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2018年10月08日10:42

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暴走する資本主義の未来に一筋の光明を見た。

クリントン政権の労働長官だったロバート・ライシュの本(写真左)を読んだ。
原題は”Saving Capitalism” 2015だからどうみても「資本主義の救出」なのだが邦訳題名は何故か「最後の資本主義」2016.12となっている。出版社がセンセーショナルな題名に変えることは良くある事だけど、本の題名には著者の意図が込められているのだからむやみに変えないでもらいたい。

ノーベル経済学賞のスティグリッツがよく「資本主義のルールが富裕層有利に変更された」と言っているけど具体性がよく分からなかったが本書で良く分かった。1970年代からアメリカの大企業や富裕層(マイクロソフト、アップル、ヤフー、グーグル、AT&T、エンロン、ウオールマート、モンサント、カーギル、モリガンスタンレー等)がロビー活動に大金を投じて議員、専門家、マスコミを籠絡し自分達に都合良くルールを法制化してきた事実、大企業・裁判所・政府が労働組合を弾圧した事実がこれでもかこれでもかと半分以上をこの説明に割いている。ここまで言われると社会主義者の告発にも聞こえてくるけど新自由主義の実体を如実に暴いている。

実は10年前に話題になったライシュの前書(写真右)も買って読んでいた。邦訳題名「暴走する資本主義」2008.6(原題“Supercapitalism” 2007)
この本でも同じ事が警鐘されていたけども、日本で10年前はまだ資本主義の弊害だの格差拡大だのとはあまり言われてなかったし、私もまだ現役でそれ行けどんどんやっていたのでライシュの言う事はピンと来ずどこか対岸の他人事の様に思っていた。ところが今や世界の先進国ではライシュの指摘通りのゆゆしき超資本主義(新自由主義)の猛威にさらされているのです。

(図中)はアメリカのトップ1%シェア(所得番付上位1%の人達の合計所得が全国民所得に占める割合)の年次推移を表しているトマ・ピケティのデータである。1950年代1960年代はトップ1%シェアが最も低い公平な時代であるが、1970年代から急激に増加して格差が拡大している。この時代をライシュはこう評している、
「多くの国民が豊かな生活を享受し、国民所得はより公平に分配されて労働者の賃金は1970年代初めまで上昇し続けた。社会的共通資本による恩恵が或る程度実現された資本主義の黄金時代と言えよう。この状況はそれまでに例を見ないものであり、それ以降も実現していない。そして1970年代に何もかも一変させてしまう出来事が起こりアメリカと世界を超資本主義への道をまい進させることになった」と。

1970年代に何もかも一変させてしまった出来事とは一体何か?
それは電子技術の技術革新がそれまでの安定した良き社会を破壊してしまった、とライシュは言うのです。まさにこの時期私達が半導体と通信の分野で技術革新に貢献したがために良き社会を破壊したと言うわけです。こんな世の中にしたのは我々電子技術者だと言うのです。何と言うことでしょう。
ところが、日本では、(図中)のOPTEST Labs.のデータによると日本のトップ1%シェアは2013年でもアメリカの黄金時代と同じ5%の水準にあるののです。電子技術の技術革新は日米同時に起こっているのに日米で格差の傾向がこれほど違うのは技術革新のせいでは無く新自由主義の政策こそが社会を破壊したのではないか?アメリカで新自由主義の導入が本格化するのは1981年レーガノミクスであり、日本では20年後の2001年小泉内閣の規制緩和なので今将に日本社会の崩壊が懸念される(もしかして既に進行している)。

では超資本主義(新自由主義)に侵された我々はどうすればいいのでしょうか?マルクスの言う通り革命を待つしかないのでしょうか?前書ではどうすればいいのかについて具体的に述べていなかったけど、今度の本では暴走する資本主義を救うことは出来ると多くの具体策を提言しているの注目される。著者はアメリカ民主党政権の中枢にいただけあって具体的な政策提言にリアリティがある。ライシュの提言をまとめると、
1、所得下位90%の市民の経済的共通点は極めて大きい、これを糾合した全国的拮抗力を組織できるはずだ。そうすれば政策の転換は可能だ。
2、経済的利益を広く市民に拡散させるための新しい経済ルールを法制化する。利益至上の法人格をステイクホルダ企業へ変革する。雇用労働法、大店舗法、税制の改革
3、とどのつまりは、経済的に独立して自活できるだけの基礎的な最低限の所得(ベーシックインカム)を成人全員に支給すること。

ロボットや人工知能が人間の労働を行う近い将来は、人間の労働時間はどうなるでしょう?18世紀の産業革命時19世紀の電子革命時にもこの問題は起きましたが、当時は全体の経済が伸びていたので人間の労働時間は減ることはありませんでした。しかし経済が安定成長下での人工知能ロボットによる生産性の向上は人間の労働時間を減らすことになります。人工知能ロボットが働くお蔭で人間はあまり働かなくてもよくなるはずです。ところが人工知能ロボットが得るべき賃金をそれを作った企業や資本家が利益としてとると労働時間の少ない人間の賃金は少なくなってしまい、労働者は惨めな状況になるのです。

ロボットや人工知能は企業や資本家のものではなくて社会的共通資本と考えて人工知能ロボットの賃金は人間の賃金に回す、これがベーシックインカムなんです。だからベーシックインカムの財源は人工知能ロボットへの高率の資産税で賄うことになるのでロボットや人工知能の技術革新にブレーキをかけることになるのです。そう、経済成長にブレーキをかけて定常社会へ軟着陸を図るのです。これを実現するには経済成長に拮抗して市民生活を守る勢力が台頭しなければならないのです。これはイデオロギーではないので自民党でも野党でも期が熟せば一機に成ると期待しています。

未来社会を見据えたこれだけ明確な提言は最近ない。マルクスに頼ることなく生きて行ける勇気が湧いた。

以上

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