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2023年04月29日21:05
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水をはこぶ
大阪府立狭山池博物館で5月7日まで開催中の土木遺産展「水をはこぶ」という企画展を見てきました。
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河川や湖を利用した水利システムは、農業用水の他、治水、上水、運河などの役割も果たしてきました。このような「水をはこぶ」施設は、史跡、重要文化財などに指定され、各地に残され、今でも利用されているものも少なくありません。
今回の展示は、これらの施設に関わる役割、土木技術を理解し、実際の水辺の景観を楽しみつつ、先人の知恵に思いを馳せてもらおう、というのが、主な趣旨です。
何枚か写真を撮ってきたので、かいつまんで掲載します。
（展示物は、ほとんどパネルばかりでしたが ^^ゞ)
【言葉の意味や内容を知る】
農地に水を入れるため、河川、湖、地下水などから水を引き、給水、排水をすることを一般的に灌漑と言いますが、生活用水としても利用したり、時代の変化と共に、園芸、畜産などに利用されることもあり、今では、灌漑は総合用水という位置づけです。
いくつか、灌漑のための施設を見ていきます。
頭首工（松倉頭首工・秋田県）
頭首工は、河川をせき止めて、水を水路へ流し、農業用水を取水するための施設です。せきと同じ機能ですが、農林水産省などの農業部門が発注者となって作ったせきを、特に頭首工と言います。
ゴム引布製起伏堰（欠田井堰・大阪府）
布製のチューブ状の袋の表面をゴムで防水加工し、それを膨らませたり縮めたりして使用するせきです。施工、維持管理が容易です。
樋門（平戸樋門・京都府）
河川や水路の合流点に設置され、本流の水が支流に逆流しないようにするためのものが、水門、樋門です。樋門は、堤防の中に水路が埋設されています。
円筒分水〔地域によっては円形分水という〕（音無井路十二号円形分水・大分県）
水を公平に配分し、地域間の利害を調整するために、知恵と労力が注がれ、考え出されたシステムの一つが円筒分水です。
【時代をせおった利水事業】
稲作が始まった弥生時代より現代まで、様々な利水事業が、連綿として続いています。先人の知恵が偲ばれる遺跡や、現在でも利用されている施設を見ていきます。
クリーク（佐賀県）
川から流れ出た水が、満潮時に海水に乗って戻る場合、海水は淡水より比重が重く、下に沈むので、簡単な板堰だけで上にある淡水を入手することができます。その淡水は、縦横にめぐらされたクリーク（貯水池・用水路・排水路）へ樋を使って引き入られ、蓄えられます。吉野ケ里遺跡では、このような淡水が稲を育てました。
古墳時代の灌漑用のせき（小照遺跡・愛媛県）
古墳時代に入ると、水を取り込むための技術が発展します。小照遺跡では、古墳時代前期の灌漑用のせきが見つかりました。
古墳時代の水路（谷川遺跡・大阪府）
今も利用されている「深溝井路」の前身溝と思われる、古墳時代後期に掘削が始まった溝が見つかっています。
辰巳用水（石川県）
室町時代末より江戸時代には、飛躍的に土木技術が発展します。辰巳用水は、金沢から12�劼虜埓郛緡�から取水し、約4�劼離肇鵐優襪巴歪譴鬚�ぐり、兼六園の谷はサイフォンで超えるという難工事であったにもかかわらず、1年ほどの短期間で1633年以完成したと考えられています。
箱根用水（神奈川県、静岡県）
1666年に工事が始まり、箱根外輪山に1342ｍものトンネルをくりぬき、芦ノ湖から静岡側に導水する用水路で、1670年に完成しました。
【保護され未来につなげる技術】
土木とは、災害から人々の生命と財産を守ったうえ、生活を豊かにする技術とも言われています。その技術によって作られた構造物を保護し、未来につなげるために様々な手法がとられています。保護管理され、よく知られている、いくつかの土木遺産を見ていきます。
通潤橋（国指定重要文化財・熊本県）
水不足に悩んでいた白糸台地の人たちのため、1854年に建設された石造りの水路橋です。今でも周辺の田畑を潤しています。放水は、通水管に詰まった堆積物を取り除くために行われています。
琵琶湖疎水（日本遺産他・滋賀県、京都府）
琵琶湖畔からトンネルで山を抜け、京都鴨川左岸に至り、さらに南下して深草、伏見を通り、宇治川に注ぐ近代の都市疎水です。
堀川用水及び朝倉揚水車（国指定重要文化財他・福岡県）
朝倉揚水車は、江戸時代から200年回り続ける、最古の稼働する水車です。堀川用水は、1663年の飢饉が契機となって造られ、その後も手を加えられ、筑後川の豊かな水を利用し、灌漑面積を拡大していきました。
荻窪用水（選奨土木遺産・神奈川県）
江戸後期に造られ、後に童謡「めだかの学校」が生まれ、市民の憩いの場所となっています。
【歩いて感じる水辺空間】
親水空間という言葉が、なじみのある言葉となりつつあります。用水路など、治水のために造られた施設にも遊歩道などが整備され、憩いの場となっているスポットも各地で見られます。そんな場所を訪れ、歴史を感じ、水の流れを眺めながら散策するのも楽しいかもしれません。
玉串川（大阪府）
江戸時代の大和川の付け替え工事後に、用水路として整備されました。季節を感じる親水空間です。
今回の企画展は、水利システムの歴史や、技術など、そこそこ分かりやすかったのですが、展示物が、ほとんどパネルばかりだったので、その点は今一つ。機会があれば、現物をゆっくり眺めてみたいものです
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河川や湖を利用した水利システムは、農業用水の他、治水、上水、運河などの役割も果たしてきました。このような「水をはこぶ」施設は、史跡、重要文化財などに指定され、各地に残され、今でも利用されているものも少なくありません。
今回の展示は、これらの施設に関わる役割、土木技術を理解し、実際の水辺の景観を楽しみつつ、先人の知恵に思いを馳せてもらおう、というのが、主な趣旨です。
何枚か写真を撮ってきたので、かいつまんで掲載します。
（展示物は、ほとんどパネルばかりでしたが ^^ゞ)
【言葉の意味や内容を知る】
農地に水を入れるため、河川、湖、地下水などから水を引き、給水、排水をすることを一般的に灌漑と言いますが、生活用水としても利用したり、時代の変化と共に、園芸、畜産などに利用されることもあり、今では、灌漑は総合用水という位置づけです。
いくつか、灌漑のための施設を見ていきます。
頭首工（松倉頭首工・秋田県）
頭首工は、河川をせき止めて、水を水路へ流し、農業用水を取水するための施設です。せきと同じ機能ですが、農林水産省などの農業部門が発注者となって作ったせきを、特に頭首工と言います。
ゴム引布製起伏堰（欠田井堰・大阪府）
布製のチューブ状の袋の表面をゴムで防水加工し、それを膨らませたり縮めたりして使用するせきです。施工、維持管理が容易です。
樋門（平戸樋門・京都府）
河川や水路の合流点に設置され、本流の水が支流に逆流しないようにするためのものが、水門、樋門です。樋門は、堤防の中に水路が埋設されています。
円筒分水〔地域によっては円形分水という〕（音無井路十二号円形分水・大分県）
水を公平に配分し、地域間の利害を調整するために、知恵と労力が注がれ、考え出されたシステムの一つが円筒分水です。
【時代をせおった利水事業】
稲作が始まった弥生時代より現代まで、様々な利水事業が、連綿として続いています。先人の知恵が偲ばれる遺跡や、現在でも利用されている施設を見ていきます。
クリーク（佐賀県）
川から流れ出た水が、満潮時に海水に乗って戻る場合、海水は淡水より比重が重く、下に沈むので、簡単な板堰だけで上にある淡水を入手することができます。その淡水は、縦横にめぐらされたクリーク（貯水池・用水路・排水路）へ樋を使って引き入られ、蓄えられます。吉野ケ里遺跡では、このような淡水が稲を育てました。
古墳時代の灌漑用のせき（小照遺跡・愛媛県）
古墳時代に入ると、水を取り込むための技術が発展します。小照遺跡では、古墳時代前期の灌漑用のせきが見つかりました。
古墳時代の水路（谷川遺跡・大阪府）
今も利用されている「深溝井路」の前身溝と思われる、古墳時代後期に掘削が始まった溝が見つかっています。
辰巳用水（石川県）
室町時代末より江戸時代には、飛躍的に土木技術が発展します。辰巳用水は、金沢から12�劼虜埓郛緡�から取水し、約4�劼離肇鵐優襪巴歪譴鬚�ぐり、兼六園の谷はサイフォンで超えるという難工事であったにもかかわらず、1年ほどの短期間で1633年以完成したと考えられています。
箱根用水（神奈川県、静岡県）
1666年に工事が始まり、箱根外輪山に1342ｍものトンネルをくりぬき、芦ノ湖から静岡側に導水する用水路で、1670年に完成しました。
【保護され未来につなげる技術】
土木とは、災害から人々の生命と財産を守ったうえ、生活を豊かにする技術とも言われています。その技術によって作られた構造物を保護し、未来につなげるために様々な手法がとられています。保護管理され、よく知られている、いくつかの土木遺産を見ていきます。
通潤橋（国指定重要文化財・熊本県）
水不足に悩んでいた白糸台地の人たちのため、1854年に建設された石造りの水路橋です。今でも周辺の田畑を潤しています。放水は、通水管に詰まった堆積物を取り除くために行われています。
琵琶湖疎水（日本遺産他・滋賀県、京都府）
琵琶湖畔からトンネルで山を抜け、京都鴨川左岸に至り、さらに南下して深草、伏見を通り、宇治川に注ぐ近代の都市疎水です。
堀川用水及び朝倉揚水車（国指定重要文化財他・福岡県）
朝倉揚水車は、江戸時代から200年回り続ける、最古の稼働する水車です。堀川用水は、1663年の飢饉が契機となって造られ、その後も手を加えられ、筑後川の豊かな水を利用し、灌漑面積を拡大していきました。
荻窪用水（選奨土木遺産・神奈川県）
江戸後期に造られ、後に童謡「めだかの学校」が生まれ、市民の憩いの場所となっています。
【歩いて感じる水辺空間】
親水空間という言葉が、なじみのある言葉となりつつあります。用水路など、治水のために造られた施設にも遊歩道などが整備され、憩いの場となっているスポットも各地で見られます。そんな場所を訪れ、歴史を感じ、水の流れを眺めながら散策するのも楽しいかもしれません。
玉串川（大阪府）
江戸時代の大和川の付け替え工事後に、用水路として整備されました。季節を感じる親水空間です。
今回の企画展は、水利システムの歴史や、技術など、そこそこ分かりやすかったのですが、展示物が、ほとんどパネルばかりだったので、その点は今一つ。機会があれば、現物をゆっくり眺めてみたいものです
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