そのとき泳いでいた海水浴客は、ひとり残らず浜辺に打ち上げられた。
砂にまみれ、水着がずり落ちて半裸になり、ひどい状態だった。
なかには、半身を砂に埋め、奇妙なオブジェのようにもがいている人も居た。
そこかしこで、えづく声があがる。海水や砂を、しこたま呑んだのだ。


「おい、ラナ。ラナは無事か」
「なに言ってんのよ、なんなのよ、コレぇ?」
チームのリーダーがすばやく点呼して、全員そろっている事を確認した。

「きゃああ〜〜〜〜〜〜〜!!」
ただならぬ悲鳴があがった。となりの家族連れの、奥さんだった。
奥さん、旦那さん、幼児がふたり。彼らは団子のように一団となって、絡みながら打ち上げられた。

浜は、基本的には砂浜だったが、所々に尖った岩があった。
運の悪いことに、一団はその岩に叩きつけられたのだ。
旦那さんの顔が、血まみれだった。ウ、ウ、とうめきながら、顔をおおっていた右手を外した。


本来、鼻があるべき処には、穴がふたつ開いていただけだった。
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