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2020年12月27日16:38

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100 詩・短編を書いてみた(第1934回)

短編・詩を書いてみました(^_^)
素人が書いたので
気に入っていただけるか分かりませんが
一生懸命に書いてみました
暇なときにでも読んで
楽しんで頂けると幸いです(^_^)b


100「ダムの底ダンジョン」
〓〓〓〓〓〓〓〓〓
【あらすじ】
ダムには人の想い出を閉じ込める力があると思う。
だって
それが完成すると
そこに住んでいた人は移転を余儀なくされて
その人達の想い出の街は沈んでしまうからだ。

ただ時々
雨が降らない日が続き
ダムの水が干上がっていくと
その沈んだ町が見えてきて
かつて住んでいた人の面影が
見えてくるもの
私は今日もその面影を
フィルムに納めに行こうと思う………。

――――――――

とある日。
私は訪れた役所で
ある町村のパンフレットを見つけた。
そのパンフレットのタイトルは「ダムを見学しませんか?」。
その中身を簡単に言うと。
町村に作られたダムの内外部を見学し
タイミングが良ければ
その沈んだ村を巡りましょう
というもの。

面白そうだなぁ…。

写真を撮るのが好きだった私は
ただの興味本位で参加してみる事にした。
後日。
ツアーの案内が届いた。
町村らしい質素なデザインに少し苦笑したが
楽しみにその日を待った…。

当日。
私は電車を乗り継ぎ
都会の景色から田舎の景色へと変わっていく
時間の経過を感じながら目的地へ…。

数時間後
私はそのダムがある町村の最寄り駅に到着した。

しかし…

『あれ、駅の前で待ち合わせなのだけど…』

ここには案内人がいるはずなのだが
周辺を見渡しても誰もいない。

もしかして、場所を間違った…!?

案内の地図を確認したが
どう見てもここだ。

あれ…?

不安に駈られていると
一台の軽自動車が駅にやって来た
車の中から女性が出てきて
その女性は私に話しかけきた。

『今回のダムの見学ツアーに参加される方ですか?』
『あ、はい…』

そう言うと
女性は胸を撫で下ろし大きく安堵する。

『良かったぁ〜。実は私、間違えて隣の駅に行っちゃって。また怒られる所でした』

また…?

『ささ。目的地へ向かいますので車にお乗りください』
『あ、ありがとうございます…』

私は彼女の車に乗り
一抹の不安を残したまま動き出す。
意外と運転は丁寧なようだ。

少し走行した所で彼女は今回のツアーについて説明を始めた。

『この度は、ツアーに参加して頂き、ありがとうございます。私、今回、ツアーの案内をさせて頂きます「ミツキ」と言います。普段は役所で働いていまして―――』

まさに怒濤のような言葉の羅列。
全く私に話のバトンを渡すことなく
ミツキさんは町の紹介をしながら
運転をしている。

私はたまらず…

『―――が町の名産でございまして…』
『あ、あの…』
『はい。いかがなさいました?』
『さっきから気になってはいたのですが…。参加者って私だけなんですか?』
『はい。そうですよ。いやぁ〜、助かりましたよ。貴方が参加して頂けなければ、私、大好きな観光課から異動される所だったんですよ!』
『そ、そうですか…。ちなみにどうして異動という話に?』
『恥ずかしい話なんですが。私、観光課で企画を考えているんですけど。どのツアーにも人が集まらなかったかららしくて――』

明るく話すミツキさんに
私は心配が増していく。

この人に任せたらダメなんじゃないか…?と。

そんな不安をよそに
ミツキさんは話を続ける…。

私はもう1つ気になっていたことを聞いた。

『今回のツアーは、ダムの底といいますか…。水を貯めていた場所には入れますか?』
『そうですね…。最近、雨が降っていないので、ダムの水位は下がっているみたいですが…。到着したら、確認してみますね』
『ありがとうございます!』

私はミツキさんに感謝を伝え
そんなこんなで私達は目的地へ到着し
私は車から降りたのだが…。

疲れた……。

『あはは…。すみません。道に迷っちゃって…』

実は私の不安が当たり
ミツキさんが道に迷ってしまったのだ。
馴れ親しんだ言っていた道を…。

ミツキさんに言いたいかとはあるが。
まぁ、とにかく
これでダムを見学出来るんだから良いとしよう。

私はそう思って
諸々を腹の中に押し込み
ミツキさんに案内されて
ダムの事務所へ入った。
その後
ダムの中へ入る手続きをして
ダムの資料館を写真に収め
少し学者のような気分に浸り
そして
ついに目的の時間がやってきた。
緊張しながら
ミツキさんにあの事について
確認してもらったところ…。
なんと
奇跡的にダムの底に降りられる許可がおりた。

正直
私は半ば諦めていた。
ミツキさんは少し不安だし
道に迷うし
今日はツイてない日だと思っていたから…。
でも
ダムの底を歩けるのであれば
こんなに嬉しいことはない。
私は今ならお気に入りの洋服を汚されても
きっと許してしまうだろう。


私達は旧市道路を使い
ダムの底へ降りていく。
下層に降りて行くにつれ
その上からでは見辛かった
かつて町並みが見えてきた。

不思議な事に
ダムに沈んでいた町は古い建物が多かったが
空気に触れず
水の中にいた為なのか
その形をほぼ残している。

凄い…。

地面に水が溜まりがあって歩きづらいが
ノスタルジックな光景に
心を奪われてしまう。

私は夢中でシャッターを切った。

あれもいい。
これもいい。

様々な感情を揺さぶられながら…。

一通りの撮り終えた私は「行ってはいけない」と思いながらも
誰もいない民家に立ち入った。

民家の中は泥で汚れていて
水で床がグジュグジュになっていた。

私は気を付けながら廊下を少しずつ進む。

すると
部屋を見つけた。
中を覗くと
泥が付着している畳の床と
その部屋の真ん中に木製の丸テーブルが置かれていて
それ以外も湿り気のある洋服タンスや
小さなテレビラックなどがあり
ほんの僅な生活感を感じる。

多分
ここは家族が集まって食事をするであろう部屋なのだろう。
私は一枚シャッターを切った。

良い写真が撮れた。
そう思って一眼レフカメラから顔を離すと

見える全てが淡い色に代わり
そこにお父さんがあぐらをかいて座り
お母さんが料理を運び
その匂いに気づいた子供達が食卓を囲む
まるで夢の中にいると思うかのような光景が
目の前にあった。

一体何が起きているの…?

私は混乱してしまう。

でも同時に
その暖かな食卓と家族団らんを見て
どこか心が温かくもなった。

気がつくと
私はシャッターを押していた。

その時…。

『どこにいるんですか…!?』

ミツキさんの私を探す声が聞こえた。
私はその声に引き戻されるように目を開けた。

そこは誰もいないダムの底の民家で
空はオレンジ色に変わっていた。

一体、どうしていたのだろう…。

民家を出ると
ミツキさんがこの民家の近くで立っていた。

『ミツキさん!』

私が呼ぶと
それに気づいたミツキさんが駆け寄ってきた。

『どちらにいらしたんですか?。探しましたよ』

ミツキさんは息が上がっている。
相当私を探してくれたのだろう。

私は事情を話した。

『すみません…。気がついたらここにいて…』
『気がついたら…?。まぁ、とにかく、ここから早く出ましょう。事務所の人が言うには、日が暮れると危険らしいので』
『わ、分かりました…!』

私達は急いで
通ってきた道を上りダムの上部へ戻った 。
その後
少し事務所の人に
ギリギリまでダムの底に留まっていたことを注意されてしまった。

当然だろう。
危なかったのだから…。

日が沈み
私はミツキさんの車に乗った。
出会った駅まで送ってくれるという。

その道中
ミツキさんに『どうして民家にいたのですか?』と聞かれたので
自分の身に起きていた光景を話した。

すると
ミツキさんはこんな話をしてくれた。

『あの町には、ある神様が奉られているお寺があるんですよ。』
『神様?』
『はい。どんな神様かというと、「その人に関わる過去を見せて、道を切り開くヒントを与えてくれる」という神様らしいんですよ。まぁ、言い伝えですけどね』

過去…。
その言い伝えが本当なら…。
あれは私の…?

そんな事を考えていると
車はゆっくりと駅前に停車した。

『今日はツアー参加して頂きありがとうございました』

ミツキさんの言葉に
私も『こちらこそ』とお礼を言って
この町を後にした……。

後日。
私は現像した写真をリビングのテーブルに広げた。

どれも綺麗に撮れているようで
思わず『我ながら素晴らしい』と思う。
そう思った時
リビングにお母さんがやってきた。

『ちょっと。そんな風に広げないでよ。片付けるの大変じゃない』
『いいじゃん。写真を見ているんだから』
『写真?』

お母さんは
私の広げた写真か気になったのかテーブルに近づき
それらを眺め
ある写真を手に取った。

『あれ、この写真…。私が子供の頃に住んでいた家じゃない…。どうしたの?』
私はその写真を見る。
その写真は
あの不思議な世界に入った時に
シャッターを押した昔の家の外観の写真だった。

私はダムの底へ行ったことを伝えた。
すると
母は懐かしむように
ある話をしてくれた…。

母が子供の頃
あのダムの底に沈んだ集落に住んでいた。
当時の集落にはそれなりの人がいて
お祭りの時期には
沢山の声が響いていたほどで
この賑わいがこの集落の誇りだった。

しかし
ダム建設の話が出てきてから集落は変わった。
集落は
行政と戦う者と
土地買収の話に乗る者に分かれ
長い話し合いの末に
次第に町は分断していき
その結果
集落はダムの底へ沈むことになったという。

昔話を話し終えて母が溜め息を吐く。

『―――ということがあったの。あの頃は大変だったんだから』
『そんなことがあったんだね…。そういえば、その時のお父さんの写真とかあるの?。私、見た事なくて。』
『写真ね…。お父さんは写真が大嫌いだったから、家族写真なんてほとんど残ってないの』
『えっ、そうなの!?』
『そうよ。残っているのはフォーマルに撮るような写真数枚だから…。あれ?』

母は一枚の写真を手にとる
それは不思議な世界に入った時に撮影した
家族団らんの写真。
それを見て
私はあの時の出来事の記憶を母に伝えた。
すると
母は『そう…』と言って
何とも言えぬ優しい表情を写真に向ける。

『こんな写真が見れるなんて思わなかったもの…』

母は感慨深く
そう呟き写真を眺めていた
あの懐かしい日を思い出すように…。


私が体験した不思議な時間。
最初はあれが
どのような意味なのか分からなかったけど。
お母さんの普段とは違う優しそうな表情を見ていると
何となく
その理由が分かった気がする。

お祖父ちゃんありがとうね………。



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