mixiユーザー(id:4997632)

2021年07月02日14:07

116 view

原発雑考第396号の転載  核の軍事利用と民生利用  再エネ100%化の費用負担など

原発雑考第396号の転載です。

2021・ 7・5
発行 田中良明
転載自由
連絡先 豊橋市富士見台二丁目12-8 E-Mail tnk24@tees.jp



核の軍事利用と民生利用

 かつて日本では核エネルギーの軍事利用(核兵器)と民生利用(原発)を峻別して、〈核兵器NO、原発YES〉という立場を取る人が多かった。核エネルギー利用の危険性の多くは軍事利用と民生利用に共通するものであるし、この峻別を宣伝して原発推進を図った勢力の一部にとっては核武装の準備が原発推進の隠された動機であった。これらのことが示すように、この峻別は本質的にも現実的にも策略的なものにほかならなかったのである。
 人びとがその策略に乗せられた背景には、狂信的で非科学的な精神主義が支配した戦前・戦中の否定の反面として、科学は善で万能であるという科学への盲信が強かったという歴史的事情があった。しかし、1960年代半ば以降、水俣病をはじめとする公害の存在が顕在化し、科学盲信は後退していく。
 原発についても実際に稼働が始まった70年代以降には安全とはいいがたい実態が少しずつ知られるようになっていた。そこに1986年のチェルノブイリ原発事故が起きた。この事故を経験して、単純な〈原発YES〉は減り、〈安全なら原発YES〉が多数になる。しかし、この立場を取った人の圧倒的多数は、現実の原発が安全か否かを主体的に見極めようとせず、結果として〈安全なら原発YES〉を〈原発YES〉と読み替えるという原発推進派のトリックを容認してしまった。
 福島原発事故後は、〈安全なら原発YES〉の大半が当然のこととして〈原発NO〉に移行し、〈原発NO〉が持続的で明白な多数になった。しかしここでも〈原発NO〉の実現にはほとんど関心を持たないという非主体的な態度が圧倒的であり、その結果として原発推進という多面的に破滅的な政策がだらだらと継続されることになっている。
核にたいする日本社会の姿勢について、かつての〈核兵器NO、原発YES〉を批判するよりも、核エネルギー利用を自分の問題として考え、行動することが極めて弱いこと、この非主体的な姿勢こそを批判すべきだと思う。


再エネ100%化の費用負担

 2050年カーボンニュートラル(CO₂排出実質ゼロ)を日本政府も宣言したが、それを達成するには発電部門の再エネ100%化が必須である。その主な理由は以下のとおりである。
 ・発電は最大のCO₂排出部門であり、ここをCO₂排出ゼロにせずして、社会全
  体のカーボンニュートラル化は困難である。
 ・再エネ発電という優れたCO₂排出ゼロ化手段がすでに確立されている。
 ・火力発電から排出されるCO₂を回収して海底に貯留するCCSは、日本周辺で
  は貯留適地が限られていて持続性がない。つまり火力発電は少なくとも日本
  ではカーボンニュートラルに対応できない。
・海外から輸入されるクリーンな水素を使う水素発電については、この水素は
  水素を使う以外にCO₂排出ゼロ化の適当な手段方法がない部門(都市ガスや
  製鉄など)に割り当てられるべきであり、発電に使うべきでない。
 ・原発は、再エネ発電と電源としての相性が悪い上、火力発電のバックアップ
  がなければ稼働できない。したがって火力発電がカーボンニュートラルに対
応しえずに消え去れば、原発も消え去らざるをえない。
 日本を含む多くの国で再エネ発電普及のために採用されているのが、再エネ発電事業者から高値で電力を買い取る固定価格買い取り制度(FIT)である。FITが再エネ発電の普及とそれによる発電コストの低下に絶大な効果があることは、この制度を導入したすべての国で確認されている。再エネ100%化を進める過程においても、(再エネ発電のコストが低下して平均的な発電コストを下回るようになって、FITが不要になるまでは)FITが再エネ発電普及の中心的手段であり続ける。
 ところでFITでは、再エネ電力の買い取り価格と平均的な電力価格との差額は電気料金に上乗せされて、電力を消費する家庭や企業から回収される仕組みになっている。現在この上乗せ額(再エネ発電促進賦課金)は1kWhあたり3.36円であるが、それが再エネ100%化の過程で大幅に増えるのではないかという懸念が語られている。買い取り対象になる再エネ発電の量が増えるし、浮体式洋上風力発電などの当面は発電コストが高く、買い取り価格も高くなる電源が加わることになるからである。このことを理由にして再エネ100%化に反対する主張まで現れている。そこでこの問題について根本に立ち返って考えてみる。
 再エネ100%化は、CO₂排出ゼロ化のほかに以下のような便益をもたらす。
 ・発電コストが低下し、ひいては電気料金が低下する
 ・エネルギー供給の完全な持続性が担保されるようになる
 ・国家間のエネルギー資源の奪い合いがなくなる(エネルギー資源争奪は過去
  100年以上にわたって国家対立と戦争の主要な理由の1つだった)
 ・これまで国家と巨大電力会社が独占してきた電力という最重要の社会的資源
  の所有とそれへのアクセスの権利が、市民・住民にも開かれるようになる
 これらの再エネ100%化の便益はすべて半永久的に持続するものである。
 他方で再エネ100%化には、FITによる再エネ電力の高値買い取りの費用のほかにも、再エネ発電100%化に対応するための送電施設の整備の費用や、再エネ発電の多くは出力が変動するので、それに対応するための蓄電施設の整備の費用などが発生する。ただしこれらの費用のほとんどは再エネ100%というシステムの構築のために発生する費用(初期費用)であり、継続的に発生するものではない。
 一般的にいって、費用が継続的に発生するか、得られる便益が一時的あるいは不確かである場合には、発生と同時に費用を回収するのが自然である。しかし費用の発生が一時的であり、便益は多大でかつ長期に及ぶことが確実な場合には、その便益を享受することになる人びとが広く費用を負担することにしても問題はない。
 再エネ100%化はこういう種類の事業であり、その費用はこの事業を必要とするに至った経緯(つまり地球温暖化)にたいして責任のある現在世代が負担するのは当然であるが、それに加えてこの事業によって生じる便益を享受することになる将来世代にも負担させてよい。将来世代が享受できる便益の多大さを考えれば、積極的にそうすべきだとさえいえよう。
 日本の現在の仕組みでは、毎年発生する費用はその年に電気料金に上乗せされて回収されている。これまでは再エネ発電の普及目標が大きくなかったので、買い取り費用はさほど膨らまず、そのことで得られる便益も限定的だと考えられたので、発生時回収にしても問題はないと判断していたのだろう。しかし事情は変わった。カーボンニュートラル達成のために再エネ100%化をめざすのであれば、その費用は将来世代も負担する仕組みにすべきである。
 その際にどの世代においても低所得層の負担軽減を計るのは当然であり、低所得層向けの電気料金割引や、省エネ機器の購入や断熱性能向上のための住宅改修への補助金給付などの政策が実施されなければならない。
 再エネ100%化の費用負担の問題は、複数世代に負担を分散させる仕組みを導入することで容易かつ合理的に解決することができるのである。


雑 記 帳

 6月上旬に豊橋市からコロナワクチン接種の書類が送られてきた。そこでは、私が接種を受けることにしていた近所の医院はネットでも予約できることになっていたが、これは間違いで、実際には窓口予約だけだった。その予約の受け付け方も、接種の日と時間を一方的に指定されるという乱暴なものだった。こういう次第であまりいい気分ではなかったが、6月17日に1回目の接種を受けた。副反応は接種箇所の痛み以外はほとんどなかった。
 庭の西側にあるアマナツの木にアシナガバチが巣を作った。昨年はマンサクの木に作られたが、メスバチが盛夏になる前に死んでしまい、子孫を残すことができなかった。最近は住宅街ではそういう運命になるケースが多いようだ。今年はどうなるのだろう。
 先号でトンボが玄関のたたきに落ちていたことを書いたが、6月末の早朝、連れ合いが玄関脇にトンボがいたので周辺を探したら、水がめの近くの粗いコンクリートの建屋基礎にヤゴの抜け殻がついているのを見つけた。これで分かったが、先号のトンボは登れる所がなくてたたきで脱皮したのだ。

万場緑地のネコ 第21話  6月初めに歩行異常、嗜眠、噛みつき癖のある若いオスネコを保護した。動物病院の血液検査でCPKという項目の値が異常に高かったこともあり、脳神経系の異常の可能性が高いことが分かった。成長するにつれこういう障害が明確になり、捨てられたのだろうか。野外での生活は無理なので、室内飼いできるところにいったん預かってもらって、障害があることを承知で飼ってくれる人を探すことになった。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年07月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031