駅を出ると、そこは全体が石灰岩から成る急坂の街で、深く掘った横丁の奥(底)は尖った行き止まりだった。
来た道を駅へ戻るに当たって、連れの若いヤツが這い上がった頭上数10cmの段差を私は上れないので、左手にある洞窟住居の台所の通用口から坂の横手へ出させてもらうことにした、
「そっちから出たいってこと? 良いよ」
とおばさんが云うから、台所へ入ると、おばさんは壁際に寝転んでいて、「あたし、何だか気分が悪くてさ。税理士さんとしゃべってたら体調崩しちゃったらしくて」だと。
え! オレに看病してくれってこと? と私は一瞬逃げ腰になる。
…が、そういう訳でもなさそうなので、
「分かります。私も青色申告ですから」と意味不明の返事をしておいて立ち去ることにした。
宿も取ってないし。
そこへ同業の男たちがどやどや到着して打ち合わせが始まる。
業界の大物、グレアムが幾度も話題に出るので、それ、どんな人ですか?よく聞く名前だけど…
と水を向ければ、
座を仕切っていた石田和靖は、「そうねえ。先ず、あいつはモノを見せないね!」と即答。
おっさん達は大爆笑し、それに合わせて私も笑うのだが、話が理解できず余り面白くない。
さて、そろそろ行かないと。
あんた、宿取ってんの?
取ってません。
ということで、モノを見せないグレアムのせいで、私は自分が扱っている製品が何なのか最後まで分からぬまま居眠りから覚めた。
【越境3.0チャンネル】石田和靖
https://www.youtube.com/channel/UCearf15zMK46uSyUAl6SrFw/about
2022.10.28 (11:40)
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