魔法て何？

魔法使いになりたいと思わなくなって、どれくらい経つだろう。
魔法を使いたいと思うようになってから、どれくらい経つだろう。
　自分は何でも出来ると思っていた。選べる道は夢幻に在って、その中から本当に自分がしたい事だけを選んでいこう。否、選ぶなんて事も意識せずとも、ただ思う通りに生きていけば良い。だったら、何でも出来る魔法使いに成れば良い。否、魔法使いなんて言葉を知らなくても、何でも思い通りに出来る、そんな人間になりたい。なれるんだ。
　自分のポテンシャルを把握して、出来る事としたい事の区別が出来る様になって、それでも少しでも理想に近づける方法は無いかって探して、それで諦めて、今でも諦めきれない。けれど諦めるしか無かった。そんな風に捨てたくないのに捨ててきたもの、選びたくても選べなかった道や人、それらを取り戻したい。そうだ、あの時に戻って力の足りない自分に魔法をかけよう、あの時の自分の弱さを消してしまおう。何度も思う。
　でもふと思う。必要なのは魔法なんかじゃなく、魔法使いになれると思ってた自分の純粋な強さ、残酷な浅はかさなんじゃないのか。こんな事を考えて後ろばかり見ている自分の弱さを打ち消す魔法はないのだろうか？魔法でも何でも無く、こんな簡単な認識にも辿り着けない自分には、そこに達する事は許されないのだろうと解ってしまってはいる。だが、在りもしない力を無性に意識的に欲してしまう事が未だに多々有るのだ。

　こんな文章でも極稀に人の澄んだ心に薄汚い土埃が雑じって仕舞うみたいに何かを起こすのかも、なんて思うと、コレが魔法？とか思っちゃったりして。と、珍しく前向きげな事を言ってみる、と書いていたのだけど、これを魔法としてしまうと結果の出ない他の事はどうでも良いつー結論になりそうで、これは努力を優先する前向きな人間にとっては後ろ向きで度し難い事だったりしてなー、もしかして。知らね。