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2019年12月19日14:37

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アメリカを静かに殺す「学生ローン」という爆弾 ローンの総額がついに1兆ドルを突破

まさに空前絶後の規模である。1兆ドル(約110兆円)――。アメリカの学生が抱える学生ローンの総額が、今年初めて1兆ドルを超えたのだ。
 連邦準備委員会による消費者信用報告書によれば、現在4400万人を超えるアメリカ人が総額1兆5600億ドル(約170兆円)を学生ローンで借りている。
 この額は、アメリカのクレジットカードの合計債務額の1兆2000億ドルよりも多く、また自動車ローンの合計債務額よりも約5210億ドル多い。今や学生ローンは、その範囲と影響において、住宅ローン以外には比べるものがないほどの国内最大の消費者債務のカテゴリーになっている。
返済には平均で19.7年かかる
 この巨大な数字には、新卒者だけでなく、学校を出てから10年以上経過した人々の債務も含まれる。学費の支払いと返済を支援する組織であるニトロは「アメリカ政府による融資の標準的な返済期限は10年だが、学士号保有者が融資を実際に返済するのに平均で19.7年かかることが研究によって示唆されている」。
 なぜ人々は、そんなに巨額の費用がかかる大学に行きたがるのか。その理由は明確だ。
 上院議員のジョン・スーンおよびマーク・ワーナーによると、「事実上、給与が3万5000ドル以上のすべての仕事の半分以上で、学士号以上の学歴が要求されます。そして、この傾向は今後大きくなるだろう」。
 アンソニー・P・カーネベールなどによる調査「いい仕事に就くための3つの教育経路」によると、すべての“いい仕事”の56%が学士号保有者向けであった。理由は、4年制大学卒以上の学歴を持つ労働者の需要が大きいためだ。学士号を必要とする仕事の約74%は、医師や弁護士、エンジニア、会計士、コンピュータープログラマー、ジャーナリスト、建築家といった専門的および技術的な仕事だ。
 多くの家庭や学生は、こうした統計結果を認識しているため、大学は、彼らにとって成功を約束する唯一の経路となっている。しかし、その費用の準備ができていない家庭は数えきれないほど多い。
 学生ローンを提供するサリー・メイによれば、アメリカの私立大学に通う費用は、授業料、学生寮代、食事代、教科書代を含めると、ほとんどの場合なんと年間7万ドル(約760万円)を超える。 2018年に公立大学にかかる教育費用は、奨学金と助成金を差し引いても、年間約1万5367ドル(約160万円)だった。
 ところが、サリー・メイによると、10人の親のうち、約4人が学費の貯蓄をしていない。そして、貯蓄をしている人の平均貯蓄額は1万8135ドルだった。1兆5000億ドルもの学費ローンは、高額な大学の学費と、低い貯蓄率とが招いたものだ。
 ボストンのノースイースタン大学を最近卒業したサラ・アンダーソンにとって、これほど高い学費は正当化できないものだ。「大学に行くための費用は、そこで得られる経験に照らして考えれば、あまりに高いと思う。大学は、私がつぎ込んだだけのお金に見合う価値はなかった」と彼女は言う。
産学連携教育に助けられた
 アンダーソンは、とくに若い人々にとって、世界やさまざまな異なる考えに目を開かせてくれる高等教育の重要性については理解している。「しかし、費用や借金に伴うストレスを考えると、それだけの価値はない。大学在学中に、すばらしい教授や授業を体験したが、それでも毎年6万ドルの費用に見合ったものではなかった」。
 とはいえ、アンダーソンはほかの卒業生に比べればラッキーだ。毎年の平均費用が6万5503ドル(財政援助を受けた場合は2万8565ドル)もかかるエリート大学を、ローンを残さずに卒業できたのだから。「私の両親が長い間私の教育費用を貯めていてくれたことが大きい。私自身も16歳のときからバイトをしていた。複数の仕事を掛け持ちしたこともある」と彼女は話す。
 大学が提供する産学連携教育(コーオプ教育)も学費などを賄う一助となった。産学連携教育とは、学生が実社会での経験を得るための取り組みで、通常3〜12カ月間のフルタイムの仕事(有給)などを含む。学生は、より詳細で広範な実務経験を積む機会を得るため、このプログラムを通して実践的な2〜3以上の学習経験を修了することが期待されている。
 ボストンのウェントワース工科大学の協同教育およびキャリアサービスのディレクターであるロビン・ボーシャンによれば、学生はこのプログラムを通して就職に有利となるスキルを得るだけでなく、フルタイムで働くことでお金を稼ぐこともできるので、家庭の負担を減らせるメリットもある。
 アンダーソンが学生ローンの借金を残さずに大学を卒業できたのも、このおかげだ。「私が受講したクラスの大半は、高額な授業料を正当化するほどのものではなかったが、卒業後の仕事に直接役に立つ3つのコーオプをとれたことはよかった」と彼女は言った。
 彼女にとっては学士号を取得し、その後のキャリアのために選んだ業界での1年半の職務経験を経て大学を卒業したことには価値があった。 学生ローンがないアンダーソンは、現在の収入をすべて家賃や食費、貯金に充てることができる。 また、「必死にならなくても」いい信用スコアを維持できている。そのおかげで、必要に応じて家を借りたり買ったり、また必要に応じ車を購入したりできるし、全体として強固な財務状況を維持できる。
 もっとも、大半はアンダーソンのように借金を残さずに卒業できるわけではない。実際、数年前に大学を卒業した友人は、月収の25〜50%を学生ローンの返済に充てている。日刊紙USAトゥデイが取材したある学生は、「正直、学生にどうやってそんな額が返済できるのだろう」と語っている。「ご存じのように、学士号の場合は20万ドルの借金と卒業するわけなんでね」。
 同記事によると、一部の学生は学費で首が回らなくなり、ホームレスになってしまったという。2019年の「大学、コミュニティー、および正義のための希望センター」による調査では、4年制大学に通った人の14%がホームレスを経験している。このような結果を招いたのは、授業料の上昇に加え、食料、電気・ガス、育児、手頃な価格の住宅などのコストの上昇に追いつかない財政支援パッケージなど、複数の要因の組み合わせだ。
ミレニアル世代の結婚や家族計画にも影響
 ホームレスの脅威に加えて、学生ローンの借金はミレニアル世代の結婚と家族計画にも影響を与えている。 これはアンダーソンにも当てはまる。「私には教育ローンはないが、それでも私が子どもを持つかどうかという決定には、アメリカの高い教育費用が影響するだろう。同じ理由で、ヨーロッパでの仕事により大きな魅力を感じている」。
 2018年のアメリカ労働省の青少年に関する全国縦断調査によれば、この決定は多くのミレニアル世代に共通している。 この研究では、学生の借金と、結婚や子供を持つ時期の延期との間に相関関係が見られた。
 こうした中、学生ローン問題は来年の大統領選のカギを握るテーマの1つとなっている。サフォーク大学とUSAトゥデイによる共同の世論調査では、教育は民主党の大統領候補者に議論してほしいトップ5の問題の1つであることが明らかになった。
 民主党の大統領候補に立候補したバーニー・サンダース上院議員や、エリザベス・ウォーレン上院議員らは、学生ローンを自らの政策の重要な要素にし、高等教育のほぼ全額無償化と、1兆6000億ドルの借金のほぼ全額、もしくは全額免除を提案している。
 また、ジョン・スーン上院議員(共和党)とマーク・ワーナー上院議員(民主党)は、超党派による「雇用主による返済参加」に関する法案を提案。今の法律では、雇用主は、雇用中の従業員の教育費用に対し、毎年最大5250ドルを非課税で補助できるが、ワーナー上院議員らの案は、すでに卒業した従業員の学生ローンの返済の補助として、同様の非課税拠出金を提供できるようにするものだ。
 アメリカ人にとっては、頭の痛い学生ローン問題。高い学費を払っても、それに見合うだけの教育やその後のキャリアを得られないこと自体問題だが、放置され続ければアメリカ経済に影響を与える日が来かねない。アメリカはこの「爆弾」をどうするのだろうか。
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