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2021年10月11日21:36

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<東北・米価危機>(上)主要銘柄全てが前年下回る(中)「ブランド米」も価格二分化(下)輸出や消費拡大で活路模索

<東北・米価危機>(上)主要銘柄全てが前年下回る
2021年10月11日 06:00
河北新報
https://kahoku.news/articles/20211010khn000008.html
東北の全農各県本部が農協に支払う2021年産米の概算金は、主要銘柄が大幅に下落した。大規模な作付け転換を図り、主食用米の生産を絞ったにもかかわらず、新型コロナウイルスの影響で業務用を中心に需要が低迷し、コメ余りに歯止めがかからない。出来秋を迎えた東北で、衝撃が広がる現場を追った。

下落額最大は「だて正夢」

米価下落におののく生産現場とは対照的に、小売店は新米を求める買い物客でにぎわっていた。

仙台市宮城野区のみやぎ生協幸町店で9月下旬、21年産の宮城県産ひとめぼれが売り出された。5キロの販売価格は1780円(税別)。前年同期比で100円安い。発売時の値下げは2年連続だ。

2キロ(780円)を購入した青葉区の無職女性(78)は「おいしいお米を少しでも安い値段で購入できるのはありがたい」と歓迎した。

概算金の水準は店頭価格、生産者の収入、出荷業者や卸売業者の相対取引価格など幅広く影響する。

東北の主な銘柄の概算金(1等米、60キロ)は表の通り。16銘柄全てが前年を下回り、半数が1万円を割った。下落額が最も大きいのは、だて正夢(宮城)の4300円。他の多くの銘柄も2000〜3000円台の減額を強いられた。

全農青森県本部はまっしぐら、つがるロマンともに過去最大となる3400円の引き下げ。成田具洋米穀部長は「競合する関東のコシヒカリが8000円台で市場に流通し始めていた。各産地が大幅に落ち込むと予想し、青森も下げざるを得なかった」と説明する。

岩手のひとめぼれは2300円減の1万円。県県産米戦略室の佐藤実県産米戦略監は「肥料や農薬にかかる費用も含めた生産費を考えると非常に厳しい」と指摘する。

自助努力に限界

人口減や食生活の変化に伴い、主食用米の需要は年約10万トンペースで落ち込む。外食需要の減少を招いたコロナ下で2回目の作付けとなったコメ産地は、国の交付金に自治体独自の支援を上乗せし、主食用米から飼料用米などへの転作を強化した。

東北6県の主食用米はいずれも前年比で減産となる見通しだが、相対取引価格は20年6月以降、前年割れで推移する。東北6県の民間在庫量(今年8月時点)は計約44万1900トンで、前年同期から約4万9000トン増えた。

宮城県内の大規模農業法人は、ひとめぼれなどの水稲を約100ヘクタール栽培する。今年は飼料用米への転換を拡大したものの、概算金下落に伴う減収は約2000万円に達するという。

「想定以上の下落に驚いている」と法人の幹部。「工場の設備投資計画を見直し、飼料用米は多収性品種の導入を検討する必要がある」と不安を抱えながら今後を見据える。

数千トンもの20年産米を抱える東北の卸売業者も深いため息をつく。「在庫を長く持つほど価格は下がり、保管などの経費がかさむ。赤字を抑えるため、古米の製品を新米より安く売るなど対策を取るつもりだが、自助努力には限界がある」

秋田県農協中央会の斉藤一志会長は「作付け転換に協力してもらった生産者を裏切ったような気持ちだ」と真情を吐露。「国は過剰米の市場隔離、政府備蓄米の柔軟な運用などで需給調整機能を発揮すべきだ」とさらなる対策を訴える。

<東北・米価危機>(中)「ブランド米」も価格二分化
2021年10月11日 06:00
河北新報
https://kahoku.news/articles/20211010khn000009.html
激化するブランド米の産地間競争に、東京電力福島第1原発事故の被災地から誕生した新品種が挑む。

今秋本格デビューの福島県産米「福、笑い」。県内61農家が計25ヘクタールに作付けし、130トンの収穫を見込む。主な販路は首都圏の百貨店や高級スーパーで、価格は国内トップ級の1キロ当たり800円程度を目指す。

原発事故に見舞われた福島産米のイメージ回復という使命も帯びる。いわき市の生産者、安島美光さん(66)が望む。「一粒一粒の味わいや食感がしっかりしていておいしい。首都圏の食卓に並べばうれしい」

意欲低下を懸念

コメ離れに新型コロナウイルス下の需要減が重なり、「ブランド米戦線」にも異変が起きている。

象徴的なのが宮城県のだて正夢だ。2021年の作付面積は約920ヘクタールと、デビューした18年の約3倍に広がる一方、21年産米の概算金は前年比4300円(30・6%)減の1万円に沈む。「ブランド米とは呼べない価格水準」(県北のベテラン農家)と、生産意欲の低下を懸念する声が上がる。

全農県本部の大友良彦本部長は「新銘柄として日が浅く、大変苦戦している」と受け止める。全国の産地が食味の良さやブランドイメージを競い高値販売を狙う中、だて正夢はあえて価格を抑えることで販売棚を確保し、消費拡大を狙う。

県や農協グループなどでつくる「宮城米マーケティング推進機構」は11月中旬まで大消費地の東京、大阪、名古屋で百貨店と連携したPR事業を初めて展開する。和洋中の弁当やレストランのメニューにだて正夢の新米を使ってもらい、実食の機会を増やし、リピーター獲得につなげる。

日本穀物検定協会(東京)による食味ランキングで、18〜20年産が最上位の「特A」を獲得した岩手県の銀河のしずく。全農県本部の佐竹雅之米穀部長は「単価的にひとめぼれより高く、あきたこまちより収量がある。『冷めてもおいしい』とお客さまの評価が高い」と自信を見せる。生産量を21年の6800トンから24年には3万トン超まで拡大する計画を練り、特約店での販売増加も視野に入れる。

強気の生産量増

先行きが不透明なコロナ下で、高価格を維持する銘柄もある。山形県のつや姫、青森県の青天の霹靂(へきれき)だ。21年産米概算金は東北の主要16銘柄で最上位の1万5000円台に設定された。

山形県や農業関連団体などでつくるブランド化戦略推進本部は7月、22年産の生産量を決定。つや姫は約500トン増の約5万3500トンと強気に見積もった。「巣ごもり需要」で底堅い家庭用が大半で、業務用が多いはえぬきからの移行を念頭に置いたという。

青天の霹靂は市場デビューが15年と後発ながら、食味ランキングでは特Aの常連。家庭用需要を取り込み、20年産の販売も堅調に推移するが、全農青森県本部は今年、概算金を定めるための「目安額」を初めて引き下げた。つや姫などライバルの末端価格の安値傾向を踏まえ、「青天の霹靂の価格が高いままだと需要が細ってしまう」(担当者)と気を引き締める。

市場では22年、秋田県があきたこまちを超える大型銘柄化を志向する「サキホコレ」も参戦を予定する。弱肉強食のブランド米の戦いが一層熱を帯びる。

<東北・米価危機>(下)輸出や消費拡大で活路模索
2021年10月11日 06:00
河北新報
https://kahoku.news/articles/20211010khn000011.html
深刻な米価下落に直面する東北の農家らが、トンネルの中で光明を探る。

7月下旬に本格稼働したばかりの秋田県大潟村のパックご飯工場で、衛生管理を徹底した従業員たちが精力的に仕事を進める。

パックご飯好調

事業を担う「ジャパン・パックライス秋田」は県産米を中心にパック用に加工し、年間の製造能力は3600万食に上る。新型コロナウイルス下の巣ごもり需要を背景に滑り出しは好調で、将来的には年間生産量の3〜5割を米国やアジアへ輸出する青写真を描く。

国内ではライフスタイルや食生活の変化で、コメの需要や生産が縮小傾向にある。パックライス秋田の涌井徹会長は「従来の政策では産業として成り立たなくなっている。輸出による拡大生産にかじを切らなければならない」と見据える。

2021年産の概算金が7年ぶりに1万円を割った宮城県の主力品種ひとめぼれ。業務用の引き合いが強く、誕生30周年をアピール材料に、県は3000万円の予算を投じた消費拡大緊急支援に乗り出す。

支援例として、県内外の中食や外食の飲食店でひとめぼれのお代わりや増量を無料にする方法を想定。今後、公募型プロポーザルで事業の委託先を選び、22年1月中旬〜2月中旬ごろに100店舗以上で100トン以上の消費を目指す。

東京都内で9月29日開いた新CM発表会で、全農県本部運営委員会の高橋正会長も「おいしい宮城米を全国のより多くの消費者に届けていく」と力を込めた。

米価下落による打撃は、コメ販売収入の多い大規模農家ほど大きい。

主力のはえぬき、ブランド米の雪若丸の概算金が2年連続で下落した山形県は、概算金の支払いから収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)交付までのつなぎ資金として500万円を上限に無利子融資を行う。岩手県は本年度、国の交付金に合わせて主食用米からの転換に10アール当たり5000円を上乗せ助成する独自事業を初めて実施した。

経営の柱に転作

東北農政局が発表した東北の作柄概況(8月15日現在)は、全国唯一の「良」となった青森を筆頭に豊作基調。作況次第では余剰感が膨らむ可能性がある。

減収が見込まれる農業者を支えようと、福島県は「農業経営収入保険」に新規加入する際の保険料を補助する関連費用約3800万円を、本年度一般会計補正予算に計上した。

青森県南の農業法人はコメや大豆、野菜といった農作物を計約140ヘクタール栽培している。転作を経営の柱に据え、コメも作付面積約60ヘクタールのうち備蓄用が大半を占める。主食用は10ヘクタール程度にとどめているという。

法人幹部が提起する。「国や自治体が価格の安定維持を図るのはありがたいが、個々の生産者や法人が自分の経営を見つめ直し、今後の方向性を考える必要性があるのではないか」

東北大大学院の冬木勝仁教授(農業市場学)は「米価下落は、消費者が買い求めやすくなる点でプラスかもしれないが、生産者の所得が減り、安定供給の面では手放しで喜べる状態ではない」と説明。要望が高まる過剰米の市場隔離について「有効な対策の一つと思うが、コロナ下での時限措置。各産地での本格的な非主食用米への転換、需要に応じた生産の推進が求められる」と指摘する。
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