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2021年05月01日02:02

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シティポップはオールディーズ (#465)

side A
1. Witch's Spell / AC/DC
2. FoolFor 日記 / 中村佳穂
3. Polly / Moses Sumney
4. I Was Not Born / Fontains D.C.
5. Conveyor / Moses Sumney

side B
1. 成功と挫折 / 岡村靖幸
2. Love Is the Main Thing / Fontains D.C.
3. アイアム主人公 / 中村佳穂
4. Cut Me / Moses Sumney
5. Is It True / Tame Impara

bonus
1. サマーブリーズ'86 / 一十三十一
2. A Hero's Death / Fontains D.C.
3. ハーバーライト / 一十三十一
4. きっとね! / 中村佳穂
5. Money Is the One True God / Blake Mills

岡村ちゃん新作1曲めの「成功と挫折」。ハードエッジな重いビートがかっこいいナンバーですが、わたしの選曲としては「4番目にすべり込む」形になったのではあるんですが、
よく聴くと、この曲の間奏およびアウトロに入っているギターソロ、メチャクチャ格好いいじゃないの!と思ってクレジットを見ると、
なんと! 小山田圭吾さんが弾いていたんですねえ。

滅茶苦茶上手いギタリストが山ほどいるこの国であえて彼を起用したのはおそらく、
「成功と挫折」というテーマにそれなりに相応しいポジションのミュージシャンとなると、やはり彼くらいの人をということだったのではないでしょうか。
そんな彼を呼んで、どんなヴァーチュオーゾをも凌駕するソロを弾かせてしまう。50代の岡村ちゃん、冴えにサエてるなあ。

――というわけで、予告どおり642枚めをシャッフル再生です。
フォンテンズDC、これがまたカッコいい! MMでは英豪ロックの3位、ROでも10位にランクされたアイルランド出身若手バンドの2ndですが、RO同特集の座談会で「無駄をそぎ落とした彫刻のようなアンサンブル」と評されていたのが実に言い得て妙。なんとなくクラッシュを思わせるものがある、と書いてはたぶん誤解を招く気がするのですが、クラッシュというバンドは当時のパンク・ムーブメントのアイコンとしての立場を引き受けつつも、その音楽の内実はパンク云々を超越してきわめて芸術的な孤高の存在だったように思われるのです。ちと紋切り型過多な言い回しになってしまいましたが、フォンテンズもそれに似た佇まいを感じさせる。
これがあるから洋楽ファンは辞められない! のではありますが…、

MM英豪1位にしてRO2位というテーム・インパラ。両誌の評価が一致することってなかなか少ないですから、これはさすがに間違いなかろうと思って注文したわけなんですが…、
うーん、こりゃいかん。いわゆるコールドプレイ病。アウルシティに比べればちょっとはマシかも知れませんが…とにかく両誌の評者が筆を揃えて「グルーヴ」という言葉を使っていることに「はぁ?」であります。
少なくとも、フォンテンズDCが好きな人がこれも好きということはちょっと考えられないな、と思い評者ごとの選盤リストを見ると…なんと、MMとRO両誌を股にかける数少ないライターであり私は少なからず尊敬もしている大鷹俊一さんのトップ10の1、2に挙げられていたのがこの2枚。マジすかセンパイ!?
――というか大鷹さん、非常に幅広いジャンルをカバーしておられるのは良いのですが、ひょっとしてある程度クォリティの高いものなら「何でも良し」ということなのかなあ…などと不遜にも思ってしまったりして。

目目目目目目目目目目

さてさて、今度は前ログに続いて10年代邦楽のほうです。
堂々のトップ10入り、9位にランクされていたのが中村佳穂さんのデビュー作「AINOU」。レーベル名そのままのタイトルともども、わりと大人し目のパッケージとは裏腹に、表現者としてのぶっ飛びぶりの数々が伝えられる中はじめて針を落とした(←これの代わりになる修辞って、無いもんですよねえ…)印象は…
唱法と才気の走りぐあいが、どちらも世武裕子さんを思わせるものがあるなあ。でもあそこまでぶっ飛んでるかな…?
と思ったのですが、2人には大きな違いが。世武さんはほぼ一人で作っている(もちろん共に演奏する人はいますがあくまでサポート。すべて自身でコントロールしてると思われます)のに対し、中村さんは荒木正比呂さんをはじめとしたとても頼りになりそうなコラボレイターの人々と「バンドを組む」形で音楽を作っているのです。
ただ、気になったのは…
そのバンド、ベーシストがいないんですわ。

前ログの森は生きているの場合はギタリストがベースも弾くという形で、曲によってはベースの存在感も十分感じられましたが、
中村佳穂bandの場合はシンセや打ち込みで低音が入ってる場合ももちろんあるものの、ベース音としての低音が全く入っていない曲のほうが、むしろ多いんですね。
これはひょっとして…彼女の書く詩の世界がむしろ「ベースレスを要求している」ということなのではないでしょうか。

かなり強烈で独特な詩ですよね。正直、共感できるかと言ったらなかなか難しそうなことも歌っているようですし、これがテキストとかツイートのような形で世に出たとしても「…」ということになるケースが多いかも知れない。
彼女の音楽は、そんなフラジャイルなメッセージに翼を与えるために機能しているものなのではないだろうかと。耳について離れない音楽を伴うことで、それは呪文となるのです。キケンなことだけどね。
――そう、だからベース音が入ることで「安心できる」エリアに入ったら表現としての力が弱くなってしまう、そういうものなのかも知れません。

個人的にはベースレス音楽は好きなんですけどね。「いらない」と言われるとやはりサビシいもんではあります。

耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳耳

その「10年代」企画が表紙を飾ったMMの今年3月号。折坂くん、小山田君とともにカバーイラストが描かれている、やけにイイ女のこの人は誰だ?
彼女が、同企画16位、以前から同誌上などでよく目にすることはあった「一十三十一」さんだったのです。なおローマ字表記ではHitomitoiとのこと。
一十三さんというのは本名(下の)のようですが、こういう記号的でキッチュなステージネームを名乗るというのは、ちょっとニューウェーヴ的なマインドもお持ちなのかな、そうだと良いんだけどなあと思って注文したわけですが…どうも全然そういうことではなかったみたいで。

2012年発売のCITY DIVE。その後のシティポップブームの流れをつくったというのが評価のポイントとなっているようですが、最近シティポップが流行っていると言われても「はぁ?」というものではありますが…。
しかしまあ、「ハーバーライト」に「サマーブリーズ'86」ですから。もうどベタヨットスクールとでも申しましょうか、あの頃だったらオレは絶対に聴かないと確信できる1枚。もう、こういうのを聴いてるバブル女子たちはオレとかには全く興味がないのであります(笑)。
でも時は流れ、そういった記号的ニュアンスなど何の効力もない地平に立って改めて聴いてみますと、これはこれで「一周回ってイイ」のですよ。
それにしても、声質からしてあの頃の尾崎亜美さんとか杏里さんとか、ちょっと時代が下ってかの香織さんとか古内東子さんとかにそっくり。もちろん唱法も。これは彼女の声質がシティポップのスタイルを要求したということなのでは?――まあ、それ以上に世界観(というか価値観)が合っていたということらしいですが。

ただ、あの頃(80年代)のいわゆるシティポップって、ここまで典型的な「どこを切っても金太郎飴的な」ものって、案外無かったんじゃないか?という気もするんですね。まだあの頃は「ニューミュージック」という呼称、アイデンティフィケーションが一般的で、歌謡曲的な湿り気たっぷりのバラード曲がけっこうな割合を占めていたような気がするのです。それがまたマーケットのニーズでもあった(だから私は全然聴く気がしなかった)。
渋谷系のフィルターを通った古内さんの頃になるとそういう感じはほぼ払拭された様な気がするんですが、同時に制作側もリスナーもマインドがバブリーじゃなくなっているんですね。だから本当のシティポップムーブメントが起こったのは2010年代がはじめてのことなのかも知れない(えっ?)。
金太郎飴と言えば、このCITY DIVEはどうも「A面3曲めに置きたい曲」が大半を占めてるような印象がありますね。オープニングのDiveからしてそうだし。――もっともこれは、それこそ80年代までの主流「LPレコード」としての聴き方がそういうことを意識させるのであって、曲順とか流れとかをあまり意識しないのが現代流なのであれば、まさにそういった現代の作品ではあるということです。でも、曲数やトータルサイズから言ってあの頃の定番「AB面各5曲」を意識してるように見えるんですが…。

このCDにはライナーノーツが付いておりまして、それも本人は不在、共同制作者のクニモンド瀧口さんと江口寿史さんの対談という形で、80年代の生き証人としての江口氏が「(シティポップは)0点の音楽。歌詞なんて誰も聴いちゃないし。そこがいい」みたいなことを言ってて、そんなこと言わなきゃいいのに…と思うのですが、
彼女は要するに、オールディーズシンガーだと考えればいいんじゃないかと思うんですよ。ちょうどあの頃、ブライアン・セッツァーが50年代にこだわってめちゃヒップだったみたいに。

今日は80.6kgに下げてひと息。なんとかサブ80をキープしたいところです。
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