■伊藤万理華主演『サマーフィルムにのって』好きなものであふれた秘密基地、本編映像解禁
(ORICON NEWS - 2021年08月14日 20:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6629463
■金子大地、伊藤万理華の演技をリスペクト「最高っす」
(ORICON NEWS - 2021年08月07日 13:20)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6621371
■伊藤万理華主演『サマーフィルムにのって』“もうひとつの青春の1ページ”WEBで公開
(ORICON NEWS - 2021年08月06日 21:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6620699
■伊藤万理華に新人賞総なめの予感！乃木坂卒業後に引きこもったのは「必要な時間」
(ドワンゴジェイピーnews - 08月06日 17:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=217&from=diary&id=6620246
大雨の中、映画なんて観に行ってたのかと呆れた方もいらっしゃるかも知れないが、観たのは先週なので。
まあまあお客さんも来ていて、パンフレットは売り切れてた。全国42館でしか上映してないから、興収ランキングには全く入ってこないけれど、公開規模を考えればそこそこヒットした方だろう。主演の元乃木坂46の伊藤万理華、結構人気があるようだ(よく知らないので、ファンの人にはゴメンナサイ)。
本作は今年８月27日から開催予定の第46回湯布院映画祭でも上映予定だった。本当はそちらで鑑賞するつもりだったのだが、緊急事態宣言の煽りを喰らって、11月に延期になってしまった。万里華ちゃんもコロナに罹って、ゲストで来られなくなった模様。それで由布院行きは泣く泣く諦めて、通常公開で観ることにしたのだった。
でもわざわざ由布院まで出かけていって見なきゃならないほどの映画だったかというと――正直、微妙？ と言わざるを得ないのである。何というかねえ、全体的に「薄味」なんだよ。
いや、最初の「ツカミ」には結構グッと来るものがあったんだよね。
主人公は、映画部に所属している「ハダシ」(演：伊藤万理華)。多分、あだ名なんだろうが、本名も、あだ名の由来も明かされない。彼女は今、同じ部員の月島花鈴(甲田まひる)が撮っているキラキラ青春映画『大好きってしか言えない』(←確かこんな感じのタイトル)の制作スタッフとして働いている。でも本当に彼女が撮りたいのは何と「時代劇」。高校三年、最後の夏、チャンスは今しかないのだ。
そこで彼女は仲間を集める。SFオタクのビート板(河合優実)、剣道部のブルーハワイ(祷きらら)、他にもスタッフを集めていよいよ撮影開始――というところで、肝心の「主演俳優」がいない――凜として、しかしどこか儚げな、宿命を感じさせる侍を演じられる男はいないものか――ドツボにハマった彼女が、ふと立ち寄った名画座で出逢った少年・凛太郎(金子大地)。これだ！ 懸命に出演を依頼するハダシと、必死になって断り続ける凛太郎。実は彼には、彼女の依頼を引き受けるわけにはいかない、深い事情があったのだ――。
まず、ハダシの「時代劇オタクぶり」、これがかなり気合いの入ってるものなのがいい。彼女たちの「隠れ家」でこっそり観ているのが『新・座頭市�供紳�10話・冬の海』。部屋に貼ってあるポスターが『十三人の刺客』(オリジナル版)に『MIFUNE』。ブルーハワイとは雷蔵版『大菩薩峠』の、凛太郎とは『座頭市物語』の話題で盛り上がり、「この殺陣、誰のか当ててみて！」と、某映画の殺陣をそっくり真似てみせる(私は一発で分かったよw)。映画のクライマックスはもちろん武蔵×小次郎を連想させる「浜辺」だ。
最初は好きな映画も撮れず、悶々とした仏頂面で正直ブサイクだった彼女が、撮影が進むにつれて目がキラキラと輝きだし、どんどん可愛くなってくる。映画の魔法が確実に彼女に掛かっていくのだ。妥協を許さず、脚本を何度も練り直し、演出も苛烈を極めていく(でも演技が下手なのは蜷川幸雄をモデルにしてるのかなw)中、彼女の映画への思いは、主役の凛太郎にも寄り添うようになり――「宿命」の嵐が、ハダシと凛太郎の二人を襲うことになるのだ。
と、これ以上書くと、肝心要のネタバレに触れざるを得なくなるんだけれど、もう予告編でもチラッと触れてるし、解説記事でも大々的に書かれてるんで、諦めて言ってしまおう。実は凛太郎の正体は「未来人」。彼のいた未来では、映画は残っていても「映画館」は消滅している。彼は、未来の巨匠監督であるハダシの「幻のデビュー作」を観るために、現代へとタイムトラベルしてきたのだ。
意外な展開で、これからお話はどう転ぶの？ って期待はさせてくれるんだけれど――ここからがどうにも大雑把で「薄味」な感じになっちゃうんだね。
まず、未来においてどうして映画館が絶滅してしまったのか、説明が一切されない。これは観客が勝手に想像すればいいってものでもないだろう。未来社会のありようを伝えるための重要な要素なんだから。
時間遡行に伴うタイム・パラドックスについてはどうかというと、ＳＦオタクのビート板が「宿命パラドックス」の一言で片付ける始末(だいたいあいつはいつ凛太郎が未来人だって気づいたんだよ)。
つまり「未来から来た人間が何をやってもそれは予め仕組まれたもので歴史改変は行われない」ってことね。それ、先に説明しちゃったら、落ちまでバラすのと同じなんだけれど。歴史改変がなされるかなされないかは、最後に持って来るのがセオリー、と言うよりは、そうしないとサスペンスも何も盛り上がりようがないんだが。凛太郎もその友達も、ドラえもんより軽いノリで現代に来ちゃうし。
ビート板、読んでるＳＦが『時をかける少女』やハインライン(多分『夏への扉』)レベルだから、これまでＳＦ作家がどれだけこのタイムパラドックスの解決に苦心してきたか、よく分かってないんだろうなあ。
主人公を含む三人組のキャラ設定は悪くなかったんだけどね。『映像研には手を出すな！』の電撃三人娘みたいに、それぞれの個性が生きてる。役割分担がはっきりしているのがいい。
でも、実はキラキラ青春映画好きのブルーハワイのエピソードとか、ビート板の淡い失恋、そのあたりの話がどうもうまく本筋に絡んでこないんだよね。意外といい奴だったライバル花恋がハダシの映画に助っ人にって、ドラマを盛り上げようとする意図は分かるんだけれど、本筋との繋がりが「甘い」から、見せ場と言うほどのシーンにはならない。
結局、お話を小出しのネタで繋いでも、他愛なくて、散漫な印象しか与えないのだ。正直、ラストはそうしなきゃ収まらないだろうなあって予測の付く終わり方だった。
ハダシと凛太郎の決着はどうなったのか？ って終わり方、五味康輔の『柳生連也斎』だよね。五味さんは「分かりきってるじゃないか」と嘯いて、真相については何も答えなかったけれど、本作のラストについては「どうでもいい」。期待値がこれだけダダ下がりしていったケースも珍しいね。もしかしたら私、青春ラブコメって奴が肌に合わないのかも知れない(笑)。
それでも「映画のメイキングもの」としては、先日観た本広克行監督『ビューティフルドリーマー』よりも十倍は面白いのだ。そんな最低作と比較してどうする、と言われるかも知れないけれど、少なくとも『サマーフィルムにのって』のハダシは――伊藤万里華は、本当に「映画好き」に見えた。時代劇が本当に好きなんだと、その構えと殺陣で感じさせてくれた。そこが、映画を適当に撮ってるようにしか見えなかった『ビューティフルドリーマー』とは大違いな点だ。
本当の伊藤万里華は、別に時代劇が好きなわけでも詳しいわけでもないんだろうなあ、「ハダシ」って女の子は、やはりこの映画の中にしかいない、青春の幻影なのである。…はあ(溜息)。
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