お盆も二日目を迎えましたね。行楽のシーズンとはいえ、コロナの影響でどこへも出かけることができず、体温をも超える勢いの気温におびやかされ、逆に、ちょっとの外出も遠慮したいと、用のない限り家にこもっているという方も、多いのではないでしょうか？
私も昨日は、庭の植木鉢に水をやったり、近所のスーパーに買い物にいく以外は、家に引きこもっておりました。テレビを見るともなくつけていたのですが、お盆という時節柄、番組も、善光寺からの中継などお盆特集が多く、各地のお盆の習慣を紹介したりして、なかなか興味深い内容が多かったです。
お盆といえば、その土地、その家によって様々な習慣がありますが、私の住む信州では
「天ぷらを食べる」という習慣があります。同時に「四つ足（牛や豚など、四つ足の動物）を食べないという習慣もありますので、天ぷらの種類は「掻き揚げ」「ピーマン」「エビ」「みょうが」など、野菜中心のメニューです。中には「まんじゅう」の天ぷらという、変わったものもあります。さすがに、まんじゅうの天ぷらは長野県でも、お盆にしか現れないメニューです。
また、「お盆の煮物」という物もあり、普段の煮物との違いは、千切りにしたコンブがたくさん入っていることで、私はこれが大変好物で、お盆の楽しみの一つになっています。
なぜ、お盆に天ぷらなのか？なぜ、コンブの入った煮物なのか？もしそう聞かれれば、「昔からそうだった」としか言いようがないでありましょう（笑）。なぜ、まんじゅうを天ぷらにするのか、ということも、いろいろな言い伝えはありますが、結局、昔からそうだったと言うしかないのでしょうね。
全国を見ても様々な習慣があり、ソーメンを「のれん」のようにたくさんつるして、それを組みひものように編み上げ、仏壇の前につるすところ。お客様に、カルピスと果物でもてなす地域、ひと昔前までは、カルピスといえば、お中元の時期の特別な頂きものとして貴重な品だったからかもしれませんね。
インドで発祥した仏教も、チベットを経て、中国を経て、日本に至り、広まっていくたびに、その地域の習慣と融合し、その国独自の文化を育んできたのでしょう。
ちなみに、この時期になるとスーパーなどで必ず売っている、「盆菓子」というものがありますね。砂糖を水あめなどで固めた「らくがん」で、ハスや季節の花々など、様々な物をかたどった、お供えのお菓子のことです。これは、地域の風習にかかわらず、全国で仏壇に供えられる食品でありましょう。
お盆に「食べ物」を供えるという習慣は、やはり、前回書かせていただいた「お盆の起源」
に関係します。
地獄に落ちてしまった母親を助けるため、7月15日に90日間の雨季修行を終えて帰ってくる僧侶たちをもてなすように、釈迦に指示された目連（もくれん）が、たくさんのごちそうを僧たちにふるまったことに由来しています。
その食べ物が今の日本では「らくがん」になっている理由はよくはわかりませんが、おそらく昔は砂糖などの甘いものは高級品であったということがあるかもしれません。
盆菓子の中でもハスの花の形をしたものは、「ハス菓子」といって、お供えの中心になるものです。ハスは極楽浄土の象徴であり、お釈迦さま自身を表しているとも伝えられています。事実、釈迦はハスの花を愛し、よくハスの池を散策していたようですね。
私も、昔からハスの花が好きで、学生のころはよく、上野公園の不忍池（しのばずのいけ）のハスの群生を、よく見にいったものでした。長いときはベンチに座って、二時間も三時間も眺めていたこともあります。ハスの花を愛した釈迦はい、ったい、この花に何を見たのでありましょうか・・・
人々よ 見よ
この美しいハスの花を
私は このハスの花を愛した
その理由が あなた方にはわかるであろうか
ハスの花が
どのような場所に咲くか
あなた方は知っているであろうか
ハスの咲く池は
悪臭ただよう泥沼であり
誰もが目をそむけたくなるほど
よごれに満ちた池である。
ハスは
そのような池に好んで根を張り
その花を咲かせる
その美しさは
とうてい この世の物とは思われない
人々よ
あなた方が住む世界も
この池のようなものかもしれぬ。
けがれた世界であり
汚辱（おじょく）に満ちた世の中かもしれぬ
しかし
私はあなた方に言う
たとえ、この世が
いかに 穢（けが）れていたとしても
いかに 悪臭（あくしゅう）ただよう世界だったとしても
そのようなものに
あなた方は 負けてはならない
腐臭（ふしゅう）ただよう
穢れた池に
天上界の花を咲かせるハスのように
あなた方も
この穢れた世の中において
大輪の花を咲かせよ
それが、私の願いである
確かに、世の中全体が病んでいるからと言って、自分まで病まなくてはならないという理由はどこにもない。汚れきった池の中で、大輪の天国の花を咲かせるハスのように。
心が病んでいない生き方とは、このような生き方であると示すことこそ釈迦が私たちに期待した生き方でありましょう。
お盆という一習慣の中に、どれだけの叡智（えいち）が込められていることか。驚くばかりですね。
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