上映終了と知り駆け込み鑑賞。
●ムタフカズ
【物語】
アンジェリーノ（通称リノ）は全身真っ黒の「人とは違う」若者。治安も空気も交通の便も何もかも悪いダーク・ミート・シティで、職を転々としながら安アパートでガイコツ頭の友人・ヴィンスと自堕落に生きていた。
ある日リノは町で美少女と出会う。同時に事故を起こしてピザ屋をクビになり、事故の後遺症か幻覚を見るようになる。人の影が悪魔のような形に見える。戸惑うリノの背後には、謎の黒服たちが迫っていた…。
【コミカルバイオレンス逃亡劇】
スタジオ４℃最新作。思えば「マインドゲーム」やら「鉄コン筋クリート」などエモい先鋭的なアニメ作品が多い会社だが、それらのスタッフが関わったとあって異質な空気が漂う作品。綿密に描き込まれたスラム街、ヌルヌル動いて流血も嘔吐もありのままに描くキャラ作画、どう見てもイレギュラーな存在（等身が違う、友達のガイコツはなぜか頭が燃えている）なリノ一行へのツッコミ不在の展開と、何一つ説明されないまま見切り発車のごとく突き進むシナリオ。
ストーリー自体は環境汚染だの、暗躍する謎の組織だの、異能に覚醒する主人公などシンプルにまとめられてはいるが、そこに説明しきれない設定やキャラが次々と投入されるので、全てに説明を求めるタイプの人だとリタイア必須。カラーギャングの抗争はまだしも、いきなり第３勢力として殴り込みをかける覆面レスラー団体が、まさか古代アステカの戦士の末裔とかパンフ見るまで分かんなかったよ！
そんな右も左もわからず、ついでに自分の力の正体すら分からないリノが、戸惑いつつも自分の生存本能にしたがい、重装備した謎の警察相手にひたすら逃げ回る展開は理屈抜きのダイナミックさ。ちょこまかと飛び回り鈍器で殴る！ そして敵の敵はやっぱり敵と周囲で激戦化する敵勢力と、勝手に芽生える個々の因縁！ 鉄コンで観たやつ！
そしてマインドゲームや鉄コン同様、普通のアニメにはしたくないのかキャスト陣は声優を極力避けたいわゆるタレント声優が集結。そこまでひどくないけど、やっぱり平坦な草��君の演技は慣れるしかない。あとレスラー軍団が全てモノホンの格闘家なのはいっそ清々しい。TVスペシャルの餓狼伝説や劇場版スト�兇砲弔鼎�「格闘家役は格闘家が声を当てます」という謎の風習は今も紡がれる！
と、全体的に異様な雰囲気とオシャレなビジュアル、勢いのあるバイオレンスで軽快に楽しめる本作だが、後半の盛り上がりはいま一つというか、広げた風呂敷を畳み切れない感があってやや消化不良。あと個人的にどストライクのヒロイン・ルナ嬢の出番が少なめだったのもちょい残念。全体のワチャワチャ感とアンジェリーナの物語が別々で動いていたので、もう少し繋がりが欲しかったところか。
【まとめ】
「考えるんじゃない、感じるんだ」が炸裂するスタジオ４℃節は健在。ニッチでマニアックな題材ながらも、有名人キャストなどでちゃんと日の目を浴びて良かったなーと。定期的にこういう作品は出続けてほしいし、やっぱり観たいと再認識させられる一品。
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