■小山田圭吾さん謝罪文全文 自身のツイッターに掲載
(朝日新聞デジタル - 07月16日 19:14)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6594627
■小山田圭吾の“いじめ自慢”と、90年代鬼畜ブーム。なぜ彼は間違ったのか
(日刊SPA！ - 07月17日 19:31)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=81&from=diary&id=6595718
■小山田圭吾さんの炎上・謝罪についてツイート？古市憲寿さん「個人的には謝罪や許しよりも、忘れることが大事だと思っている」
(ガジェット通信 - 2021年07月18日 13:21)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=85&from=diary&id=6596318
問題になった『QJ(クイックジャパン)』第３号、1995年の発行と言うから、ちょうど私も購読していた時期だ。けれども当該の「いじめ記事」は記憶にない。多分買い始めたのは、その直後からだったのだろう。なんぼなんでも、こんなキョーレツな記事を読んでて忘れるってことはなかろうし(ホントに忘れたんだったらどうしましょ)。
ただ、当時のライターの皆さんが一様に証言しているとおり、「悪趣味ブーム」「鬼畜ブーム」と呼ばれるような、露悪的な記事が雑誌で横行していたのは事実だ。
別冊宝島が『トンデモ悪趣味の本』を上梓したのが1996年２月。本には「モラルそっちのけの,badテイスト大研究! 」というサブタイが付けられていて、取り上げられた記事は「寄生虫」「フケ専ホモ」「奇形ビデオ」「蛭子能収(注：漫画家としてのね)」「ウンゲロAV」「秘宝館」「佐川一政」「犬鍋」「死体カード」「怪物売春婦」等々、一般常識人なら確実にドン引きする内容。
もっともこれはもう「悪趣味ブーム」の集大成みたいな本で、それまでにはアート系の漫画家やライターが、70年代アングラ芸術の暗部を引き継いだかのようなゲテモノ文化を見世物的に紹介する作品を書きまくっていた時代があったのだ。
もちろん、そんなものに一切触れようとしなかった人もいただろう。蛭子能収や根本敬の漫画なんて読んだことがない、村崎百郎って誰？ ってのが多くの一般人の反応だろうと思う。困ったことに、そういう人は、自分がそういうものを知らずに来たものだから、「悪趣味ブームなんてものはなかった」と思い込みがちである。
そして、さらに困ったことには、当時のライターで悪趣味ブームについて解説する人たちに向かって、「小山田圭吾を擁護するのか」と怒り出すのである。実際、Twitterでは今、竹熊健太郎さんや吉田豪さんが集団ヒステリーの餌食に遭ってるんだよね。竹熊さん、吉田さんは、単に「なぜあの時代に小山田圭吾の『いじめ告白記事』が掲載されてしまったのか」、その文化的背景を説明したに過ぎなかったのだが、小山田圭吾憎し、五輪憎しのコロナ脳のみなさんには、「時代観察者の証言」というものは理解の外だった模様である。
小山田圭吾のいじめ自体については、あまり言及したいとは思わない。
子どもの頃に酷いいじめに遭った経験がある人ならご理解頂けると思うけれど、もう忘れていたいんだよ。思い出したら本当に胸が苦しくて息が出来なくなる。今更謝りに来られたって、恨みが再発するだけだ。その場で突発的に俺が相手を刺したりしたらどうするんだと思う。古市さんが「忘れることが大事」と仰ってるのもそういうことだろう(追記：古市さんの発言は小山田氏の件とは無関係とのこと。ご本人からの説明がありました。ガジェット通信も記事として出すなら裏取りしろよ)。
だから逆に、ネットで延々と小山田圭吾を非難し続けている人たちは、既に「暴走」していて自身の抑制が出来なくなっているとしか思えないのだ。実際、小山田氏の過去のいじめが告発されるのは、今回が初めてではないらしい。ことあるごとに、「障碍者をいじめた過去」が掘り返される。もちろん今なら犯罪として立件されても仕方がない事例であるから、糾弾されること自体は当然である。けれども、何度も何度も執念深く告発し続けるその精神、そして先述したとおり、無関係な竹熊さん吉田さんまで非難する精神、さらには小山田氏の息子のTwitterアカウントまで探し出して、突撃を仕掛ける(ホントにやってるんだよ)精神、それはもう「異常」の域に入ってしまってはいないか。入ってるよ。
それが本当に「自分も過去にいじめられた経験があるから」って言うのなら、まだ理解は出来るよ(注：理解できるだけで、やっていいとは思わん。念のため)。
でも、今、小山田氏を糾弾してる連中のみんながみんな、本当に「昔のいじめられっ子たち」なのかな、と疑問に思う。私も、本当は「いじめ問題」についてなんか長々と語りたくないもの。この文だって、自分の過去語りを省略してるのは、その辺まで綴り始めたら涙で目がかすんで指が震え出すのが分かってるからだ。
だから、「何の衒いもなく」小山田氏を非難している連中の中には、相当数「いじめる側(あるいはいじめてきた側)の人間」が混じっているのではないかと思うのだ。暴力こそ振るったことはなくても、言葉の上でのいじめ、からかい、遊びの中でのつまはじき、それくらいは誰でもやってるよね。そんな軽いいじめですらやったことがない、と断言する人は、無意識のうちに確実にやってるよ。他人をいじめたことのない人間はいないのだ。
そう考えると、「SPA!」がこの小山田糾弾の嵐を「ネットリンチではない」って見てるのは、甘い観測じゃないかなって気がする。おそらく、小山田氏の一連の発言は、今後の彼の活動にも影響を与え続けるだろう。彼は「一生」許されることはない。どんなに反省の弁を述べようとも、執念深い非難者たちは「死ぬまで」彼を責め続けるのだ。だって、いじめは楽しいもの。彼らは「相手がいじめ加害者なら、いくらいじめても構わない」というリクツに基づいて、自分もまたいじめ加害者の側に廻っているのだ。どの呟きを見ても、いじめの快感に酔っている様子が見える。
そして、批判者たちが一切考慮に入れようとしない可能性――小山田氏がこの非難を苦にして、自ら命を縮める可能性である。「可能性」があるってことには気づいてるだろうよ。でも、「まさか死にはしないだろう」と楽観的に考えているか、「死んでも構わない」と憎悪に駆られて自分を見失っているか――そのどちらかだと思う。
「ネットリンチじゃない」ってのは、小山田氏を死に追いやるかも知れないって現実から目を背けているだけの言い訳に過ぎないんだよ、木村花さんを自殺させた時も、糾弾者は自分の「正義」を疑ってなかったんだからね。花さんが死んでもいいと思っていたのだ。
正直、小山田氏がパラの音楽担当を続けようが辞めようが、私はどうでもいいと思っている。作品と作曲者をいっしょくたにして非難するのがおかしいと思うし、そもそも五輪自体に関心がない(苦笑)。パラ開閉会式ディレクターに再就任した小林賢太郎さんは困ってるだろうなと思う程度である。小山田氏が担当を継続するってことで、さらに「義憤」に駆られてしまった人も少なくないようだが、その「義」の部分に、やはり胡散臭さを感じずにはいられないのである。
「批判する人間は、実は批判される側の人間」の例として、これもよく例に挙げるんだけど、ドキュメンタリー映画『アウトレイジ』(たけしのに非ず)で紹介された、「ゲイであることを隠すために、あえてゲイ叩きをする�爛�ローゼット議員�瓠廚辰討里�アメリカには相当数いるのである。差別されるのが嫌だから、差別する側に廻るという、どうしようもない連中。「過去にいじめたことを隠すために、今、同じくいじめた経験のある小山田氏を叩いてる」やつらも、絶対にたくさんいると思うよ。
本当にいじめられた経験のある「あなた」は、そんな「隠れいじめっ子たち」に同調したいのかな？
最後に、「本当にいじめられてきたあなた」に、これだけは言っておかなきゃならないことがある。
小山田氏のいじめに怒りを覚える気持ちは分かる。でも、小山田氏は別に「あなた」をいじめた相手ではないのだ。「あなた」をいじめた相手とは別人なのだ。そして「あなた」は陪審員でも何でもない。ただの「第三者」に過ぎないのである。『十二人の怒れる男』から学んだ教訓だよ。
心が暴走してはいないか、冷静になって自分に問い質してもらいたいと思う。
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