18950501 NO3796 日清講和条約後の残留清兵の状況、及び北方韓官の反日的態度についての報告
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駐韓日本公使館記録 8巻 一. 諸方往 (13) [日清講和条約後の残留清兵の状況、及び北方韓官の反日的態度についての報告]
文書題目 (13) [日清講和条約後の残留清兵の状況、及び北方韓官の反日的態度についての報告]
文書番号
発信日 明治二十八年五月一日 ( 1895年 05月 01日 )
発信者 中川祐順
受信者 楠�鹵羣�
(13) [日清講和条約後の残留清兵の状況、及び北方韓官の反日的態度についての報告]
拝啓 御安全を賀し奉ります。さて、先月二十九日の電報の趣旨を承り、私が先月二十四日及び二十五日の両日、部下百名を咸鏡道北青（プクチョン）へ向け示威行軍として出発させたのは私の意見を大総督府に稟申し許可を受けていたことであるにもかかわらず、その二十六日午後十時三十分、大本営の命令でこの行軍隊は速やかに当元山（ウオンサン）に帰着させよ、との電報を受け取り、直ちに伝令を急行させ定平（チョンピョン ＊咸鏡南道南部、日本海岸）でその命令を伝えたと伝令は帰着して復命した。この行軍隊は本日帰着する予定である。
この命令の要旨は私には分からないが、推察すると、この時期においてはひょっとすると衝突等の恐れがあるからであろうと推測した。私としてもこれらを深く思慮しないわけではなかったので、今や休戦せよとの命令に対し、向こう側（＊清兵）がもし不法の処置に出たとしても我々は順序を踏んでいなければ軽率は処置に出ることを許さないとの命令を与えて出発させていたので、今や北青（プクチョン）の西北では彼らが白中、ほしいままに軍を為して横行し、あるいは会寧（フェニョン 회령 ＊咸鏡北道東北端）付近に天幕を張って野営し、甲山（カプサン ＊北朝鮮、両江道甲山郡にある邑。鴨緑江左岸の恵山の南）の至る所でその兵を見ることになる、と偵察者が報告していたにも拘わらず、今回の示威行軍を中止させざるを得なくなったのはまことに残念なことであった。
先月（＊四月）領事館・高雄書記生が公務を帯びて咸鏡道吉州（キルジュ ＊摩天嶺山脈の東）へ向けて出発した。永興（ヨンフン ＊現在の金野郡。咸鏡南道の南部に位置する郡。 かつての永興郡。元山の北北東）に着き府使に面談を申し入れたが府使は病と称して謝絶したので立ち去ろうとした時に引き留めてくれ面談を遂げることとなった。府使・李南珪（イナムギュ）は高雄書記生に対して実に無礼な言語と行為とで面会しただけでなく、また井上公使を誹謗し、さらに朝鮮政府の顧問である我が国の人物を口汚くののしり、高尾書記生か公務上質問することでさえろくろく答えようとしないので不快なまま別れて去った、と言う。
またその十七日、我が歩兵曹長・今井武六に兵三名を付して平安道江界府（カンゲ・フ ＊慈江道・江界市）に出没していた支那兵のために斥候を命じ、永興府（ヨンフン・フ ＊「1895年 - 咸興府永興郡となる（二十三府制）。1896年 - 咸鏡南道永興郡となる。」。現在は金野、元山のすぐ北）に向けて出発させ、この地の府使に面会したところ、高雄書記生に対するように甚だしい無礼の言を吐いたので、曹長もまた対応のしようがなかった、と報告している。今回引戻した行軍隊はまだ帰着していないので、永興の模様は確かには聞いていないが伝令が帰ってきて報ずるには前方隊が永興に到着したときは糧食の購求を依頼したのだが、ここの府使はこれに応じなかったので、引率の少尉はその冷淡を責めたところ漸くこの事を承諾した、と。
またその翌日は、後方隊が来るのを面倒だと思ってか、あるいは恐れてかは知らないが咸興（ハムフン ＊現・金野の北）を指して出発し、後方隊が永興に舍営したときは実に糧食等の欠乏で困難を極めた、と言っていた。これに反し、定平の府使は我が隊を全力で優待してくれた、と言っていた。高雄書記生の言にも「この府使は咸鏡道府使中の開化党であり、私に対して甚だ深切且つ敬礼を尽していた」と言っている。
高雄書記生は定平の府使から「前途支那兵が出没している」と聞いており、そこで前進は覚束ないので今回の旅行は思い止まることにしたのだが、「とにかく咸興までは進んでみよう」と言って別れを告げ、ゆくゆく旅人に尋ねてみたのだが、北青（プクチョン）以北は支那兵が多く在留しており、北青又は咸興などに韓人に変裝した支那人が入り込んでいると聞いたのだが、遂に咸興に至り、途中北青の旧南兵使が南下するのに会ったのだが彼は次のように言った。
「前途一歩も進むことはできない。支那兵数十名が吉州、端川（タンチョン ＊北青、吉州の中間、日本海海岸）などに駐屯し、北青には変裝した支那人が昨今数名、皆短銃を隠し持っているので、万一にも害を受けることがないとはいえない実況である」と。
そこで決断してこの行路を止めた。そして直ちに定平まで引き返し、同月二十二日、元山に帰着した。
本件は上野領事より井上公使に詳細の報告をしたものと信じここに大要を述べる。
先ほどの永興府使・李南珪は咸興監司と同様頑迷で今なお日清の戦争上その勝敗すら知らないようで、特に支那人に厚き傾向があって我が国の人々に対しては甚だ冷淡な証拠があるだけでなく、公使を誹謗するなどの点にいたっては、陛下の御親任を損なう許し難い連中であるので、たとえ臣属が異なるといっても、目下の際、朝鮮政府に充分詰問できることと存じますので、免職にさせられますよう希望いたします。
聞くところによると、咸興監司あるいは北青南兵使は共にその職を止められたとのこと。もしそうであれば後任の赴任は目下の際至急を要するものと愚考している。近来何となく一二の風説があってそのなかで馬耳東風に付すことができないものは、曰く「咸鏡道北方に入ってきている支那兵は、ロシア国ウラジオストック陸軍の干渉する所だ」、また曰く「ロシア国は近々軍艦数艘を当元山に向け、多数の陸兵又は水夫等を上陸させる」と言っている。また「今回日清条約が成立しようとしている際、ロシア国その他の二ヶ国は連合してこの条約を破壊させる位置にたっている」と。
これらの風説の原因を探及すると、我が国の人々よりも、却って無頓着な韓人の口に唱えるもののようだ。これは決して聞き流しに出来ない大事であって、いよいよ進んで偵察の必要を感じ、元山もまた事件や災難などが多く、世間の騒がしいことと存じます。先ずは御地に達する飛脚に托し前件を御報告申し上げます。井上公使閣下にもよろしくお伝えください。不尽
明治二十八年五月一日 中川祐順
楠�� 中佐 殿 貴下
*北青（プクチョン）「郡域は日本海に面するが、郡の中心地である北青邑は内陸部に位置する。咸鏡山脈に抱かれた山がちな地形であり、徳城郡に源を発する南大川が南北に貫いて狭い平野を形成している。南大川は下流では新浦市との境界となり、日本海に注ぐ。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/北青郡
＊定平 「東は日本海（東朝鮮湾）に面する。東南部の平野（定平平野）は咸興平野に連なるが、総じて山がちな地形である。」牙山の北。
https://ja.wikipedia.org/wiki/定平郡＊中川祐順
https://blog.goo.ne.jp/bakumatsusotaiya/e/9368717f51df6045871fd6158ecab981
＊「李南珪、이남규(イナムギュ 1855年11月3日 ~ 1907 年8月19日) は韓国の独立活動家として、字は元八（ウオンパル）、号は汕佐（サンジョア)、 修堂（スダン) であり、本貫は(韓山（ハンサン)、忠清南道礼山（예산 ＊牙山の近く）郡出身である。1875年司馬試・両科に及第し、1882年文科（＊文官を選抜する科挙）に及第し、承政院の権知副正字（クォンジブジョンジャ）に登った。1885年弘文館校理（ホンムングァン・キョリ）として任命された後、副修撰（プスチャン）、修撰歴任し、1893年には副護軍（プホグン）、1896年には安東（アンドン *慶尚北道安東市）府観察司に任命され、1898年には中枢院議官に任命される。」
https://namu.wiki/w/이남규(독립운동가)
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