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2019年06月24日20:29

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涙石の情景

涙石の情景

雨上がりの空と水溜りの空の
二面鏡に挟まれて
初めて此の世に立ち尽くすことを覚えた

少年

その目から前触れもなく零れる



その目は何も捉えていない
それは無表情だ

憂いも何もなく
涙の零れる理由も原因も持たず
ただとめどなく流れる

少年の涙はそれは大粒

瞼をゆっくりと下ろしうっすらと上げた時
何処を見ると定めたわけでもないのに
黒目が正面を向いている

そんな感じの
そんな感じの
焦点のまま

その焦点のまま目を見開いて
何も捉えないまま零した


少年が立つ水溜りに覆われたアスファルトから
12mほど離れた花壇からそれを見る

青年

その目から前触れもなく零れる



彼と少年の間には澄んだ空気しかないけれど
その空間には場所が場所ならきっと
直立した人間が37人くらい入ったことだろう

青年は少年の何も捉えていない涙に
捉えられた

憂いも何もなく
涙の零れる理由も原因も持たず
ただとめどなく流れる少年の涙

青年はそれを目に入れた
だから青年の目からも同じ涙が零れた

青年の涙もまた頬を伝う

スコップと如雨露を持ったまま
雨上がりの空と水溜りの空の
二面鏡に挟まれて
初めて此の世で立ち尽くすことを覚えた

青年


涙を止める37人は
そこにはいない

彼らを繋げるまでに必要だった37人は
風に乗って消え去った

涙を止める必要も
そこにはない

そこには原因も理由もそれどころか何もない
全て風に乗って消え去った

そして何処からかやってきた爽風だけが
まるで涙を拭くように吹き荒れて
そしてその目からは前触れもなく零れる


これは人の流した涙石の中に
微かに映る情景だよ
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