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2023年01月25日16:46

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御蔭祭 〜京都めぐり 1

御蔭祭

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 京都の三大祭と言いますが、この15日に行われる葵祭(賀茂祭)は源氏物語でも、あとあと尾をひく車争いの重要なエピソードが描かれているように、他の二つとは違って別格の古い歴史をもつお祭り。
 
 その葵祭と密接な関わりをもち、葵祭に先だって行われる祭儀が御蔭祭。八瀬の御蔭山から新しい御霊迎え、賀茂大神の神威更新を願うという神事です。
 もうずいぶん以前に、たしかNHKだと思いますが、テレビで御蔭祭の神事の担い手の中心人物である鴨脚さんが登場されて説明される番組があり、私もそのときはじめて、ははぁ、こんなふうに行われるのか、と知ったので、一般には葵祭は知られていても御蔭祭のことはそれほど知られていないかもしれません。

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 鴨脚と書いて「イチョウ」と読む姓もなんだかナゾナゾみたいですね。代々、おそらくは1000年単位の昔から、この役目をはたして来られたおうちなのでしょう。
 きちんとした装束で行列をつくって、この神事を行う方たちが山へ入って、明かされない水源から聖水にあたる清水を汲んでこられる。鴨脚家には小さな池があって、そこへたしか(うろおぼえですが)その水を注がれたと思いますが、この池がまた面白いもので、水位によって池の形が変わります。不定形みたいなのから円形、そして四角だったか、とにかく水位が下がって行くと形が変わってしまう。

 その番組のころ、すでに近年ずっと水位が下がり続けている、と言っておられて、昔の写真も資料として出ていましたが、その写真には満々と水を湛えた広い池が写っていました。しかし、テレビ放映時の池は水に触れようと思えば、池の渕から自分が降りて行かなくてはならないほど小さなくぼんだ穴のような池になってしまっていたように記憶しています。

 そして、ほぉーっと思ったのは、この鴨脚さんのお宅の池の水位は、京都の地下水の水位(に比例している?)なのだと聞かされたときでした。つまり、この池の水位は京都の地下の水甕の水量のバロメーターであって、池の水位が下がっている、ということは、京都の地下水脈が危うい、ということなんですね。

 立命の工学部の先生だったと思いますが、京都中の万という単位のポイントを車で回って、鉄槌みたいな装置で地面をドンドンと叩いて振動を与え、そのエコーの波動を解析するような手法で(うろ覚えだから科学的には正確な紹介じゃありませんが)、京都盆地の地下の状態をマッピングするような仕事をされていました。
 その成果が示すところでは、京都盆地の地下には岩盤で作られた巨大な水甕があって、そこにある砂利層に浸みこんで蓄えられている水量は優に琵琶湖の水量に匹敵するという驚くべき発見がありました。これもずいぶん以前のことです。

 だからこそ京都は千年の都として栄えてきたので、都心でも井戸さえ掘れば、政府が飲み水としての適不適を判定する環境基準値より一桁グレードの高い、良い水が出るそうです。そのおかげで、京都では都心でも豆腐屋が美味しい豆腐をつくることができるし、美味い酒ができ、おいしいお菓子を作ることができるのだとか。

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 こうして京都の地下の水脈の研究が進められて、どうやら上賀茂神社、下賀茂神社、御所という歴史的に天皇家が司ってきたポイントになる場所というのは、その地下水脈のメインストリームにあたるのだそうです。いまでは、現在はもとより、過去の水脈の位置まで、科学的な解析で辿ることができるらしくて、そういうことが分かってきた、と紹介されていました。

 つまり神様の与える、人間のいのち綱である水を、歴史的に代々つかさどってきたのが天皇家ということなのでしょう。

 いまは二条城に広大な境内を削り取られて小さくなってしまいましたが、平安時代には広大な庭園の池に竜頭の船を浮かべて遊んだらしい神泉苑なども、理解のポイントは水にあるようです。
 
 神泉苑は天皇が支配するところで、あれは龍(すなわち折り重なって見える北山の峰々)が市中へ降りて来て、まず最初に一休みして水を飲むところだったそうで、風水師がそんな地勢を見極めてお社の位置を決めたり、都の設計図を描いていたのでしょうか。

 そういう一連の話はみな科学的に言えば水脈について語っているのでしょう。渇水で京都中の井戸が枯れても、神泉苑だけは水が枯れず、天皇が庶民に池を開放した話が残っているようです。

 空海がほかの坊主と雨ごいの法力を争って勝った話も、今昔物語に登場する安倍晴明が大きな蛇をその術でやっつける話もこの神泉苑の話だったと思います。みな水に関係づけられる話ですね。

 それはともかく、葵祭の行列が御所を出て下鴨神社へ、されに上賀茂神社へ向かうのは、京都の生命線ともいえる地下のメイン水脈をたどる道行なわけで、その賀茂神社の神威を更新するために事前に御蔭山中の水源へ赴き、その水源の水を汲むという神事が行われてきたのも、すべては水につながる物語に即したことだったのでしょう。

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 その御蔭祭が今日、行われました。私たちの家にも配布された「御蔭祭のご案内」によれば、次のような手順で行われたようです。

 9:10        勧杯の儀・本社 進発
 10:30        御蔭神社 着 
 11:00〜12:00 祭儀
 12:30 御蔭神社 進発
 13:10 赤の宮 路次祭
 14:10 赤の宮 進発
 14:30 茶の木原公園着御
 15:00 行粧 進発
 15:40 河合社 着
 16:00 切芝神事(東游)
 16:45 還立の儀
 17:00 本宮の儀

 知識もない素人には意味不明の神事が沢山ありますが、御蔭神社は叡電の八瀬の駅に近い。この前訪ねた瑠璃光院とも近いですね。最後に下鴨神社(賀茂御祖神社)本殿に御神霊がおさまります(還御というらしい)。     

 その道中で、わが赤の宮にも立ち寄られる。そうか、40年近くもすぐそばに住んで、下鴨さんへ行くのが面倒なときはご近所で初詣を済ませたり、大晦日にお神酒を飲ませてもらいに行ったり、ここの井戸水を柄杓で組んでかけあったりして子供らが遊んだりしていたけど、畏れ多いことでありました(笑)。すごい由緒のある神社なのですね。

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 神事を行う方たちは、みな頭に葵の葉をつけておられます。

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 神霊がいらっしゃる(らしい)豪華な籠は、トラックの荷台に載って運ばれておりました。
 そして、大勢の供奉の方々も、みな乗用車とバス数台に乗って移動されました。昔はもちろんすべて徒歩での行列だったのでしょうが、いまは交通混雑のため、自動車による行列とあいなったようです。
 でも赤の宮に入られる直前に見に行ったら、写真のとおり、歩いて行列して鳥居をくぐっておられました。駐車場からだけかもしれませんが(笑)。

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 赤の宮での神事のときはすごい見物人で、ほとんど何も見えなかったのですが、神社本殿の中で神事が行われており、その外の東側のところに御覧の大勢の楽士さんたちが古楽器を手に、雅楽(あの手の音楽は何でも雅楽としか分からない・・・笑)を演奏されておりました。

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 神事が終わるとしばし休憩でみなくつろいでいます。供奉の方々も地域の方なので、知った方もあり、互いにやぁやぁと声をかけ合い、談笑されておりました。

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 2時すぎに車であっけなく行列の方々と神様が立ち去って行かれると、神社はほとんど人影もなく、帰宅して昼食。

 その後3時半からは、団地のお祭りです。これも赤の宮のお祭りの一環なので、ひいては賀茂の神様につながるお祭りであります。
 団地へ入った40年近く前は、団地の方の子や孫、わざわざ呼び寄せられる外孫まで含めて100人以上もの老若男女がこの祭や地蔵盆に参加していましたが、いまは総勢で20人いたかどうか・・・という状態で、ことに子供の数は目に見えて減り、親御さんの数のほうが多いのでは・・・という感じでした。

 わたしの孫も用があったのか、或いはもう中学生ともなれば、さすがの「おまつりおんな」も来る気にはなれなかったのか・・・姿を見せませんでした。

 昔やはり「おまつりおとこ」だった長男が、中一になってもいそいそとお神輿の出る集会所へ出掛けて行ったら、同級生の女の子の親御さんが、あら来てくれたん?!とちょっとひやかすように声をかけていたらしいけれど、なにかこういう非日常的なことがあると、朝早くからそわそわして、喜び勇んで出かけていって、めいっぱい楽しんでくる子だったね、とパートナーときょうも思い出話をしたことでした。

 理事会の役をやっていたときに、祭礼担当の人を中心にお神輿の傷んでいるところを自分たちの手で直したので、それも気になって覗きに行ってみたのですが、神輿の上に立てる買い替えたばかりの鳳凰も祭礼係が土台をちゃんと作ってくれたので、しっかりと安定していましたし、いっぱい取り付けた造花の飾りの類も、取り付け用のフレームを設えてくれた人があったので、途中でとれたりせず綺麗なままで、大過なく行列を終えることができてほっとしました。

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 団地の町内路地を太鼓と掛け声をとどろかせながら練り歩いて、最後は赤の宮神社へ入り、順番待ちして本殿の前で祈祷神事をしてもらいます。これでたぶん神輿に乗っかってもらった神様の霊を御返ししたことになるのでしょうね。



                                  2018-5-12





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