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2021年10月07日03:13

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9月映画ふりかえり

 夏休みが終わって一気に作品が増える時期なのだが、9月に観れたのは3本だけでした。

「シャン・チー テンリングスの伝説」

 中華マーベル。どうもアベンジャーズ完結後に全く新しいヒーローシリーズをやるようで、今作の主人公は中国人。見た目超地味だが魔法の力を持つ10個のわっかを、体にまとったりファンネルみたいに飛ばしたりして戦う斬新なスタイル。アクションはド派手だし、アジアンモチーフの原始的な集団戦闘やら幻獣(どこが顔か分からない翼のはえたマスコットが可愛い)など見所いっぱいなのだが、個人的に気になったのは「殺しを扱う割には画面の一滴も血が流れない」というところ。

 いまやディズニー配下になり、ファミリー層も見るようになった全年齢のアクション映画に言うのも野暮だけど、どう見ても斬った斬られた、部位が損傷するようなダメージなのに血が一滴も出ない。主人公が「半ば人間兵器として殺し屋として育てられた」という重い過去があるのだが、その説得力がイマイチ欠けるというか、惨状の割には画が綺麗すぎるというか、粗探しのレベルだけど引っかかってしまった。同じアジアのバトル映画で、先にモータルコンバットを見ているから基準が引っ張られてるかもだが。


「リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様」

 初のフルCGアニメになったテニプリ。原作はちょっとしか読んでないが、いかんせん予告の破壊力(テニスギャング、集団ダンス、足ラケット)が凄まじかったのでノリで鑑賞。完全ファン向け映画ではあるのだが、一応独立したストーリーと、フィーリングに身を任せるミュージカル構成に完全に吞み込まれる事に。

 タイムスリップというとんでもテーマすら霞む「全てテニスで解決する」怒涛のシナリオ。いつ飛び出すか分からない歌とダンス(見た目はアニメだがやってる事はテニミュ)時空を超えて召喚される他部員たち! 物理法則を無視した超絶テニス! ひたすら可愛い竜崎! 本作は一部シーンと最後のミニライブを変えた「decide」「glory」の2verがあるのだが、その両方を観てもなお飽きない、エネルギッシュかつボリューミーな濃厚映像…!

 やってる事はシュールだし、どこか確信犯的なギャグなんだろうけど、受け入れてしまえば確かに感じるCOOLな世界。特にラスト10分を飾るフェスティバルは原作のコマを2Dライブアニメで動かしつつキャラソンを流しまくる怒涛のメドレーで、生き生きとしたキャラの躍動感やカッコいい楽曲の数々にメロメロ「これ原作ファンはたまんねえだろうな」とにわかファンにも分かるテニプリの歴史が押し寄せてくる。

 普通この手のアニメ映画は知ってる人しか見に来ないものだが、作品そのものが異様な活力に溢れていると、そのエネルギーに圧倒されて満足感を得る事がある。作品を語れる程の知識はないが、予告に釣られて観に行った結果、見たいものとそれ以上のものが見られたし、主題歌である「世界を敵に回しても」はiTunesで買ってしまう。2.5次元ミュージカルの始祖にして、00年代ジャンプを支えた看板マンガ、そんなテニプリの貫禄をたっぷりと見せつけられるのであった。


「整形水」

 韓国発のサイコホラーアニメ。日本ではWEBマンガとして輸入されてるらしく、豪華声優陣による吹替というバックアップも経て日本上陸。自身の顔立ちからコンプレックスを感じ、社会的にも憤りを感じていたスタイリスト・イェジがある日「整形水」という幻の美容薬品を手に入れて…という話。効能が「肉を溶かして付け替える」という時点で大体予想できる顛末と、それから先の予想だにもしなかった悲劇と恐怖が本作の見所だ。

 イェジは違法な手段と莫大な出資を犠牲に、誰からも蔑まれる顔と太った肉体を捨て、誰もが振り向く絶世の美女へと生まれ変わる。筋書から見ればシンデレラだが当のイェジが同情しうる悲劇のヒロインでなく、自分に甘く社会を憎む俗人なのがポイント。整形水の資金調達が親を脅して金をせびる時点で、清々しいまでに「こいつはダメだ」と思わせてくれる。いずれ破滅を迎えるであろうイェジ、作品のテーマ的にハッピーエンドがない事は分かるが、だとすれば「どう身を滅ぼすか」へと感心は変わっていく。

 また、個人的に感じる韓国映画の特徴と魅力に「自国を容赦なく自虐する」というものがあって、本作から発せられるのは社会的に根付く顔面偏差値の価値観(美人は得)だったり、トップタレントが次々と入れ替わるブラックな芸能界だったりする。韓国人にとって整形は身近なものであり、トップアイドルグループは皆同じような顔立ちになっていく。作られた美をもってしてなぜ若者は芸能界へと行くのか、そしてトップに上り詰めたはずのスターがなぜいなくなるのか。それがイェジの視点を通して、少しだけ共感しつつ見せられていく事となる。

 なお本作は3DCGアニメでお世辞にも動きは良いとは言えないのだが、作品のテーマ的にぎこちない動きや、アニメみたいな美形の顔がマッチしている。この歪なビジュアルで肉をアレしたり刃物でコレしたりするので、思った以上にホラー要素が高まったのも高ポイント。社会的かつ変則的なドラマもあって、なかなか掘り出し物な一作だった。
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