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2019年12月30日13:44
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山下洋輔を読む。そして聴く
山下さんの名著「風雲ジャス帖」（徳間文庫）は、書名の元となった山田風太郎のアレよろしく、幻惑に満ちている。
第1部はアホみたいな（！）日記・身辺雑記。2部がロックとの関係 ー マイク・ブルームフィールドらの�爛献礇后Ε蹈奪��爐鬚海�下ろしている ー や美空ひばり、三上寛らについてのエッセイ。3部が対談 ー 菊池雅章（まさぶみ。愛称プーさん）とのそれは秀逸。俺、プーさんの気持ちわかるなあ。一気に好感持ったもん ー 、そして第4部は研究編。
山下さんはトリオ結成後に病を得、長期入院。病院でジャス研究に勤んだ。本書所収の「ブルーノート研究」が、その1つではないか。かなり長い引用を以下。
「『ブルーノート: ジャス音楽において、音階中のある音程に対する名称である。主に三度と七度であり、それらはフラットとナチュラル両用に用いられ（EとE♭、BとB♭）、しばしばその中間の故意に�犂岼磴辰伸牴残�で演奏される。結果として形づくられる〈ブルース・スケール〉はブルースの特徴である』（Harvard Dictionary of Music）」
「この事典には記載されていないが、ブルース・スケールは通常譜例1のように表される。
この定義でも明らかなように、ブルーノートは元来、その楽曲のトニックからの音程によって、フラットした三度（flatted third）とか、フラットした七度（flatted seventh）と呼ばれるべきものだが、この点についてジャス研究家といわれる人たちの間には混乱が生じている。その例を有名なガンサー・シュラーにすら見ることができる。
譜例2のアドリブ・ソロは1927年、デューク・エリントン・オーケストラがビクターに吹き込んだ、Black and Tan Fantasy の中に現れるものである」。
同曲。当該のソロ部分は、1分06秒頃から。https:/
「土台のコードは典型的な〈ブルースコード〉で、24小節（2コーラス）にわたっている。シュラーは、このアドリブ・ソロに現れるブルーノートについて次のような説明をしている。
『ブルーノート :
a = マイナー・サード
b = フラット・フィフス
c = マイナー・セヴンス
d = マイナー・ナインス
e = ゆがめられた音で、フラット・オクターヴからマイナー・セヴンスうぃ通り、六度に達してB♭コードに先取音になっている』
このように、シュラーはブルーノートをその小節を支配しているコードの根音（ルート）との音程関係によって説明しようとしているのだが、この方法が有効であるかどうかは疑問である。彼がこれらの音をブルーノートであると判断したのは、それらの音が曲全体のトニックであるB♭音との音程関係において、それぞれ、フラットした三度、五度、七度のいずれかになっていたためであろう。これは前出の事典の定義と矛盾しない。ブルーノートは一般にこのように認知されているにである。
しかし、それを単にコードとの間の同時的、垂直的な関係に置き換えるという作業がブルース旋律のさらに進んだ理解につながるとは、どうしても思えないlなぜなら、同じブルースの旋律に対していくらでも異なるコード進行（chord progression）をつけることができるからである」。
※例えば以下の2曲はどうか。ジャズじゃなく、まんまブルースだけど。
ロバジョン ー ヘルハウンド・オン・マイ・トレイル https:/
同 クロスロード・ブルース https:/
〈ここで山下氏は譜例3 ー 上記写真参照 ー を基にベーレントを批判し、以下譜例を挙げつつ論を展開する〉
「このように旋律と和音を西洋音楽理論のようには同次元のものとして捉えられない理由は、ジャズ、あるいはブルースがその発生の時以来常に黒人と白人の両方の音楽要素が衝突することの上に成り立ってきているからである。この場合、黒人の要素とはブルースの旋律であり、白人の要素とは�狄聞圓垢覘猩族擦任△襪箸い┐襦�
「ブルーノートの機能の本質を解明するには、コードとの垂直的、同時的な関係ではなく、むしろ水平的、時間的な関係をとらえなければならない」
（中略。いよいよ本質論に入ります）
「ブルースあるいはジャズが、黒と白との衝突、あるいは弁証法によって成り立っていると前に述べた。しかし、シュラーに代表されるような、白い側の基準のみによる考察（この場合は、変化和音も含めた西洋の和声理論であった）がほとんど何の成果もあげ得ない、ということはすでに明らかになったと思う。
問題は黒い側に在るのである。ここで、われわれは、ブルースがアメリカ黒人『民族』の所産であることを改めて確認せねばならない。奴隷として新大陸に来たアメリカの黒人たちは、この359年間にまったく別の民族性および文化を獲得した。その1つの現れがブルースであり、それが決してヨーロッパのものではないことを示す1つの特徴が、ブルーノートである。
したがって、ブルースの旋律を成り立たせている原理がもしあるならば、それはブルースの創造者が体験した、あるいは今体験しつつある生活、およびそれによって新たに獲得された『民族性』の中に存在しなければならない。
言いかえれば、ブルースの旋律自身に内在する秩序をそのように成り立たせているものは、アメリカ黒人が獲得した独自の�猝餌嘉��猗�意識および音感なのである」
サツマっぽにしては「議ば多い」が、理屈・理論はだいじ。学なきところ、真理は掴めない。
彼の場合演奏者であり作者であり、楽理に強いのも強みだ。
俺は譜面もろくに読めぬ阿呆だが、かつて神戸のジャズクラブで演奏者たちと「ジャズは黒人音楽か否か」を激論したことを思い出す。彼らは「黒人音楽じゃない」、俺は「黒人音楽だ」。それが山下さんに裏付けられたようで、心強い。
むろん、ヨーロッパの西洋音楽（白人音楽）の影響があってジャズは発展した。また、「戦後日本のジャズ文化」を著したマイク・モラスキーによれば「白と黒との二項対立では、漏れ落ちることがある」（※）。うむ、確かに。
※ただしモラスキーの文意は「この二項対立にヒビを入れ、割れ目を拡大していく日本ジャズへの期待、可能性」ということである。
いずれにせよ、クール�爛蹈螢灰鶚爛献礇僖鵑覆鼻�介入する余地のない話。これは大人（年齢問わず）の話であり、あれらとはレベルが違いすぎる。
本書 ー こと「研究編」 ー を読みつつ例を探したり、音の表現に接しながら民族性や文化性、広い世界を垣間見るのも、ジャズの愉しみのひとつである。
そして俺はリロイ・ジョーンズ（アミリ・バラカ）のブルース本や、ネヴィル・ジョージのR&B本も好きだ。歴史と社会を学ぶにうってつけなので。
山下洋輔トリオ ー ミナのセカンドテーマ https:/
第1部はアホみたいな（！）日記・身辺雑記。2部がロックとの関係 ー マイク・ブルームフィールドらの�爛献礇后Ε蹈奪��爐鬚海�下ろしている ー や美空ひばり、三上寛らについてのエッセイ。3部が対談 ー 菊池雅章（まさぶみ。愛称プーさん）とのそれは秀逸。俺、プーさんの気持ちわかるなあ。一気に好感持ったもん ー 、そして第4部は研究編。
山下さんはトリオ結成後に病を得、長期入院。病院でジャス研究に勤んだ。本書所収の「ブルーノート研究」が、その1つではないか。かなり長い引用を以下。
「『ブルーノート: ジャス音楽において、音階中のある音程に対する名称である。主に三度と七度であり、それらはフラットとナチュラル両用に用いられ（EとE♭、BとB♭）、しばしばその中間の故意に�犂岼磴辰伸牴残�で演奏される。結果として形づくられる〈ブルース・スケール〉はブルースの特徴である』（Harvard Dictionary of Music）」
「この事典には記載されていないが、ブルース・スケールは通常譜例1のように表される。
この定義でも明らかなように、ブルーノートは元来、その楽曲のトニックからの音程によって、フラットした三度（flatted third）とか、フラットした七度（flatted seventh）と呼ばれるべきものだが、この点についてジャス研究家といわれる人たちの間には混乱が生じている。その例を有名なガンサー・シュラーにすら見ることができる。
譜例2のアドリブ・ソロは1927年、デューク・エリントン・オーケストラがビクターに吹き込んだ、Black and Tan Fantasy の中に現れるものである」。
同曲。当該のソロ部分は、1分06秒頃から。https:/「土台のコードは典型的な〈ブルースコード〉で、24小節（2コーラス）にわたっている。シュラーは、このアドリブ・ソロに現れるブルーノートについて次のような説明をしている。
『ブルーノート :
a = マイナー・サード
b = フラット・フィフス
c = マイナー・セヴンス
d = マイナー・ナインス
e = ゆがめられた音で、フラット・オクターヴからマイナー・セヴンスうぃ通り、六度に達してB♭コードに先取音になっている』
このように、シュラーはブルーノートをその小節を支配しているコードの根音（ルート）との音程関係によって説明しようとしているのだが、この方法が有効であるかどうかは疑問である。彼がこれらの音をブルーノートであると判断したのは、それらの音が曲全体のトニックであるB♭音との音程関係において、それぞれ、フラットした三度、五度、七度のいずれかになっていたためであろう。これは前出の事典の定義と矛盾しない。ブルーノートは一般にこのように認知されているにである。
しかし、それを単にコードとの間の同時的、垂直的な関係に置き換えるという作業がブルース旋律のさらに進んだ理解につながるとは、どうしても思えないlなぜなら、同じブルースの旋律に対していくらでも異なるコード進行（chord progression）をつけることができるからである」。
※例えば以下の2曲はどうか。ジャズじゃなく、まんまブルースだけど。
ロバジョン ー ヘルハウンド・オン・マイ・トレイル https:/同 クロスロード・ブルース https:/〈ここで山下氏は譜例3 ー 上記写真参照 ー を基にベーレントを批判し、以下譜例を挙げつつ論を展開する〉
「このように旋律と和音を西洋音楽理論のようには同次元のものとして捉えられない理由は、ジャズ、あるいはブルースがその発生の時以来常に黒人と白人の両方の音楽要素が衝突することの上に成り立ってきているからである。この場合、黒人の要素とはブルースの旋律であり、白人の要素とは�狄聞圓垢覘猩族擦任△襪箸い┐襦�
「ブルーノートの機能の本質を解明するには、コードとの垂直的、同時的な関係ではなく、むしろ水平的、時間的な関係をとらえなければならない」
（中略。いよいよ本質論に入ります）
「ブルースあるいはジャズが、黒と白との衝突、あるいは弁証法によって成り立っていると前に述べた。しかし、シュラーに代表されるような、白い側の基準のみによる考察（この場合は、変化和音も含めた西洋の和声理論であった）がほとんど何の成果もあげ得ない、ということはすでに明らかになったと思う。
問題は黒い側に在るのである。ここで、われわれは、ブルースがアメリカ黒人『民族』の所産であることを改めて確認せねばならない。奴隷として新大陸に来たアメリカの黒人たちは、この359年間にまったく別の民族性および文化を獲得した。その1つの現れがブルースであり、それが決してヨーロッパのものではないことを示す1つの特徴が、ブルーノートである。
したがって、ブルースの旋律を成り立たせている原理がもしあるならば、それはブルースの創造者が体験した、あるいは今体験しつつある生活、およびそれによって新たに獲得された『民族性』の中に存在しなければならない。
言いかえれば、ブルースの旋律自身に内在する秩序をそのように成り立たせているものは、アメリカ黒人が獲得した独自の�猝餌嘉��猗�意識および音感なのである」
サツマっぽにしては「議ば多い」が、理屈・理論はだいじ。学なきところ、真理は掴めない。
彼の場合演奏者であり作者であり、楽理に強いのも強みだ。
俺は譜面もろくに読めぬ阿呆だが、かつて神戸のジャズクラブで演奏者たちと「ジャズは黒人音楽か否か」を激論したことを思い出す。彼らは「黒人音楽じゃない」、俺は「黒人音楽だ」。それが山下さんに裏付けられたようで、心強い。
むろん、ヨーロッパの西洋音楽（白人音楽）の影響があってジャズは発展した。また、「戦後日本のジャズ文化」を著したマイク・モラスキーによれば「白と黒との二項対立では、漏れ落ちることがある」（※）。うむ、確かに。
※ただしモラスキーの文意は「この二項対立にヒビを入れ、割れ目を拡大していく日本ジャズへの期待、可能性」ということである。
いずれにせよ、クール�爛蹈螢灰鶚爛献礇僖鵑覆鼻�介入する余地のない話。これは大人（年齢問わず）の話であり、あれらとはレベルが違いすぎる。
本書 ー こと「研究編」 ー を読みつつ例を探したり、音の表現に接しながら民族性や文化性、広い世界を垣間見るのも、ジャズの愉しみのひとつである。
そして俺はリロイ・ジョーンズ（アミリ・バラカ）のブルース本や、ネヴィル・ジョージのR&B本も好きだ。歴史と社会を学ぶにうってつけなので。
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