首切り王子と愚かな女

6/24（木）PARCO劇場へ行ってきました。



最初に、この舞台のニュースを知った時、
「おぉ〜井上君と伊藤さんとは、なんて異色な組み合わせ！」と思った。
しかもタイトルがタイトルだけに、これまた見た事ない井上君なんだろうなぁ〜と…

今回のキャストは、この方々。

井上芳雄　伊藤沙莉／高橋 努　入山法子　太田緑ロランス　石田佳央　和田琢磨
小磯聡一朗　柴田美波　林 大貴　BOW　益田恭平　吉田萌美　／若村麻由美

「開演5分前から、舞台に役者がいて準備している」と告知していたから、
それまでには座席に着いていたのですが、これまた斬新な舞台装置。
コの字を左に90度回転させて、正面が開いてる状態でぐるっと役者さんたちの楽屋。
しかも、見えるようになっているので、壁は透明のアクリル板。
みんな、思い思いに準備していたけれど、こっちも変な緊張感が漂う。

舞台中央には、木製の立方体というか、直方体がいくつも置かれていて、
それが、場面ごとに、あちこちに役者さんが動かして、
あるときは、島だったり、崖の近くだったり、宮殿の中庭みたいだったりと変わる。
変わるといっても、それは見ている私達の頭の中で変換させて見ている。

井上君が珍しく、色々なテレビ番組で、舞台の宣伝で言ってたように、ダークファンタジーでしたね。

母に愛してもらいたい王子と、母を亡くして生きる意味がなくなった女の子。
会うべくして会ったというべきか。
でも、彼らを取り巻く家族だったり、友達も、複雑に絡んでいて…

最初の方で、女王らしからぬ話し方をしたから、驚いた同時に
「この女優さんは誰だっけ？」と思ったら、若村さんだった。
どうも、井上君と伊藤さんだけが頭にインプットされていたのと、
いつもと違い、声がちょっと掠れ気味だった気がしたから…
相変わらず、綺麗だし、凛とした感じもあるし、
第二王子であるトル（井上君）への母親としての思いもあるのに、
一度捨てた事への罪悪感と共に封印して、亡き第一王子ナルだけを追い求めるのは、哀れだった。民の暴動が起きて、責任を取るべく、覚悟を決めた姿は、やはり凛々しかった。


生まれてすぐに母親に捨てられ、離島で生きてきたトルは、
呼び戻された時、さぞ嬉しかっただろうに…
しかし、魔術によって、第一王子ナルの魂を第二王子のトルに入れようとする為だと知った時、その衝撃と悲しみは、いかばかりか…また、捨てられるとは。
一体、何のために生まれて生きてきたのか、そんな現実は辛すぎる。
見ていて、本当に気の毒だった

一方、母が亡くなり、生きる意味もなくして死のうとしたのに、
結果的に助けられて、王子と一緒に城で過ごすヴァリ。
死のうとしたくらいだから、王子に対しても、怖がりもしないで、いつも正直。
真正面から向き合ってくれる事が、王子にとっては心地よかったに違いない。

久しぶりにプリンス役の井上君は、声を張ってるシーンが多く、
優しい声を出す事はあまりなかった分、歌ってる時、悲哀がより一層感じられた

ハスキーボイスの伊藤さんは、小柄だけど、見るからに元気印の女の子。
姉に対する怒りをひめつつ、我儘な王子の召使兼遊び友達のような存在だけど、
だんだんと、２人の間の関係も変わっていく。

愛を知らない王子が、人を愛し、嫉妬し、最後に愛される事を知り、変わる。
王子の想いを胸に生きていくヴァリがたくましくて、元気づけられる。
コロコロ変わる表情と、セリフの一つ一つが、どんと突き放すような勢いがあるかと思えば、寄り添う優しさも感じられて、やっぱり上手いなぁ〜と思う。

少し前に終わった「大豆田とわこと三人の元夫」のナレーションは、
やっぱり彼女ならではだと思う。

何度か舞台を拝見している高橋さんは、やっぱりどこか陰のある役で、
なおかつ、今回は決して言えない長年の友への思い。
王女と不倫してる友人は当然ながら、気づいていないから、相談する始末。
そんな最愛の友人が殺されたから、怒りと悲しみが爆発したら、
そうなるよね…という展開。救いが無さ過ぎる。

王女も全く相手にしてくれない王子への反抗と寂しさからか不倫して、
王子と仲がいいヴァリに嫉妬していて、色々意地悪するけれど、
心底嫌な奴じゃないのよね。憎みきれないキャラでした。
そのあたりを、入山さんは、うまく演じられてた気がする。

決してハッピーエンドではないけれど、ほんの少しの救いがある気がする。
大小関わらず、人生色々あるけれど、それでも前を向いて生きていけると思いたい。
そう思わせてくれるお話だと思いました。

こちらの記事に、舞台写真があるので、雰囲気がわかるかと思います。
https://natalie.mu/stage/news/432653

公式HPは、こちら
https://stage.parco.jp/program/kubikiri/