無能な上司

「ダメな人」と決めつける前にできること
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上司、管理職、あるいは担任教師が、最も戒めるべきことがこれです。
　
部下、あるいは生徒を一つの側面だけで「できる奴・できない奴」
　
と区分けして評価を下すのは、無能な上司・管理職、無能な教師の特徴です。
　
若い頃から恥ずかしい失敗を繰り返し、痛い目に遭ってきて知りました。
　
「どこにも取り柄のない人間」など、誰一人としていないことに。
　
　
卒業以来長く高校教員をしてきましたが、同僚（特に女性教師）が、
　
勉強のできる子を評価し、できない子を無視する姿を見て、
　
「ひどいな」と思っていました。
　
４３年間のうちで１０回（つまり３０年間）クラス担任をしましたが、
　
勉強が苦手な奴、粗暴な奴、すぐに突っかかってくる奴に、
　
優等生にはない優しさを目撃することがしばしばでした。
　
　
例えば、１年生の春にタバコで挙げられてから、
　
何かにつけて生活指導部に睨まれているＴという男子生徒が、
　
密かに対人恐怖症で友だちもいない生徒の面倒を見ていたこと、
　
幼い頃から継母のひどい虐待を受けて育ってきたことを知って、
　
ソイツの人間としての値打ちを知った僕が、
　
「オマエ、エエとこあるやないか」と言うと、露骨に嫌な顔をしました。
　
　
荒れた学校でしたが、新任で３年生のクラス担任を押し付けられ、
　
それから一貫して「成績や素行」で生徒を判断しないと決めました。
　
何事によらず、少々の不始末は笑い飛ばす担任に驚いた様子で、
　
奇妙なことに１学期を過ぎるあたりから、
　
評判の悪かったクラスの態度が妙に素直になって来たじゃありませんか。
　
　
相変わらず遅刻は学年トップでしたが、欠席が少ないのが特徴でした。
　
つまり生徒は、学校に来ることが楽しかったようなのですな。
　
　
特に4回目の担任をしていた８５年の１０月、
　
普通なら風邪をひくはずのない頑健な連中の母親から
　
「熱出して寝てますから、今日は休ませます」と連絡がありました。
　
これにはピンときましたね。
　
　
次の日、５人が揃って元気に来たのを見て、
　
「どや、甲子園で風邪は治ったか？」と訊くと、ビックリして絶句していました。
　
　
ワル連中の心を掴んでいたせいか、うちのクラスには苛めはありませんでした。
　
僕が勝手にそう思ってるのじゃありませんよ。
　
同窓会で顔を合したときに僕が訊くと、みんな顔を見合わせて、
　
「そういうたら、うちのクラスで苛めはなかったなぁ」と言いましたから。
　
そして、男女ともに異口同音に口にするのは、
　
「もういっぺんあのクラスに戻れたら、オレら絶対に勉強するけどなぁ」でした。