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2021年06月27日19:32

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122-2終 詩・短編を書いてみた(第1961回)

116-13-2「白の国」

その日。
ミカエルさんは帰ってこなかった。

調査に手間取っているのだろうか…。

僕は不安を感じながら眠りについた。


翌日
僕は外の騒がしさに目が覚めた。
ベッドから離れ
部屋のドアを開けて外を見る。
すると
兵士などが慌ただしく動いていた。

『何か起きたのか?』

少し警戒をしていると
リアさんが走ってきた。

『王子様!。ここに、いらっしゃって良かったです』
『ど、どうしたのですか?。そんなに慌てて…』
『実は、ミカエルさんが防衛上の観点から「今、魔王様をアビレルに向かわせている」との連絡がありまして。今、急ピッチで対応をしている所なんです』
『そ、そんな急に!?』
『はい。なので、準備をお願いします』
『わ、分かりました』

そう言うと
メイドの人が部屋に入ってきて
あれよあれよと僕は服を着替えさせられた。

服は白を基調とした装いになっていて
まるで結婚式の新郎のよう。

その後
ミカエルさんが部屋に戻ってきて
今後の段取りについて
説明をしてくれた。

これから魔王様とアビレルの女王が城内で式を行い。
その後
乗り物に乗って
街を回るという段取りになっている。
つまりは「パレード」だ。

僕達はその二人の側に立ち
状況を見守るという。

それから少し時間が経って準備が整った頃。
魔王様がアビレルにやってきた。
魔王様はアビレルの習わしに従い
白い衣装を着ている。

出迎えた女王は頭を下げ
魔王様は簡単な挨拶を口にする。
そして
城の中で式典の準備と手続きを行い
それが無事に終わると僕らは外へ出た。

予定通り
多くの市民がいる中で街を回る。
パレードはアビレル中の市民が来ていて。
魔王様を歓迎したり。
そうでない人がいたり。
様々な人がいる。

(これが歴史か…)

その時だった。

突然
魔王様達の近くにいた衛兵が苦しみだしたと思ったら
黒いマントを羽織った何者かが現れ
携えた剣を持って
魔王様達に向かって襲ってきた。

(やられる…!)

しかし
魔王様はその攻撃を怯むことなく
魔力で弾き返す。
ところが
倒れた敵は再び立ち上がり。
魔王様に敵わないと判断したのか
標的を隣にいた女王に変え
彼女に襲いかかった。

魔王様は魔力を使って
女王を守ろうとしたが間に合わず
女王は攻撃を受けてしまった。

その攻撃は
かろうじて避けることが出来た為
軽傷で済んだが。
女王の腕部分の服が大きく破けて
女王の褐色の肌が
市民に見えてしまった。

市民から驚きやどよめきの声が
伝染病のように広がる。

魔王様はすぐに
魔力で敵を弾き飛ばし
羽織っていたマントを女王へ被せて
彼女の肌を隠した。

しかし
時すでに遅し。
敵は捕らえたものの。
市民が感じた衝撃が
多くの人達に広がった後だった。

これらにより
式典のパレードは即座に中止。

女王は人目から隠すように
城内へと入っていった。

僕とミカエルさんは
魔王様が吹き飛ばした敵の所へ。

敵の状態を確認すると
ケガはあまり無いようだが
吹き飛ばされた衝撃で
気を失っているみたいだ。

ミカエルさんは慎重に敵へ近づき
顔に掛かった布を取る。
すると
その顔はのっぺらぼうの様に真っ白だった。

まるで人形のよう。

『生命を保持していないモノを操っていたというのか…』

ミカエルさんがそう呟いたように聞こえた。

その意味は分からなかったが。

(操られていたと言う事は、もしかして他にもいるのではないか?。
例えば、城内にとか…?)

僕はすぐに踵を返す。

『王子、どちらへ…!?』
『女王が危ないかもしれない!』
『…!。分かりました。私はコイツを捕まえておきますので、後をお願いします』
『分かった!』

僕はお城へ走った。

城門へ到着し
城の中へ入ろうと門へ近づく。
ところが
城門を守っていた兵士に阻止されてしまった。

僕は女王の危機を訴えた。
しかし
その兵士は全く反応がない
どうやら彼らも操られ者のようだ。

『どうにかして中へ入らないと…』

その時。
『王子!。こちらです!』と女性の声が聞こえた。
上を見ると
そこにいたのは窓から顔を出して
ロープを垂らす
女王の付き人リアさんだった。

『そんな所で何を…!?』
『いいから、これを使って登ってきてください!』

僕はそのロープを掴んだ。

『今よ!』

そのリアさん声を合図に
一気にロープが上へと引かれ
そのロープを垂らしていた部屋へと入ることが出来た。

その部屋にはリアさんの他に
多くのメイドさんがいて。
その中には
怯えているように震えている人もいた。

『一体、何が起きているのですか?』
『……兵士達の一部が反乱を起こしました…』
『反乱!?』

リアさんの話によると…。
女王らが城内へ避難して扉が閉められた瞬間
謎の魔術が作動し
魔術が使えなくなり。
そして
護衛兵が苦しみだして
女王や魔王様に襲い始めたという。

攻撃手段を封じられ
逃げることしか出来なかった魔王様や女王らは
他の人を逃がすために身代わりに。

そして
リアさんは他のメイド達と一緒に
ここへ隠れたのだとという。

『じゃあ、女王と魔王様の場所は…?』
『おそらく王室かと思います…』
『そうですか…』

(無事なのだろうか?。早く助けないと…)

僕はリアさんに『ここから動かないように』と伝え
部屋の外へ出た。

部屋の外は
操られていると思われる兵士がウロウロしており
不用意には動けない。

それでも僕は兵士達に見つからないように移動して
どうにか王室の近くまで辿り着いた。

しかし
王室の前には兵士達が多く立っており
入ることが難しい。

(何か方法は…)

その時
どこからか爆発音が聞こえてきた。
とても大きな音だったからなのか。
その音に反応した兵士達が
一斉に音の発生源へ動き出す。

少しすると
王室の前には誰もいなくなった。

何の音は分からないが。
僕はチャンスと考え
王室の扉を開いて
その中を覗く。

部屋には
捕らえられた女王と魔王様と
逃げ遅れたその他の人が
ロープに縛られて床に座らされていた。
(どうにかして助けないと…)

その瞬間
背後に人の気配が…。
振り向くと敵がいた。
僕に銃口を向けて。

『血を流したくないなら入れ』

僕はその敵の指示に従い部屋の中へ入り
そのまま魔王様らと同じように座らされた。

ミイラ取りがミイラになったような感覚に
悔しさが込み上げてくる。

僕は側にいた魔王様と女王に謝った。
魔王様は『怪我がなければそれで良い』と言って
敵に視線を向ける。

(そうだ…。今はとにかく、この状況を打開する方法を探さないと…)

その時
また何処かで爆発するような音が響いた。

王室にいる全員が動揺する。
すると
敵の一人が『落ち着け!』と声を発した。
他の敵とは違う身なり
恐らく
あれが敵のリーダーだろう。

(なら、あのリーダーを倒せば…)

僕は自分の足に力を込める。
しかし
その変化に気づいた魔王様に何故か止められた。
そして――

『頃合いか…。おい!』

魔王様が立ち上がる。

『貴様らの怨み。しっかりと感じさせてもらった。ならば――』

魔王様は敵に向かって
心臓に深く刺せそうなナイフを放り投げ
敵のリーダーの足元に落ちた。

『それは、お前の覚悟を示すナイフだ』
『何の真似だ…。魔王』
『貴様らが欲しいのは、この魔王の首だろ?。ならば、そのナイフでこの私の心臓を突き刺すがいい。それで此度の争いは終わらせようではないか』
『自ら首を差し出す、と言うのか?』
『そうだ』

敵のリーダーは戸惑う。

当然だ
自分から「殺せ」と言っているのだから。

敵は警戒しながら
そのナイフを手に取る。
そして――

『長きに渡る歴史に埋もれた我々の恨みを…。これで晴らす!』

奴は魔王様にナイフを向けて走り出し
刃先が魔王様の胸に刺した。

しかし――

『な、なんで…』
『そのナイフは、己の覚悟によって刃の固さが変える特殊な物だ。覚悟が足りなかったみたいだな』
ナイフは魔王様の身体に触れた瞬間
刃先が折れてしまっていた。

敵は呆然としながら魔王様の顔を見上げる。
すると
敵は動かなくなった。

『どうした?。貴様の憎き魔王が今、目の前にいるのだ。ほれ…』

魔王様は『刺せ』と挑発をするが
敵は全く動かない。

『ふん。この程度の覚悟で、我の命を狙おうなど笑わせる。さて――』

魔王様は女王に問う。

『反逆者は一律に処刑たが…。ここはアビレル。我々には裁く権利はない。アビレルの女王よ。この者達の処分を決めるがよい』

女王に皆の視線が注がれる。
しかし
女王は黙ってしまう。
その沈黙に魔王様が――

『女王よ。ここはアナタが治める場所だ。この先、このようなことは沢山起こるだろう。アナタはその覚悟で民を導くつもりか?』

その言葉に女王はハッとする

『――肌の色が違うから何だと言うのだ。逃げるのは簡単だ。その事から目を背ければいい。しかし、それでは何も守れぬ。アナタはアビレルの王なのだぞ!』
女王は二度呼吸をして
一度唇を絞めて僕らを見る。
そして立ち上がり
こう言った。

『捕らえてください。このアビレルの平穏を脅かす事は、この「リリア」が許しません』
『よく言った。では、この魔王直々に捕らえてやろう』

魔王様はオーラのように
自分の身体に魔力をまとわせ。
その魔力を影のように広げながら
部屋にいる敵を全て飲み込んでいく。

残されたのは
敵のリーダーだけになった。

取り込まれた人が
どうなったのかは分からない。
しかし
「魔王」という存在と力を強く認識した。

それから
魔王様の力を目の当たりにしたリーダーは戦意喪失して
敵部隊の降伏を認めた。

こうして
アビレルの戦いは終わったのだった……。


後日
争い後の処理と
魔王様から取り出した敵を捕らえる作業を終えた僕は
いつの間にか帰ってきていたミカエルさんに
何をしていたのかを聞いた。

ミカエルさんはあの後
城へと向かい
僕と同じ方法で城内へと入り。
そして
リアさんと出会って
彼女達から事情を聞いたという。

話を聞いたミカエルさんは
魔術が使えるように原因の調査と解決を提案。
その提案に賛同したリアさん達は
敵に見つからないように
皆でアビレル城を動き回り
ある部屋で不自然に設置された機械を発見。
それを原因と断定し
その機械を装置を破壊していたという。

つまり
あの爆発音はリアさん達が破壊して回っていた音だったのだ。

(そうか。だから魔王様は敵を取り込めたのか…。
状況判断が凄い。
まだまだ見習わないと…)

そう思った帰り道だった……。


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