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2022年03月17日23:04

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重巡「伊吹」その2

 1からの続き
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 機銃用の95式指揮射撃装置は最上同様のシールド付きを付けましたが、艦橋正面センターからやや右舷に装備する事でステイが装甲操舵室スリットの視界を遮らないようにします。この指揮装置で前方4基の機銃を管制します。

 探照灯指揮装置兼高角見張盤は4基から2基に減。探照灯自体を3基から2基に減らす為の処置です。
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 水雷戦用の1式発射指揮盤の搭載に伴い羅針艦橋艤装配置を見直し、後部を拡幅しました。

 メンマストは真鍮線で自作しました。
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 クレーン支柱を兼用する前提で太さを決めます。
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 予備指揮所の構造物はキットの物をベースに改造する事にしました。

 煙突周りの機銃台を自作しました。左上が艦首方向です。
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 本当はこの前方に兵員待機室を含めて一体で作って、その上方に探照灯を乗せるのが合理的なのですが、各部署の艤装がバラバラなお役所仕事的ゴテゴテ感が日本海軍の軍艦デザインの魅力の一つなので、あえて探照灯楼は独立構造物としたままとします。
 煙突後方の兵員待機室は不要パーツのK12(最上用)を切り貼りして自作しました。
 プラモデルは基本オーバースケールに作られてるので、右舷の蒸気捨て管と機銃台が干渉しないよう切り欠きを入れておきます。

 「瑞雲」はキット付属のものに加えて別売の「フジミ 1/700 日本海軍艦艇搭載機セット」の物も使ってみました。キャノピーに手を加えたので折角のクリア成形は台無しに。
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 ここでの瑞雲は史実通りの機体ではなく、十二試二座水上偵察機が開発中に仕様が二転三転して設計変更を繰り返しダラダラと試作時間がかかった末に当初とは随分違った形で完成した機体で、結果的に本物の瑞雲に近似したという設定にしています。
 機体の下部には滑走車を自作して貼り付けました。

 一旦全体を仮組みしてバランスを確認します。
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 カタパルトは航空戦艦用の真鍮エッチング製を調達して使う事にしました。
 搭載機作業甲板が普通の重巡の2倍はありそうですが、これは落とし穴でした。

 98式10cm高角砲。
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 形状は大淀や大鳳に搭載されたものと同じ筈です。
 秋月型に搭載されたフルシールドタイプの後方を開放したようなイメージですが、一般的な想像図の数々が形状バラバラで随分違います(原因の一つは陸上型との混同があると思われます)。運用の便を考え12.7cm高角砲の弱点が改良されてると考えるとこの形と私は判断しました。
 市井に沢山出回っている長10cm高角砲の写真は陸上設置専用の物で艦載型と違います。そのタイプが大鳳や大淀に搭載されたと解説されてる向きがありますが、間違いです。
 
 砲身の仰角をかける為にパーツの根本を横から見て丸く成るよう加工しました。
 開放した後部には12.7cm高角砲の装填機構部を切って接着しました。このパーツ形状では12.7cmも長10cmでもどちらにも見えるので問題ありません。
 長10cm高角砲はラマーや駐退機等のレイアウトを12.7cm高角砲と上下を入れ替え、重心を下げ整備性も良さそうなコンパクトな設計に改良されてます。
 シールド左側には指揮官と射手(仰角担当)、右側には旋回手と信管調定手が入ります。後方には半自動装填装置の外側に仰角に応じて上下する装填台に乗った装填手が配置され、これは12.7cmや長10cm高角砲の特徴と成ってます。

 高角砲や高射砲は砲の尾栓の位置が上下に大きく動く為に一般の大砲と同じ構造では素早い装填作業に支障を生じます。
 さらに速射が要求される砲ですから、素早く装填を続ける為に各国で様々な工夫が為されました。日本海軍では常に適切な位置に装填手が来る様に、仰角に連動して上下する台に装填手が乗る仕組みに成っており、ドイツ陸空軍の12.8cm高射砲も日本海軍式をコピーして使用するほどのナイスアイディアでした(一方で独海軍は砲耳を尾栓直前にする構造を採用。それをソ連がコピー)
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 台に乗った装填手は、砲弾を装填トレーに乗せ(青矢印1)、押し出すと(青矢印2)ラマーが動力で砲弾を尾栓に押し込み閉鎖する半自動式でした。この仕組みは英国の駆逐艦等で使われる平射速射砲の装填機構のコピーで、独12.8cm高射砲ではトレーに砲弾を乗せて以降は全て機械が自動で動かしました。英→日→独と技術が伝わる様が面白いですね。
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 日本だけの独自機構としては、対空射撃に欠かせない信管調定を、この装填作業(赤数字1〜2)のスイングで弾頭が通る部分の溝に調定器の円弧型ラックがあって信管のギアと噛み合わせセットしていました。電磁式砲内調定装置が発明されるまでは、信管の調定が世界で最も発射直前時に出来るアイディアの機構でした(ただし精度には難があったようで、自動装填の独12.8cm砲では別の機構を使用しました)。高射装置での計算結果が出来るだけリアルタイムで信管に反映出来る事が理想の対空射撃では調定が発射までのどの時点で行われるか各国が頭を悩ませる問題でした。
 射手(仰角担当)と旋回手は通常は自身では直接目標は観ず、正面のシャッターは閉まっています。高射装置からの指示角度が射旋回手正面のメーターに表示され、それに合わせるようにハンドルを回し砲を操作するのに専念します。

 因みに高射装置や計算機の故障、通信の切断などの原因により砲側照準と成った際は、指揮官が所見を砲側照準器(見越し角度計算機)を操作する照準手に伝え入力をさせます。そして射手と旋回手は前方のシャッターを開け、照準眼鏡のレチクル中心に目標敵機を捉え続ければ、自動的に砲は目標未来想定位置に指向する仕組みでした。
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 図は89式12.7cm高角砲の照準器の概念説明図ですが、仕組みは長10cm高角砲もあまり変わりません。また12.7cm高角砲では射手と旋回手が隣同士に集中して並ぶ配置でした。
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 余談ながら、丁型駆逐艦の最後期型や一等輸送艦の12.7cm高角砲のシールドが低くコンパクト化されているのは、長10cm高角砲用に開発された砲側照準システム(特に照準眼鏡の支持架)を使うよう設計変更されたからではないでしょうか。

 高角砲は指揮装置から来る指令を砲側が手動で合わせて砲を指向する仕組みでしたが、25mm機銃は高射射撃指揮装置が直接遠隔操作で機銃を動かす仕組みでした。
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 勿論、機銃側にも直接照準の装置は付いており、図のようなルプリエール照準器という見越し角度修正装置が付いており、指揮官が所見を判断し操作入力すれば、射手や旋回手はやはり照準眼鏡の中心で敵機を追えば良いだけという仕組みでした。
 一見すれば分かる通り機銃の直接照準器としては過剰装備なので、開戦後は射手と旋回手が自身で見越し角を判断し狙う簡便な環状照準器に取って変わります。
 因みにルプルリエール照準器が条件的に使えない潜水艦では専用の環状照準器を備えてましたが、これは射手がハンドルを操作すると照準環と照星の距離が敵機の速度や距離に応じて変化出来る凝った仕組みで、勿論これは旋回手の物と連動する精密構造でした。が、潜航する際は取り外して艦橋内の専用耐圧コンテナに保管する必要がありました。なのでほどなくこれも固定式の簡便な物へと置き換わっていきます。
 またまた余談ながら、指揮射撃装置と機銃の連動はセルシン(一般用語ではシンクロ)と呼ばれる電気モーターの回転同調装置を使って各種角度が一致する仕組みを採用していました。一方陸軍の多連機関砲では、電気接点を360度をさらに細かく分けて大量に配置し、指揮装置と機関砲側はON/OFFで角度一致させる一種の機械式デジタル制御が採用されており、陸海軍で同じ目的でも機構を同じとしない役所的縄張り争いが垣間見れて興味深いですね。

 後部艦橋とメンマスト、一体型クレーン。
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 ところでキットのままの配置ではクレーンが内火艇まで届きません。どうやって揚収したのでしょうか?。しかも艇の上に機銃台があるので、フックが届いたとしても上に持ち上げられません。因みに最上型の機銃増備の際には、ボートの搭載位置や角度をずらし、機銃台の形状も釣り上げワイヤーが引っ掛からないように巧みに避けた複雑な形状をしています。
 書籍の伊吹想像図の中には凄い長さのブームで端艇まで届くように描いてる物も見かけられますが、届けば良いってもんじゃ無いだろう、とどう考えても実際には使えす何かのコントかと思ってしまう短絡的で可笑しな思い付きに見える物まで有ります。
 内火艇を台車に乗せておき搭載機用レールで後ろに引き出し、フック下まで移動して釣り上げる「大鯨」式も考えられますが、その時に途上に存在している艦載機はどうするのか?という問題が発生します。目の前の思い付きだけに夢中に成って木を見て森を見ない典型例ですね。
 またそもそもキットのクレーン自体がクレーン&玉掛け資格を持ってる人間の感覚では見るからにコレは使え無いって感じです。その上に回すと搭載機をブームで薙ぎ払ってしまいそうで怖いです。何で利根型と同じ現実的で実用的なグーズネック型にしなかったのでしょう??
 などなど私程度の知識経験ではメーカーによる専門家の正しい考証の根拠は理解出来ませんでした。
 仕方がないので独自にデザインします。クレーン本体は改装後の最上同様にアームは上下に動かずフックは電動のトロリ式でアームの前後にシャトルが移動する仕組みと想定します。取り付け位置を高めとしてトロリは水平移動し負荷を軽減しました。回転軸は他の重巡とは違い丸いギアの上にアームが取り付けられてると想定。より大きな可動範囲を確保しました。アームのギヤに動力を伝える小歯車を回す軸も忘れず工作します。
 機銃台は2基分を確保したかったので無理やり感満点に。
 95式機銃高射射撃装置とその上の見張り方位盤(矢印5)のシールドは必然性が低く軽量化の意味でも暴露タイプで良かったような気がします。
 13号電探は昔のピットロードの武器セットのジャンクから拾って付けました。

 また仮組をして最終的に確認します。
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 艦尾の機銃にも指揮装置を用意しました。
 キット付属の爆雷と投下架台は人間の背丈ほど有りそうで大き過ぎる気がしますが、このままで。

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 リノリウム貼り甲板以外は下塗りに艶消し黒を缶スプレーで吹いて、再び仮組してみたところです。

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 リノリウム甲板は独立したパーツの配慮が為されてるので、先ずは下塗りとして全面リノリウム色を塗装し、それ以外の細かい部分も船体と接着する前に筆で塗ってしまいます。

 上甲板を船体に接着。
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 魚雷発射管はまだ接着前で、内火艇搭載位置と干渉しないか最終的に確認します。
 12mランチや内火艇が厚紙でデッキプランを練ってみた物より大きくて収まるのか焦ります。
 発射管の開口部を覗き込んだ際に、向こう側が透けてしまわないよう、急速装填装置部分に厚板を接着してあります。
 なお、ご覧のように水雷兵装を成立させるには搭載機作業甲板を支える構造が殆ど取れません。爆装した瑞雲が乗っても大丈夫なように、魚雷兵装の邪魔に成らない位置に小部屋の倉庫類が多数設けられたと思われます。また、装填装置回転軸上方にも柱を設けて甲板を支える補強をする必要があったかも知れません。高角砲甲板下のメンバーを強化して対処するのは重量増と上甲板内作業高さの余裕が無くなるので避けたいところです。
 急速装填装置の位置は鈴谷では元々工場や航空関係の部屋、何よりラムネ製造所がありましたが、発射管を後退させたので前方に移設されたと想定しました。
 魚雷洗浄場は発射管と急速装填装置の間を想定しています。一方、魚雷調整作業場のスペースが取れないのが悩みどころの一つです。
 内火艇搭載位置には本来下士官兵用のトイレがあり、これも移設と成りますが、前に移動してしまうと厨房の隣がトイレなんて事に成りかねないので、移設部のやりくりは悩みそうです。勿論、プラモでは内部は作らないのでそこまでは考えない事にします。

 魚雷の弾頭は「睦月」作例同様に訓練用の赤としました。実際は赤白の縞模様等、極めて目立つように塗られていた筈です。訓練弾頭を派手に塗るのは世界共通で、目立たねば成らない理由は睦月記事を参照して頂けたらと思います。
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 では一方で実弾頭は何色か?というと、よく分かりません。市井で見るイラストや模型は全て「黒」に成ってますが、これは実は根拠の無い色彩で、どうやら昭和30年代の第一次戦記ブームに描かれたイラストがその後誰も疑問に持たず孫引きコピーされて常識化されたようです。実際は訓練弾頭だった物の白黒写真を見て、黒に見えたから魚雷の弾頭は黒に違いないと当時思ったのかも知れませんね。
 実際実弾頭が何色だったかは現在研究家の方が聞き取り調査等の情報と合理的な解釈で仮説を立ててますので、研究発表記事を待つ事にしたいと思います。
 なお、発射管形状はキットのままとしてありますが、実際には弾頭側面位置にはデフレクターが装着されているので真横から弾頭は見えません。が、それでは恰好が良くないので模型的見栄えを優先しました。
矢印6:魚雷搭載作業見張り台。木製のグレーチング構造。実際には使用時以外は折り畳まれて甲板上に格納されてました。

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 さらに高角砲甲板も接着。

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 バーベット、高角砲機銃座、吸排気塔などを接着。

 またしても仮組。
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 この状態だと本来の最上型と随分印象が違います。

 メッシュ(パンチングプレート)や滑り止め甲板は塗装でそれらしく演出しました。
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矢印7:航空作業射出指揮所。床が木製グレーチングで露天としましたが、適宜天幕を展張したと思います。

 迷彩塗装は創作してみます。因みに実艦では塗装ではなく「塗粧」という用語を使います。
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 艦首尾は全長・速力欺瞞とカウンターシェード、中央部は島嶼部対応型で上部に向かって明度を上げる背景溶け込み型を考えてみましたが、ほぼ米海軍メジャー12スキムの色違いの様相と成ってしまいました。というか欲張り盛り込み過ぎです。
 主砲のキャンバスはカーキで着色され、それが退色した感じを想定。高角砲は砲とシールド間に隙間が無い構造上キャンバスは必要無しと判断しました。

 艦橋の塗装と組み立て。
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 リノリウム、グレーチング、海図台と別々の木調色で塗りました。旗箱の覆いも砲塔同様の着色キャンバスを使ってると想定しました。
 なお、伊吹の艦名信号符号はおそらく「JLKA」に成ったものと推察されます。
 舷灯部地色は右が緑、左が赤です。
 順次パーツを接着していきます。
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矢印8:シールド付見張り方位盤と後ろは1.5m測距儀 
9:12cm双眼鏡
10:1式発射指揮盤1型(自作)
11:97式雷撃方位盤1型
12:60cm信号探照燈
13:高角見張方位盤
14:探照燈管制器兼高角見張方位盤
15:92式発射指揮盤兼高角見張方位盤
16・18:12cm高角双眼望遠鏡5型
17:12cm高角双眼鏡13型
19:天測用従羅針儀付12cm双眼鏡兼赤外線哨信儀
 これら双眼鏡類は1/700という事もあり皆オーバースケールでパーツ形状も同じです。
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矢印20:第1缶室吸気口
21:1〜4煙路開口部の位置
22:第3〜6缶室吸気口。その後ろの構造物は高角砲弾薬供給所
23:5〜8煙路開口部の位置
24:第7・8缶室吸気口。鈴谷として見た場合、このパーツの形状は少し違う気がします。
25:前部機械室吸気口
26:前部右舷機械室排気口。吸気に排気が混じってしまわないよう、舷側方向と後方にのみ開口しています。
27:後部右舷機械室吸気口。端艇格納庫内に配置しました。苦肉の策です。
28:後部右舷機械室排気口。鈴谷より中心に寄せて左右排気口を合体しました。

 煙突の組み立て。
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矢印29:汽笛位置。蒸気捨管が別パーツで精密に再現されてる一方、汽笛はモールドも無く、作業台のみが再現されてます。
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 3に続きます。

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