『天寿国の末裔』
ここにもう一人のキーパーソンが呼ばれる。玄�靴任△襦Ｃ匱�に師事し、法相教学を学び玄宗皇帝にも認められ三品に準じて紫衣を賜れた。
「和尚、どうじゃな、唐の国は」
「ははっ、唐の国は則天武后の熱心な仏教奨励で学問僧は皆熱心に仏教をまなんでおります。私もそうです。現状三蔵法師が印度(インド)より持ち帰った経典の理解と修行にに皆が勤しんでおります」
玄�靴話羚颪砲�ける仏教の隆盛を述べる。
「中国仏教の展開 １」 ≪以降、対話・敬語に改める≫
仏教祖ゴータマ・釈迦はインド・ネパール地方に生まれた。そこはアーリア語族文化圏であり、西はギリシァ・ペルシャまで大地は延々と裾野を延ばす。
ヨーロッパとアジアは同じ大地にあり、地続きである。その気になり障害さえなければ、徒歩で行き来ができる。しかし広大無辺の大地にアーリア語族文化圏は多くの異なった国家・民族を有し、地理・気候・自然環境も著しく異なる。
この大地でインドには古くから宗教哲学等も発祥し継承されていたが、伝承者バラモン階級はその過程の中でカースト制度による世襲的身分制度を確立し固持する。広汎な大地のどの地域の社会にも支配のための遮断と、孤立した個人が救いの無い生活を形成する。
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仏教はそうした社会の在り方、それを是とするバラモン、既成宗教への批判として登場する。しかし「全て人に悟りに至る仏性あり」とする仏教は、その親和的な性格によりカースト制度の解体へとは進まなかった。そして、異教徒の侵入の前では他国へ逃亡するしかなかった。その一群は遥かシルクロードを経由して中国に渡り、その思想は後に朝鮮と日本にも伝播してくる。
釈迦の説くのは、現世の苦しみ、死後の苦悩としての『輪廻転生』の否定であり、「我また再生せず」の言葉は「仏陀の浄土」を予定する。霊魂の再生『三世因果応報』を断ち切り、後に浄土宗の教学として衆生を『極楽浄土』に導く。現世・此岸の生活が、辛く苦しく悲しいものであるならば、来世・彼岸の生活は楽しく実り豊かであることを、誰しもが願うであろう。そうであるが故に現世の変革をも尚、志すのだろう。それは理想郷・ユートピアの創造・建設として現れてくるのだろう。それは反射し、自身の生命活動をを理想的状態に目覚めさせることでもある。
古代のインドでは「ウッタ−ル楽土」が想定されていた。中国では理想郷としての彼岸は「安養国・安楽国」等の呼び名で想定され、日本の浄土教の発展の中で「極楽浄土」として渇望され、規定されてゆく。
仏教思想を表記するお経は、経・律・論からなる。三蔵である。経は「仏陀の言葉」金科玉条と説明であり、律は行動規範であり、論は経・律を含む論理展開である。
中国はインド仏教を斟酌することなく受容し、発展させた。一世紀前後から五世紀の長い間小乗・大乗の教えを問わず、思想そのものと創造的産物である仏像と建築技術や進んだ文物とを、共に受け入れた。それは良否矛盾を問わず、まず思考対象そのものを多く受け入れ、後に検討しようとの学者としての賢明な態度なのだろう。
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「中国仏教の展開 ２」
仏教聖典・経典としてはインドから中国に流れた人々達が徐々に伝えたであろうが、二世紀半ばはインド・中央アジアに広域な領土を支配する奉仏の大月氏カニシカ王が、西北ンドに都を置き大乗仏教の強化発展に寄与した。道教や神仙思想と混在していた仏教は、三世紀頃より老荘哲学に媒介され般若経学を中心に隆盛する。
＜ 仏教の思想 ＞
朱士行（２６０西域・コータン）法顕（４１３南京到着）等が、まず中国から諸典を求め、西域インドからは鳩摩羅什が西域・インドから（４０１）長安についた。
鳩摩羅什は龍樹の大乗教学に傾倒し、大乗経典の｢般若経｣「法華経」「維摩経」「弥勒経」「阿弥陀経」と、中観派の「百論」「十二門論」「大智度論」と、小乗仏典「成実論」を漢訳する。
他に、漢訳仏典は二世紀後半に小乗仏典を安息国の安世高が、大乗仏典を大月氏の支婁迦讖が翻訳している。
華厳経六十巻はインド出身の仏陀跋陀羅が三万六千偈を六十巻に、于闐で翻訳編纂（４２０頃）された。晋経、六十華厳と呼ばれる。唐の実叉難陀は四万五千偈を翻訳し八十華厳(７００頃)とした。唐経と呼ばれる。後に般若三蔵が「入法界品」(のみ)を翻訳し四十巻とした。貞元経と呼ばれる。
＜華厳の思想 蒲田茂雄 講談社学術文庫 ｐ２３ｐ２４ｐ４９ｐ５０＞
涅槃経四十巻「金光明経」はダルマクシェーマ（４２１）が訳した。一切経・大蔵経は五千巻におよび、華厳宗・涅槃宗の源泉となる。
道安は大量の経巻を「綜理衆経目録」（３７４）を作成し翻訳者の経を年代順に整理する。智��(538〜597)が経典を整理し、主従関係を見て「法華経」を最優位として天台宗を開く。
西インドのパラマールタ(クラナータ)は二百四十包の聖典と共に南京(548)に到着する。玄奘はこれを学びインド留学を決意し、２９歳長安を出て１４年後に長安に戻る。入滅までの１９年を翻訳事業に没頭し、七十五部一千三百五十五巻を訳す。他に「大唐西域記」も記す。これにて中国・唐の長安は仏教興隆の根拠地となる。
しかし、ただこれらの人々の活躍だけが華ではない。彼らを支えた無名の人々の群れは夥しい数にのぼるだろう。この中の彼一人を挙げても、追従する者のどれだけの数だろう。そして彼らはどれだけの人々に影響を与えたのだろうか。そして彼らの生涯は、望む望まずにも紆余曲折を経て、しかし彼らは一直線の道を丹念に登りつめ、成果にたどり着けたのだ。
＜ お経の話 渡辺照宏 岩波新書 ｐ１〜３ｐ５１〜５９ ＞
『中国浄土教』
中国浄土教は北魏時代に隆盛を極め、六世紀頃には法顕による弥勒菩薩の弥勒浄土信仰が顕著となる。しかし弥勒の登場する兜率天は遠い未来の話であり、隋・唐の時代に生きた人々は現世での救済を可能とする阿弥陀仏の西方浄土信仰を渇望し、中国大乗仏教の中心となる。
その中心に道安と慧遠がいて中国浄土教の初期教団が確立される。経典としては般若経・維摩経・法華経を中心に大乗経は発展し、中国浄土教の経典としては阿閦仏国経が重要な位置を占める。
「阿閦仏、悟りを得たとき大光明を放ち、三千大千世界を照らす。云々」と、一切衆生の教化救済の誓願、大慈・大悲の利他行としての菩薩の実践を説く。
しかしこの時点で中国浄土教の民衆宗教としては成立していない。彼らは時代の政治過程の中で山中修業を選ぶしかなかった。経典を思想として捉えるなら、背景としての社会形成が未成熟であったからだろう。易姓革命などによる幾多の悲惨な歴史的試練を中国の民衆が経験し、その経験の中で同じ時代にいた曇鸞・道綽・善導等の指導のもとに民衆宗教としての浄土教は発展したのだ。
厭離穢土・欣求浄土・極楽浄土への過程は、賢人隠士の山林修業からは開始されない。市井の民衆の希求から出発する信仰の過程なのだ。
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「三武一宗の法難」と言われる仏教弾圧が、中国の時の皇帝によってなされている。宗教は国家や時空を問わない。人を、人間存在そのものを問う。その精神世界を問うことにより、皇帝や権力者を宗教の『聖者』としては戴かない。権力者は自己の目的意識により宗教の取捨選択を行う。
桓玄による僧侶淘汰命令（４０２）。北魏の太武帝による「魏武の法難」（４４６）は、廃仏毀釈として７年間の猛威を奮い、中国は無仏世界となる。
「周武の法難」（５７４）（５７７）は、儒教・仏教・道教の論戦が文武百官の間でなされ二回に及び、仏教・道教が廃された。この試練の後に唐の時代長安にて仏教は盛大に花開く。
しかしまだ後に唐の武宗による「会昌の廃仏」（８４５）もあり、後周の世宗による「後周の法難」（９５５）は、仏教だけでなく景教・祅教・マニ教も弾圧を受ける。
(平凡社大百科辞典 )
中国浄土教はこれらの法難の洗礼を受けることなくして昇華しなかっただろう。欣求浄土・厭離穢土・極楽浄土の思考過程はこの法難と以降の政治的混乱の中で培われたのだろう。
日本には無量寿経・阿弥陀経・観無量寿経とが「浄土三部経」として合わさり、日本浄土信仰の基礎聖典となった。
聖武天皇は玄�靴龍賚�を労った。
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