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2019年09月11日18:40

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『Strange dream world』

No.0485

特別編 『御伽叙事譚-Insane Vision-』

Review :
<第一幕>→07/24, 07/31, 08/07, 08/14 Diary
<第二幕>→08/21, 08/28, 09/04 Diary

(Vol.8 Revival Of A Right Eye〜鬼斬丸〜)

     ◇

鬼ヶ島の王座にて桃太郎を待つ私。
数刻後、桃太郎の船が鬼ヶ島に上陸した。
約100人の手下の鬼達に、「桃太郎だけは殺すな」と伝え、
桃太郎が乗り込んで来るのをひたすら待った。

桃太郎の狙いは手下の鬼では無く、私だけだった。
お供の犬、猿、雉はまだ生きていた。
桃太郎は手下の鬼にやられた軽傷を物ともせずに、私目掛けてかかって来た!!

桃太郎「都を滅ぼすだけでは無く、
育ての親であるお爺さんとお婆さんも既に殺しやがって!!」
「一体、何の事だ!! お前は誰に育てられて、こんな恐ろしい刀で挑んで来るのか」
桃太郎「この傷を見ろ!!」

桃太郎が上着を脱いで見せた上半身には、痛々しい創傷が。
頭をかすって首元よりも若干下から腹部に至るまでの創傷はどこで付いたものなのか。
桃太郎には誕生の瞬間に見えた存在が、お爺さんとお婆さんでは無かったというのか。

桃から生まれる瞬間に誤って真っ二つにされそうになった桃太郎の怨念が、
ここで爆発しているのか。
生まれて間もない桃太郎は里親代わりに、村の者に育てられたが、
この時、既にお爺さんとお婆さんの姿は無く、
村の者曰く「あれは鬼ヶ島の鬼が、お前が生まれる前に殺そうとしたに違いない」
と吹聴したのだ。

元々、我が根城を崩されでもしたら我々鬼は滅びてしまう。
私は手下の鬼にお爺さんとお婆さんの姿に変えさせ、人間界の様子を見に行かせた。
そこで出会った生まれる前の桃太郎を先に殺してしまえば、
この根城に乗り込む愚者は存在しないし、私の右目も潰されずに済む。
後は都を滅ぼそうがどうでもいいので、悠々と余生を過ごそうと思ったが、
桃太郎の目は完全に私の右目を捕えている。

私は鬼特有の咆哮で桃太郎一行を怯ませた後、
まずは桃太郎の腰に付いている刀を掴んで圧し折った。
次に目を狙う雉を気絶させ、“誰も殺さないように”再び桃太郎と対峙した。
丸腰となった桃太郎には戦意が無くなっていた。
私は無理に襲う事は止め、圧し折った刀の柄に“鬼斬丸”と刻まれているのに気付く。
私の右目はこうして守られた。
激昂するのかと思った桃太郎を私は優しく諭しながら、

「もうこんな争いは止めないか? お主を事前に殺そうとした事は謝る。
事情は深く追求せんでくれ」
桃太郎「……お爺さんとお婆さんはあの時、既に殺したのか?」
「いいや、あそこの地下牢に眠らせてある。
我が根城はお主等の都同様、無くてはならないものだからな」

こうして桃太郎はお爺さんとお婆さんを連れて、鬼を滅ぼさずに鬼ヶ島を出た。
この時、お詫びにと宝の山を桃太郎に渡したのは原作通り。
こうして私は各話の中で、右目を潰されずに済みそして一夜が明けた。

     ◇

……右目が妙に熱い。
何だここは? 確か鬼ヶ島から元の世界の寝室で目覚める筈だったのに。

何処の国の上空だろうか、私は異形の姿に変わり空を舞う。
まるで化け物のようなその姿に、私は視界を開けようとするが、
“無事だった筈”の右目だけがなかなか見え難い。
西洋でいうところの吸血鬼みたいな存在なのか?
左目だけが捕えた先には、立派な城郭が見えてくる。
その城の天守閣の隙間からは、月の光さえも消え失せた暗闇だけが広がっている。

使役者「ついにこの時が来たぞ!! 生贄を捧げよ!!」

奏姫は覚悟を決めたように、
ゆっくりとその場から立ち上がり夜空から飛来する異形の存在へ目を向ける。
私は目の前の、美しくそして可愛らしい姿のお姫様を見た瞬間、
全ての記憶が私の中で駆け巡る。

私(あの時、窮地に立った際に聴こえたあの歌声の歌姫!?)

奏姫は暫し私の姿を見て驚いたような表情を覗かせる。
こいつ等か、こいつ等が奏姫を苦しめている輩共か。
私は拘束されている奏姫へと近寄り、拘束を全て解いた。
呆気に取られている輩共は、姫様の味方となった私に向けて刀を突き出している。

私(もう右目を狙うのは止めてくれ)

すると、奏姫は十二単の長過ぎる袖はそのままに、
近くにあった薙刀を手にし、使役者達に向き直った。

奏姫「貴方は早く逃げて!! ここは妾が止めるから!!」
私「可愛い女の子にそんな事はさせない!!
何かあってあいつ等に苦しめられてたんでしょ?
危ないから下がって!!」

使役者「おのれ!! 生贄を喰うお前が我々の敵だったとはな!!
そこに直れ!! 叩き斬ってくれるわ!!」

奏姫「貴方と一緒なら大丈夫な気がしてきた!! 早くここから逃げよっ」
私(勇ましい表情なのにこの可愛さ……。一瞬、我を忘れて見入ってしまった。)

私は奏姫の手(長過ぎる袖越しに)を引いて、襲い来る使役者達を次々と薙ぎ倒していった。
後方からの攻撃まで手が回らないので、そこだけは密かに奏姫に頼った。
どうしても打袴が長過ぎるので、引き摺った裾で転んでしまわないか心配だったが、
奏姫は上手く立ち回り、重い十二単を引き摺って私に付いて来てくれた。

城中の敵を何とか全滅させたところで、奏姫は元居た大広間へと私を誘導した。
そこで一息入れた後、奏姫は十二単の着崩れを何とか直した後、
私の側へ本来の膝立ちでゆっくりと近付き、

奏姫「妾の為にここまで……して……くれるなんて……うぅ、うわあああああぁぁぁぁぁん!!!!!」

そして、大いに私の胸で泣き続けた。私、いや僕小2なのにな。
私の右目をずっと守り続けてくれたこの子が、
もしかしたら“本来の私の右目そのもの”なのでは?
奏姫はずっと私から離れずに私の右目に優しく触れながら、

奏姫「これで脅威は去りました、妾も無事に十五を迎える事が出来ます」

これは遠い遠い昔の物語。
目が覚めると、私の右目はしっかりと朝の光を捉えている。

to be continued……
(特別編 『御伽叙事譚-Insane Vision-』(Vol.9 御終〜それは昔々の御話〜)へ続く。)
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