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2018年12月01日18:08

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原発雑考第365号   原子力 この1年   FITの生殺し・・など

原発雑考第365号の転載です。



2018・ 12・5
発行 田中良明
転載自由
連絡先 豊橋市富士見台二丁目12-8 E-Mail tnk24@tees.jp


原子力 この1年

 今年は4基の原発(大飯3,4号、玄海3,4号)が再稼働し、再稼働した原発は全部で9基になった。11月末時点ではこのうち2基が停止しており、稼働中は7基である。このように再稼働は徐々に進んでいるが、原子力利用全体を見れば、混迷がさらに深まった1年だった。
 政府の公式の方針は原発依存の可能な限りの低減である。しかしその方針が具体化されることはなく、逆に原発を可能な限り推進したいというのが本音である。しかし原発依存の可能な限りの低減を言明せざるを得なかった状況(原発への強い逆風)は依然として存在し、新設原発の発電コストが再エネ発電のコストに太刀打ちできないことが明白になるなど、原発推進にとって状況はいっそう厳しくなっている。
 その矛盾が反映されたのが、今年7月に決定された新しいエネルギー基本計画である。そこでは2030年の電源構成として原発20〜22%という大きな数字が掲げられたが、この数字を達成するのに不可欠の原発新設については一切言及されなかった。世論の反発や電力会社の消極姿勢などによって、新設を謳うことができなかったのである。
 高速増殖炉もんじゅが廃炉になって致命傷を負ったプルトニウム利用政策を転換することができず、高レベル放射性廃棄物処理も本質的な前進が見られないまま漂流している。原発新設には不可欠の原発事故賠償制度の抜本改正は見送られ、原発輸出も停滞したままである。日本の原子力政策は完全に方向性を見失い、破綻が明白な既定方針を惰性的に進めている(あるいは進める振りをしている)だけという悲惨な状態に陥っている。
 今年はまた、頻繁かつ長期間停止するので十分なバックアップ電源を確保しておかねば電力供給不足を招く危険性があること(北電のブラックアウト)、出力調整できないので他の電源に犠牲を強いることになること(九電の再エネ発電出力抑制)など、電源としての原発の重大な弱点も明らかになった。


FITの生殺し

 秋以降に再エネ発電と固定価格買い取り制度(FIT)の根幹にかかわる2つの動きがあった。
 まず、九州電力が数度にわたって低需要の時間帯での電力需給調整のために一部の太陽光発電と風力発電の出力抑制(稼働停止)を求めた。
 出力抑制を行った時点で九電は原発4基を稼働していた。原発は安全確保のため出力調整は行われない。さらに原発は1基の出力が大きく、停止・再稼働には時間がかかりリスクも伴うので、需給調整のために運転・停止を繰り返すこともできない。
 原発は使い勝手の悪い硬直的電源で、原発を稼働させると需給調整はその他の電源で行うほかないのである。その結果としての再エネ発電の出力抑制は、再エネ発電事業の採算性を不透明にし、普及を阻害することになる。「原発は止めることができないので、やむをえず太陽光発電と風力発電を止めることになった」というのであれば、それによる再エネ発電事業者の損失を補償すべきである。しかしそれはなされていない。原発を優先し、その使い勝手の悪さを再エネ発電にしわ寄せしただけであることは明白だ。
 再エネ発電事業の安定性を保障することで再エネ発電の普及を図るというFITの趣旨からすれば、再エネ発電こそ優先されるべき(それが難しい場合は、補償されるべき)であるのに、日本ではそうなっていないのである。
 つぎに、経産省が将来における太陽光発電の買い取り価格の計画的な引き下げを発表した。
 日本の太陽光発電の買い取り価格は、買い取り条件が似通っていて諸外国との比較が可能な設備容量10〜2000kWのクラスについては、買い取りが始まった2012年には40円/kWhで、それが18年には18円/kWhにまで下がった。それでもまだ再エネ発電先進国より高いのは事実で、経産省はこれを22〜24年までに8.5円/kWhにまで下げることにしたというのである。
 FITでは発電コストの低下に連動して買い取り価格が下がる仕組みになっている。日本の太陽光発電の発電コストが高いのは、設備・部材および設置費用が高いことが主な原因である。買い取り価格を引き下げたいのであれば、これらの高コスト要因の除去に努力すべきである。発電コストの低下と切り離して計画的に買い取り価格を引き下げるのはFITの趣旨に外れるし、そのようなことが実行されれば、太陽光発電事業の採算性が悪化し、再エネ発電の普及が妨げられることになるだろう。
  FITのもとでは、買い取り価格と電力の市場価格との差額がFIT賦課金として電気料金に転嫁されるので、電気料金はいったん上昇する。しかし再エネ発電のコスト低下と、脱温暖化コストの付加による火力発電のコスト上昇によって、この差額は小さくなり、いずれゼロになり、さらにはマイナス(買い取り価格<市場価格)になる。そうなれば再エネ発電促進のためのFITは不要になるが、市場価格より安くても固定価格で無制限に購入して貰えることをメリットと考える小規模事業者(住宅に太陽光発電施設を設置する市民など)のために新型のFITが設けられ、市場価格との逆差額分だけ一般の電気料金が引き下げられることになるかもしれない。
 また、FITを起爆剤にして再エネ発電100%が達成されれば、その社会はエネルギー問題(エネルギー調達の困難、およびエネルギー調達と使用にかかわって生じる環境的・社会的・政治的な悪作用の発生)からほとんど解放されることになるという甚大なメリットを享受することになる。
 経産省はこういう長期的、全体的な展望を示さずに、目先の電気料金の上昇だけを問題にしている。しかも電気料金がいつまで・どこまで上がるのか、そうなれば経済と国民生活に具体的にどれほどの悪影響があるのかについて十分な説明をしていない。
 以上に紹介した2つの動きは、日本ではFITを本来の趣旨に即して運用しようという意思が乏しいことを示している。その結果としてFITは生殺しの状態に陥ろうとしている。
 今年決まった新しいエネルギー基本計画では、2030年の再エネ発電の比率は22〜24%になっている。ところがすでに今年4〜6月の再エネ発電の比率は23%であり、30年の目標値に達している。したがって皮肉な言い方をすれば、エネルギー基本計画に忠実であるためには再エネ発電のこれ以上の増大は抑制されねばならず、再エネ発電の普及促進を目的とするFITは生殺しにすべきであり、九電や経産省の動きは筋が通っているということになる。
 もちろんこんな言い分は、エネルギー基本計画の30年目標が妥当であってはじめて通用する。しかし、2050年までに温室効果ガス80%削減という必達の目標(政府が繰り返し約束したという意味でも、脱温暖化には最低限必要という意味でも)の達成をエネルギー基本計画の30年目標の延長線上に描くことは、温室効果ガス80%削減には電力については再エネ発電100%化が必須であること一つをとってみても、まったく不可能である。
 30年目標は未来に繋がっていないのであり、それに乗っかってFITを生殺しにすることは、未来を生殺しすることに繋がる。


雑 記 帳

 サクラの狂い咲きが話題になった。サクラはよく狂い咲きする樹だが、今年は並外れて多かったようだ。原因は明らかで、9月末の台風による強風と塩害で葉が枯れ落ちた後に暖かな日が続いたことである。落葉した後に暖かくなったので、春が来たと樹が錯覚したのである。
 狂い咲きしたのはサクラだけではない。わが家ではマンサクが盛大に狂い咲きし、新葉もたくさん出た。春の開花に影響しないかと心配になるほどだった。サルスベリも、開花シーズンが終わったばかりだったのでさすがに花は咲かなかったが、新葉がたくさん出た。

 11月中頃のある日、団地のなかを歩いていると、道端の家の庭から道路に突き出た植木の小枝に突然鳥が止まった。目の前1メートルほどのところである。背の羽根の鮮やかな黒さに一瞬目を奪われたが、腹が明るい茶色で、大きな白い斑点が2つあったから、ジョウビタキにちがいない。すぐそばに人間がいたことに驚いたのか、つぎの瞬間に飛び去った。
 その数日後から自宅の庭にジョウビタキがやって来るようになった。ジョウビタキは私が住む辺りでは代表的な冬鳥である。
 近くの万場調整池の水面にはカモが群れて浮かぶようになった。
 11月は暖かな日が続いたが、季節は着実に冬に向かっている。

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