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2018年06月30日08:22

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新條まゆ著『覇王♥愛人』〜シンデレラ物語、でも永遠に幸せとはいかない

全9巻完結

母子家庭で、病弱な母と双子の幼い弟たちを支えて暮らす女子高生、来実(くるみ)が、バイト帰りに青年、黒龍と会い、ケガの手当てをした。その黒龍に手当の礼に香港に連れていかれ、一緒に暮らすようになる。黒龍は香港マフィアの大ボスだということは後から知った。香港の裏社会で生きるために教育されてきたし、本人の生まれ持った気性も人の上に立つのに合っていたのだろう。立場上、いろいろな人と付き合いがあり、女性にも困らないのに、彼にとって来実が初恋の相手だった。

香港マフィアが日本にいるのは、仕事での一時滞在だと分かるとしても、何で日本語が話せるのか、海外に出たことがなかった来実がなぜ香港でまわりと意思の疎通ができるのか・・・ツッコミたい部分も多々ある。けれどもマフィアと普通の高校生の恋物語、ケタはずれのお金持ちであるマフィアが王子様のシンデレラ物語だからあまり気にしないでおこう。

新條作品らしくジェットコースタードラマのごとく展開が早くて、Hなシーンもバンバン入っている。男性側がスーパーマンみたいにカッコいい。勉強も仕事もできて大人っぽい。黒龍が来実と同じ17歳、高校2年生だと知ったときは、びっくりした。闇社会を牛耳るだけあって大人びている。

思春期の恋だが、ふたりが始終ラブラブではない。まずは、黒龍がマフィアのボスと知って、来実が黒龍を怖がる。目の前で人を殺されたら、やっぱり怖いだろう。次に、取り巻きだった女性たちが出てくる。闇世界のボスだし、見てくれもハンサムだから、いろんな女性とも交渉がある。大会社の令嬢やら仕事がらみで近寄ってくる芸能人やら・・・けれども、本気で好きになったのは来実が初めてという設定だ。だから余計、女性たちの嫉妬をかきたてる。自分の組織の中にも、来実に対していい感情を持たない部下も出てくる。ボスを虜にした嫉妬があれば、好奇心で来実をみていて、本気になってしまった者もいる。もちろん、対抗組織は、黒龍の弱点として来実を放っておかない。いろいろな思惑が重なり、黒龍と来実の感情も絡み合って、通じ合わなくなってしまう。相手のことが、お互いに好きなのに、それを素直に相手に伝えられないのを見ている読者はじれったい。

やっと気持ちが通じあえたと思ったら、黒龍は殺されてしまう。それもズブの素人に。相手が素人だから、油断したというべきか。呆気ない最期だった。シンデレラ物語でハッピーエンドにならない意外な結末だ。結局、来実は短い夢をみていたような感じがする。黒龍が拾ってきた猫、ミルク(来実の反対読み、うまい!)が唯一、夢物語ではなく、黒龍がこの世にいたことを証明するような終わり方だった。苦難を乗り越えて、ハッピーエンド・・・のシンデレラ物語が多いので、ちょっと寂しい気持ちになる。展開がジェットコースターだったからか、黒龍が生き急いだ感もある。


[まとめ買い] 覇王・愛人
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