車いすとゾンビとセーラー服

　昨年は映画を観た本数こそ多いが、レビューをサボり気味だった事もあるので、今年はもうちょい更新頻度を上げようと思った次第。てなわけで最近観た映画の感想をば。


●ジョゼと虎と魚たち

　小説原作。２００３年には実写映画化もした恋愛映画。大学生・恒夫が車椅子の少女・自称「ジョゼ」を助けた事で知り合い、彼女の世話をするバイトを請け負う事で始まる、健常者と障がい者の恋愛を描くドラマだ。

　内容は基本あまあま。今日日珍しいこれでもかってぐらいうぶなイチャイチャを見せられ、終盤物凄い勢いで落とされて持ち上げるというもの。恋愛そのものは甘く楽しいものだが、それに現実とどう向き合わせていくかというテーマが重くのしかかる。

　見た目以上に幼く見えるジョゼがその実は２４歳の成人女性で（だから声の違和感も受け入れられる）唯一の肉親である祖母から過保護に育てられた（祖母も悪気があったわけじゃない）という背景がじわじわと響いてくる。障がい者は同情すべき立場ではあるがその分わがままでもある、というのはよく聞く話でもある。

　とはいえ最後はハッピーエンドだし（ラストはちょっと中だるみを感じたが）所謂「美男美女だからこそ」というストーリーも割り切って楽しめるものなので、単純に見た目でピンときた方は見てOK。こってこてのデートムービーもたまには悪くないが、男友達とワイワイ観に行くにはちょっと気まずいかもね。


●新感染半島　ファイナルステージ

　２０１７年にヒットした韓国ゾンビ映画「新感染ファイナルエクスプレス」の続編。前作のパンデミックでゾンビまみれとなった韓国の４年後を描いたサバイバルアクションホラーである。設定こそ引き継いでいるが登場人物は一新、あくまでテーマだけ引き継いだ別物の作品と言っていいだろう。

　パンデミック発生当時、家族をゾンビから守れなかった元軍人・ジョンソクが、逃げ延びた香港で犯罪組織に声をかけられる。今や崩壊した韓国には大金を残したトラックが眠っている。それをぜひ取りに行ってほしい…と。同じく韓国から生き延びた同士とともに、再びゾンビはびこる母国へと足を踏み入れる…悲劇の物語は絶望のその先を描く。

　愛する家族を守るべく全力疾走した前作と違い、今回は守るべきものもない。ただ失った者達が生にしがみつくようにもがくのが本作のテーマだ。韓国から脱出できても周囲には「感染者ではないか」と差別の目で見られ、のし上がる為に身の危険を覚悟でゾンビの世界に舞い戻る。パンデミックの渦中でまだ人の姿や都市の機能が生きていた前作と、薄汚れた廃墟でゾンビしかいない本作の対比もまた絶望に拍車をかけている。

　また今回は「バイオハザード」よろしく、アクション重視というか人間側に重火器を与えられたことと、廃棄都市あるあるの「乗り捨てられた車がそこら中にある」という環境から、みっちみちのガン＆カーアクションがてんこ盛り。死の都市と化した韓国にも生き残りがいて、ある者は必死に生き延び、ある者は暴走し人間狩りに繰り出す…というのもベタだが良かった。

　とはいえ、全編ドラマチックで感動作と名高い前作とは、テイストこそ引き継いでいても路線が違うので、そういったものを期待するとやや肩透かしを受けるものの、シリーズ作を追ってる人間であれば、その歴史背景や韓国の鬱憤とした社会情勢を垣間見えて楽しめると思う。

【参考までのシリーズ一覧】
「ソウル・パンデミックステーション（アニメ）」ゾンビ発生直後の都市のパニックを描く。
「新感染ファイナルエクスプレス」ゾンビから逃れるべく新幹線での脱出を描く。
「新感染ファイナルステージ」ゾンビで崩壊後の韓国を描く。


●美少女戦士セーラームーンeternal　前編

　仕事で観たシリーズ。世代だがマンガもアニメも一切見てなくて、ただ一部主題歌が好きだからカラオケの持ち歌にしているという初見組である。話は明らかに後日談で、中学生だと思ってたうさぎが高校生になってるわ、一部メンバーが離脱済みだわともう大変。

　見た目こそ令和にアップデートされているが話のノリはコテコテ。セーラー戦士たちのキャピキャピ（死語）したやり取りに、一人だけ声優継続になったが声が全く変わらない三石琴乃のキンキン声（本当すげえよ）に、バトルシーンは小技なしの必殺技（エフェクトとポーズで実態がよく分からないやつ）で一閃！　令和よ、これが平成初期のノリだ！

　とはいえ、話そのものは割とシンプルで追いやすく（人の夢を付け込んでどうこう）前編ではうさぎ以外の４人の掘り下げもやっており、最後の「後編へ！」という時には割とハマりつつある自分がいた。旧作ファンにはTVリメイクのクリスタルからどうも批判されているらしいが、自分みたいな新参者にはなんだかんだで見るきっかけには丁度いいのではないだろうか。