「ラストサムライ」観ました。2回目です。
トムクルーズと渡辺謙の共演、そして真田広之、小雪、という豪華キャストも出演してます。
渡辺謙はアカデミー賞とゴールデングローブ賞の助演男優賞にノミネートされたが受賞に至らなかった、ということです。
その他アカデミー賞には美術賞、コスチュームデザイン賞など、計4部門にノミネート、あとモーションピクチャードラマにトムクルーズが主演男優賞、そしてハンスジマ―がベストスコア賞にノミネートされてます。
そして興行収入、4億5千ドル以上だから、500億円くらいでしょうか？
大ヒットですね。
日本人俳優が、映画初出演のエキストラ達を含めて、大勢出演したことも、大きな話題となったそうです。
なんとこれは、最初に観た時にはわからなかったのだけど、西郷隆盛の「西南戦争」をモデルとしてる、というか、触発されて脚本を書いた、ということです。
明治維新は、たまきにとって最も興味のある話の一つなので、この類の話になると、ついむきになっていろいろ調べたりして、これを書き始めるまでに2〜3日かかりました。
おまけに、レンタルDVDで観ると、監督のエドワード・ズウィックの映画の解説というものが付いていて、これが長いんですよ。
せいぜい20分以内に終わる、と思っていたら、1時間以上あったように思います。
2日かけて全部観て、聞きました。
というのも、明治維新以来、西洋化を急速に進めていた日本で、その時代の流れに逆らって、元通りの士農工商の時代を続けようとした「不平士族」の引き起こした戦争に、何故白人（つまり西洋の人）が魅力を感じるのか、どの辺がそんなに「美しい生き方」だ、と思ったのか、さっぱりわからなかったからです。
「何考えてこの映画作ったの？」と思った。知りたかったんです。
その為には西郷について知らないといけないんだけど、ほとんど知りませんから。
たまきと同じ、鹿児島県出身、ということ以外。
この人、最初はいわゆる明治維新の立役者、だったわけでしょ？
薩摩藩は、日本で最も最初に西洋化を進めていた藩で、西郷なんか、めちゃ西洋化主義だったはず。
そして新政府の要職に就いていたのに、征韓論で失敗し、自ら辞職、それから私学校を設立して、それが元で西南戦争が起こり、そこで戦死してるんですね。
この学校って、そもそも「不平士族」の不満が爆発、暴動へと発展するのを防ぐ目的もあったらしいです。
不平士族、というのは、明治維新によって幕府が崩壊、そして王政復古が成って、四民平等の世の中になり、「武士階級」という特権を失った、元武士達、その中で不満を持ってる人達のことですね。
「西南戦争」を初めとした、この頃頻発した反乱、内戦は、全てこういった、「職を失った」、つまり食べていく道を閉ざされた元武士階級の人達が、新政府に対して起こした反乱だったわけですね。
西郷は、こういう、不満が爆発しそうになっていた若い武士階級出身者たちの暴発を防いで、西洋式の軍人に育てる為に私学校を設立したはずなのだけど、ちょっとしたことで生徒が暴発、戦争が始まってしまうと、彼はそれを指導する側にまわってしまった、ということらしい。
たまきは最初にこれを観た時、「トムクルーズが際立っていい。主役がこの人じゃなかったら、この映画は失敗してたかもしれないな」と思ったのです。
でも今回、改めてよく観ると、日本人俳優達がかなりいい演技をしてますね。
特に渡辺謙と真田広之は、完全にハリウッド俳優の基準に達して、その中でも特に優秀、という意味で渡辺謙は2つの大きな賞にノミネートされてる。
真田広之は当然、日本を代表するアクションスターなんだから、剣の使い方はピカイチだし、実際、この人の太刀回りシーンがあまりに見事で、主演のトムの存在が
かすんでしまうのを危惧して、だいぶカットした、ということで、戦場での見せ場は数十秒、というところです。
本来ならば、彼が勝元の役をやるべきなのだが、と監督は言ってました。
本人が、「自分は何の役だっていい」と言ったのだそうです。
日本のことを世界に知ってもらう映画を作ることに、彼はとても熱意を持っていた、と。
だからあれほどの俳優でありながら、さほど目立たない、脇役に回ってるんですね。
これですよ！これが日本人なんですね。
犠牲的精神。
縁の下の力持ちに、進んでなる人がいくらでもいる、それが日本だし、もしかしたら武士道なのかもしれない。
こういう本当に実力のある人が脇を固めてると、主役も監督も心強いでしょうね。
たまきは、あと、飛源 役の 池松壮亮がいい、と思いました。
彼は「第30回サターン賞では若手俳優賞にノミネートされた。 」
とあるから、やはりその評価は高かったんですね。
監督も解説で、まだ子役だった（当時12〜3歳？）彼について、
「正直言って、日本人俳優に、これほど高い質の演技ができるとは期待していなかった。」
と言ってました。
日本人は、相当ひどい演技をする、という世界的な見方があるようで、ちょっと
「あら、そう・・」という感じでしたが。
監督はまた、
「日本人の、よく言えば平面的な、そして時に漫画的な演技、というイメージを、
この映画で渡辺謙は覆し、まったく違うイメージを世界に示すことができた、と思うよ」とも言ってた。
監督も驚いてるくらいだから、その評価の低かった日本人をこんなに大勢使った映画を作るって、大きなリスク、と感じなかったのかな？
と思いますけど、戦闘シーンの大勢のエキストラは、銃の扱いに慣れている韓国人や日系アメリカ人を使うつもりだったけど、トムクルーズその他の人の反対で、
日本から500名の日本人をニュージーランドに呼び集めて撮影したそうです。
撮影にあたって、軍隊さながらの特訓を受けたそうですけど、「彼らのやる気の旺盛さには驚いた」
ということです。戦闘シーンなんか、野外撮影がほとんだし、危険だし、実際けが人も出てるし、雨で撮影が延期になったり、リハーサル、取り直しも多いし、出番待ちの時間も長かったり、と、かなり過酷なんですね。
だけど彼らはよくやっていた、と言ってました。
トムクルーズはこの映画の制作もやっていますけど、この人、日本贔屓なのかな？
と思いました。
監督が素晴らしかった。
と言うか、一人じゃなくて、エドワード・ズウィック曰く、監督が二人いたので（名前は忘れましたけど）安心できた、と言ってたし、実際、もう一人の監督が手掛けたシーン、というのもあったようです。
解説で、めちゃ細かく撮影の仕方を説明してますけど、監督の周囲に、才能のある人達が大勢いて、彼らの努力に負うところが大きいようですね。
戦闘シーンはずば抜けて素晴らしく、つい最近「トロイ」を観て「これはすごい」と書いたばかりでしたけど、「これはトロイ以上じゃない？」と心の中で叫んだほど、目を見張るばかりの壮麗さ、美しさ、見事さです。
特に、最後に3回戦闘シーンがあるのだけど、その一番最後の戦闘シーンは、「観なさい、このカメラワーク！」と思わず叫ぶほどだった。
横一列に並んだ人馬一体の旧侍軍団を、ほぼ真横から、やや低めのアングルでカメラがとらえてる。渡辺謙演じる勝元が合図の棒を振ると、一斉にゆっくりと走り出し、それからフルスピードになるんだけど、最初はスローモーションの映像なのです。一瞬後には通常の映像に戻るんだけど、猛烈なスピードで走ってる。
全員、悪鬼のごとき表情で、剣を片手に高々と掲げて敵に向かっていくんですね。
それにハンス・ジマーの、哀愁を帯びた音楽が重なり、観る人の胸をわしづかみにしてしまう。息を止めて見入ってしまう。
でも監督にしてみると、トムクルーズや渡辺謙、真田広之といった大スターが馬で
全力疾走し、実際に相手にぶつかっていくのは、大変なリスクがあって、心臓が縮んだ、と言ってましたよ。怪我をされると一大事だから、疾走する場面は普通、スタントマンがやるそうなんですけど、トムもみんな、自分でやる、と言った、ということで結果的には大成功でしたね。
監督は、このシーンだったか、戦場シーンで、黒澤明の「七人の侍」を思い出した、と言ってました。
「それ、たまきも思ったよ！」と心の中で言っちゃった。
戦闘シーンを観ると、ほんと、「七人の侍」を思い出します。
ほとんどの、時代映画の闘いのシーンでは、あの映画を彷彿としますね。
クロサワは偉大です。
彼が考案して始めた多くの撮影技術が、世界中の監督に多大な影響を与え、今も
インスピレーションを与え続けている、彼以来、映画の作り方は変わったのだ、と
思わずにいられない。
エドワード・ズウィックって、「ブラッドダイヤモンド」の監督もした人で、大変な才能だ、と思うんだけど、この映画では賞を取ってないですね。
忍者のシーンがおかしい、と日本人俳優達に反対されたけど、どうしても忍者を出したかった、と本人が言ってました。
まあ実際、忍者はああいう現れ方、闘い方はしなかったらしいからね。
それがわかってても、話の流れから、ああいう使い方をするしかなかったのでしょう。そこを減点されたかな？
忍者は世界的に、大変人気が高いそうなので、観客はそれを観られるだけでも喜ぶから使ったのかもしれません。
それでも、この忍者との格闘シーンは、めっちゃ盛り上がってかっこいいですよ。
オールグレンがこの家族に溶け込むきっかけとなった、重要なシーンでもあるし。
たまきはマジックツリーハウスのファクト版、「Ninjas and Samurai」を読みましたけど、忍者は本当は、ああいう黒装束をするわけではないらしいです。
彼らが「透明人間」のような人達だった本当の理由は、その時々で、農民や商人、その他様々な人々に化けて、警備の目をくらますことに長けていたから、らしい。
長時間水の中や屋根の上、岩陰などに潜伏して要人を暗殺していた、というのは本当の話。
身体的な能力、武器の扱い、火薬や劇薬の扱い、その他、あらゆることに優れていたし精通していた、非常に能力の高い戦闘集団だったことは確かなんですね。
メアリーオズボーンはアメリカ人なのに、たまきはサムライや忍者について、彼女の本で多くを学びましたよ。とほほ・・・
侍については、この本によって認識を新たにしました。
正直言って、日本人がこんなにあらゆる点で優れた人たちだった、とは知らなかったんです。
外国人の目で見るからこそ、わかることなのかもしれませんね。
まず、武具ーー鎧兜からして、西洋のものよりも、数倍？もっと？優れている、とオズボーンは書いてます。
騎士の時代のイギリスなどの鎧兜は、兜だけで4〜5歳の子供くらいの重さがあり、更に鎧を着ると、重みでまず走れない。かろうじて歩くことはできる、という状態になったそうです。それで戦うなんてできるの？という感じ。
馬が可愛そうですよね。
そんな重いのが乗っかってきて、全力疾走したり敵とぶつかり、倒れ・・・・
たまきが馬なら逃げます。
馬って、蹄だけで立って、走ってるんですって。
蹄って爪ですよ。人間で言うと、両手の指1本づつと、足の親指だけで立ってるようなものらしい。全身これ筋肉でできてるからこんなことが可能なのです。
日本の鎧兜はそれより数十倍軽く、しかも防具としての機能にも優れていて、着る人が自由に動けるようにデザインされている、ということです。
んまあ・・・日本人がアメリカ人に教えてもらっちゃってます。
そして剣。
これがすごいんです。
刀職人は、1本の刀を作るのに、まず断食をしてから祈りを捧げ、白い装束に身を包んで、1か月かかって作った、と書いてあります。
固いハンマーと柔らかいハンマーを使って、二人で交互に刀を叩いて、細く滑らかにする。
それを繰り返し、結果的に数千の層から成る刀が出来上がる。
中心部は曲げても折れないほど柔らかく、次第に固い層になり、表面部は切れ味を
保つ為に、とてつもなく固くできている、と。
こんな剣は世界に類がない、ということです。
刀身に作り手の名を刻んでできあがり。
大変高価な代物で、武家では、一度手に入れた剣を、何代にもわたって家宝とするのだそうです。
私たち日本人なのに、こういうこと、よく知らなかったでしょ？
アメリカ人でも、日本のことをよく調べてる人は、日本人よりはるかに詳しいですよ。
詳しい、と言えば、この映画を作った人達、特に脚本を書いた人達は、まさにそうで、日本人がよくわかっていない、「武士道」の意味を奥まで極めよう、としてこの映画を作ってるようです。
監督はアイヴァン・モリスの『高貴なる敗北 日本史の悲劇の英雄たち』の＜第9章.西郷隆盛伝＞に影響を受けて脚本を書いていて、そのモリスは三島由紀夫の友人で、三島作品の翻訳者でもある、ということです。
その三島は、西郷のことを「不思議な反知性主義と行動主義によって貫かれた」
と言ってるんですね。
映画の冒頭で、古事記の一説にある、「イザナミとイザナギの神が剣で、日本の国土を生成したと信じている人々の住む国」と日本のことを紹介してます。
神話に過ぎないけど、なるほど、日本列島は、剣のような形をしてますね。
どこの国でもそうだけど、昔は武力を持った人達がその国を支配していて、身分が高かった。
たまきは、昔からそれがどういうことなのかよくわからなくて、「蛮勇に優れた人たちが権力を持って、身分が高いってことになっただけでしょ？」
と考えてました。
大昔のことを考えると、食べ物を採る為に、つまり狩りの道具として、また仕留めた獲物を料理するために石を棒状にしたものが使われて、それが人類最初の武器だったわけでしょ？
それが、時代が進むにつれて、人間同士が殺しあう道具に変わってしまった、と。
農耕が始まってから、貧富の差が生まれ、住む土地も定着型になり、豊かな土壌に住む集団とそうではない集団ができ、収穫の少ない土地の人達が、隣の豊穣な地域を襲って食べ物を得る、というようなことが、人間同士が殺し合うようになったきっかけだのでしょうか？
そして次第に、武力を持つ者が一つの集団、一つの地域を支配するようになっていった、と。
だから始まりは、蛮勇に優れた人達が権力を得たのだと思うけど、その後興味深い変化が起きるんですね。
権力を持つと、農耕や狩り、果ては日常の家事に至るまで、人にさせることができるようになる。
そして時間に余裕ができる。
芸術に親しんだり武術を磨くことなど、通常の「労働者」ではこの時代にできなかったことができた。
しかも富と権力に物を言わせ、村一番、町一番の美女を妻にしたり、頭脳優秀な人材を手に入れることもできた。
そうして代を重ねるうちに、いわゆる「貴族」層ができていったのですね。
優秀で美形、しかも学問も収めている、教養のある人たち。
これは、いい面と悪い面があるように思います。
身分差を生んだ、と言う意味では悪い。
でもこういう特権階級の人達がいたからこそ、学問や芸術が発達し、政治経済の流れも作ることができた。
つまり時代を作り、文化を作り、国を建設、更には、他国からの侵略を防ぐ為、国を統一化する、ということまで最終的にはやったのが、日本で言うなら「武士階級」ですね。
武力が全てに物を言っていた時代には、農耕と狩りだけしているわけにいかなかった。武力でその地域を守る人達が必要だった。
それが権力につながり、特権階級ができたおかげで、学問や芸術、建設技術など、あらゆる知性の世界は築かれたのでしょう。
貴族階級の果たした、いい面と悪い面ですね。
彼らは「被支配階級」と貧富の差を生んだ。
その代わり、「労働者階級」にはできない、知的に高度な思考を持つことができた。暇と権力があったおかげで。
昔の日本の人々は、武士階級と言えども、ごく一部を除いて、非常に貧しかったらしいです。
ただ、彼らには、自分たちが日本を作っている、守っている、という自尊心に支えられ、非常に厳しい「武士精神」にも耐えたのですね。
武士は食わねど高楊枝。
武士たるもの、腹が減ろうが、何が足りなかろうが不平を言ってはいけない。
武士は主君に命を捧げ、いつでも命を捨てる覚悟があること。
少しでも失敗をしたら、切腹して責任を取ること。
名誉が全てで、戦場で死ぬことが最高の栄誉、と考える。
だけどその階級制が、明治維新によって崩壊し、日本は完全に変わってしまった。
日本の歴史以来、こんなにも大きくこの国が変化した時代はなかった。
「不平士族」と呼ばれる元武士、反乱分子は、その時代の流れについていけなかった、時代から取り残された「絶滅種」、恐竜のようなものなのだ、とたまきは長い間考えてました。
そしてついてにわかったのです！
日本の、時代の流れに逆らおうとした武士階級、英雄と呼ばれる彼らの果たした、
大きな役割が。
この結論に至るまでに4日かかりました。
映画の中でも、誰かが言ってましたけど、西洋列強に完全に支配されることがなかったのは、アジアの国では唯一日本だけなのですね。
勝元が、西洋化に夢中になって、本人が西洋人であるかのように振る舞っている大村に「他国に身を売った売国奴」というようなことを言ってました。
たまきが気付いた重要な点は、日本は、西洋の文化、物質的な長所、良質な物品や
身分制度廃止、その他、政治形態や軍隊組織を見習うなどのことは積極的に取り入れるが、侵略される、支配されるという結果にならないように、細心の注意を払っていたのですね。
貿易の交渉など、すごいです、日本人は。
アメリカ大使だった、と思うんですけど、彼の書いた貿易条約？を日本人の交渉に当たった人（名前忘れました）に、3回書き直しさせられた、4回目の草案でようやく交渉が成った、と嘆いたそうです。
アメリカ側は圧倒的な武力があったのだから、それをはねつけて一方的に自分たちに都合のいい条約を結ぶこともできたかもしれないけど、それを粘りと、鬼気迫るような気迫で、日本側は跳ね返したのですね。
武士ですね〜。
これが武士階級の人なのですよ。
簡単には折れません。屈服しません。
何故？どこから来るの、その強さは？
というと、彼らはいつでも、「失敗したら切腹して責任を取る」という覚悟があるから。
それこそ切れ味鋭い日本刀を自分の腹に当てるようにして、列強相手に交渉に臨むので、その気迫に押されて、3回も書き直しをするのですね。
それに、多くの不平士族の反乱で、彼らの戦いぶりがいかにすさまじいか、その覚悟がいかに鬼気迫り、誇りに満ちているか、詳しく見聞きしていたことも、その原因だろう、と思います。
日本人だけは、他のアジアの国々のようにはいかない、うまく懐柔して、半ば属国化する、支配するなんて、到底できない、ということを、列強諸国は武士階級の人達を見てひしひしと感じたことでしょう。
恐ろしかったのですよ、ある意味。
（パート�兇悗搬海�ます）
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