18940930 NO2425 朝鮮政府部内の対立、大院君一家の改心、警務使李允用の刊削
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駐韓日本公使館記録 5巻 四. 機密諸方往 一 (10) 朝鮮政府部内の対立、大院君一家の改心、警務使李允用の刊削
文書題目 (10) 朝鮮政府部内の対立、大院君一家の改心、警務使李允用の刊削
文書番号 機密第一九一号 本一一四
発信日 明治二十七年九月参十日 ( 1894年 09月 30日 )
発信者 特命全権公使 大鳥圭介
受信者 外務大臣 子爵 陸奧宗光
(10) 朝鮮政府部内の対立、大院君一家の改心、警務使李允用の刊削
機密第一九一号 本一一四
忠清道ノ東学党李�沛哀量�謀(大院君ノ孫)京城ノ警戒ニ関スル事件ハ前便機密第一八九号信ヲ以テ及内報置キ候処去二十七日李�沛飴瓮茱蠧輿核楷吋鵬莠乾淵疋鯀�リ面会シタキニ付翌二十八日来邸ヲ望ム旨申越候得共其所為不敬ニ渉ルヲ以テ翌朝国分書記生ヲ派シ為相断「若シ御用アラバ明日御来館被下度」ト申入レ候処同氏ハ国分ニ向ヒ「近来我国人ニテ大院君一家ト日本公使館ノ間ヲ離間セント企謀シ種々ノ讒言ヲ為スモノアリト聞ケリ其二参ヲ挙クレバ第一余ハ王位ヲ奪ハントノ逆心ヲ懐キ居ルト云フコト第二支那ニ心ヲ傾ケ日本ノ不利ヲ謀リ居ルトノ事第参東学党ト相通シ之ヲ扇動スト云フコト第四外人ヲ引入レ親衛兵ヲ訓錬スト云フコト第五外国人等ト結托シ居ルト云フコト是ナリ然ルニ是等ハ総テ毫モ痕跡ナキ虛伝ニテ余ハ甚タ迷惑セリ其次第ハ云々」ト一々辯疏シタル末更ニ辞ヲ改メ斯ル訳ナレバ何人如何ナルコト申上ケ候トモ決シテ御取上ケ不被下様願ヒタシト申出タル旨帰報有之候然ルニ其朝大院君ヨリ使ヲ派シ本日午後二時頃来訪ス可キニ付酒肴ノ準備アランコトヲ望ム旨申来候ニ付待受ケ候処参時過来館凡参時間余ノ談話中始終諧戱口調ヲ離レザルモ其間ニ辞ヲ改メ近日同君ト当館トノ間ニ離間策ヲ講スルモノアルニ付之ニ惑サレヌ様注意ス可キコト又東学党鎮定ニ付テハ同君先ツ力ヲ尽ス可キニ付我兵ノ派遣ヲ見合ス可キコト並ニ報聘大使ハ本官ノ勧告ニ従ヒ同君一家ノ内ヨリ派遣シ以テ両国ノ益々親睦ニ臻ルヲ図ル可キトノ参件ヲ被相話候ニ付本官ヨリ重テ御一家ノ内ヨリ報聘大使ヲ派遣セラルヽ事ナラハ寧ロ邸下(大院君ノ敬称)ノ孫李�沛飴瓮鮑晃�相成リ候事可然旨勧告候処尚ホ同君ニハ頷ツキ居ラレシカ其夜遂ニ李�沛飴瓮鮗莇縫薀譽織觧歡晶颯魄淵督銘陵�之候同君帰路杉村書記官ノ寓所ニ立寄ラレ「余ハ日本ト協力シテ充分改革ヲ行フ決心ナルニ議員等党派ヲ分チ互相軋轢スルガ為メ改革事業更ニ進マス何卒彼等相協和シテ改革行フ様御尽力アリタシ又我国ニ勧メテ内政ヲ改革セシメ其独立ヲ鞏固ニスルコトハ貴国公使ノ責任ト思考セリ」等ノ談話有之候趣致承知候又翌二十九日午後李�沛飴瓮茱蠖�村書記官外部衙門ニ赴キタル帰路来訪ヲ求メ其日午後本館ヲ来訪此時外部大臣モ来訪シテ前日国分書記生ニ向テ為シタル辯疏ト略同様ノ談話有之候又外務大臣ヨリハ「近年貴我両国ノ間情意相貫徹セザルコト有之為メニ隔意ヲ生シタリ哉ノ疑有之殊ニ大院君ト貴館トノ間ヲ離間セント謀ル者アリシヤニ聞ケリ右ハ無責任ノ輩王命或ハ政府ノ意ト称シ奸策ヲ企ツル者ノ口ヨリ出シモ難計シ依テ今後ハ総理大臣宮内大臣若クハ拙者ヨリ申出タル言ニアラサレハ一切御信用不相成様希望セリ今般李允用ノ責罰セラレタルモ此等ニ因緣セリ」ト申出候ニ付本官ハ「両間隔意ト申サルルコトハ貴方ニテハ如何ニ考ヘラレタルヤ知ラザルモ拙者ニ於テハ初メヨリ毫モ変リタルコトナシ尤モ貴政府ニテ先般外人ヲ引テ兵隊ヲ訓練セラレタル一事ハ少々不快ニ感ジタリ且又李允用氏ハ果シテ如何ナル不都合アリシヤ聞ク所ニ拠レハ同氏ノ所為ハ職掌上当然為ス可キモノヽ如シ左レバ何等ノ名義モナク又取調モ為サスシテ重ナル官員ヲ責罰スルハ不都合ナリ貴政府諸公ハ口ニハ文明的ノ改革ヲ唱ヘナガラ猶ホ依然トシテ野蠻的ノ処罰法ヲ存セラルヽハ如何ナル御趣意ナルカ」ト相語リ候処李�沛飴瓮鷲僖枕膕鬟札鵐肇轡織襯盂位蛎膺奪麓廛螢毒轡魄戰汽轡瓮競螢�
扨又反対派ノ人々ハ数日来形勢漸ク切迫シタルニ付一面ハ各自ノ身辺ヲ警戒シ一面ハ李�沛哀燐〃廛鯏θ�シテ禍根ヲ絶タント欲シ探偵ヲ厳ニシ嫌疑アル者ヲ捕ヘテ取調ヲ為シタルハ却テ其禍ヲ速ナラシムル原因ト為リ去二十八日大院君出門ノ際警務庁ノ巡査ハ新定礼法ニ従テ敬礼ヲ行ヒタリトテ警部巡査数名ヲ拘留シテ杖ヲ加ヘ其夜遂ニ之ヲ名トシテ警務使李允用ノ官位ヲ褫奪シタリ而シテ大院君派ノ称スル所ハ彼等ハ大院君並其孫ヲ日本公使ニ讒訴シ其一家ヲ亡滅セシメント企テタリト云ヘリ此不法ナル処分ハ官吏一般ニ非常ニ恐懼ヲ懐カシメタルニ付本官ハ本日大院君ヲ訪門シテ其不法ヲ咎メタル処同君ハ一時抗論シテ服セザリシカ後漸ク其色ヲ和ケ穩ニ処分ス可キ旨申出テラレ候抑々大院君ノ反対派ト称ス可キ人々ハ機務処議員中重ナル一部ニテ金嘉鎮安駉壽趙羲淵等ヲ主トシ金鶴羽及ヒ李允用等モ同志者ト見做サレ候同氏等ハ議会ト大院君ト衝突ヲ興シタル初メヨリ専門ラ同君ニ目指サレタルヲ悟リ内ハ国王王妃ノ庇蔭ヲ求メ外ハ当館ノ保護ニ依リ大院君ヲ斥ケ以テ彼等ノ運動ヲ自由ナラシメント試ミタルハ同君ヲシテ益々之ヲ憎悪スル念ヲ強メシメタルト被推測候乍去久ク内ニ陰藏シテ発セザリシ軋轢ハ近日ノ小破裂ニテ略其形ヲ顕シタレバ所謂雨降リテ地固ルノ譬喩ノ如ク将来却テ治メ易カル可クト存候畢竟海陸両軍ノ勝利ハ反対派ノ心ヲ強メ而シテ其反動ニ因リ大院君ヲシテ早ク改心セシメ遂ニ此小破裂ニ至リシコトト被推測候
右顛末及内申候也
明治二十七年九月参十日
特命全権公使 大鳥圭介（＊発信）
外務大臣 子爵 陸奧宗光 殿
（＊私訳）
(10) 朝鮮政府部内の対立、大院君一家の改心、警務使李允用の刊削
機密第一九一号 本一一四
忠清道の東学党と李�沛亜淵ぁΕ献絅鵐茱鵝‖膠〃�の孫）の密謀、京城の警戒に関する事件は、前便機密第一八九号信で内報いたしましたが、去る二十七日李�沛飴瓩�ら突然私に画軸（＊掛け軸）などを送ってきて「面会したいので明二十八日ご来邸を望む」と申し越んで来ましたが、その行為が不敬にあたるので翌朝国分書記生を派遣し、
「もし御用があるならば明日御来館頂きたく存じます」
と申し入れましたところ、同氏は国分に向かって
「このところ我が国人で大院君一家と日本公使館との間を離間しようと企て、種々の誹謗中傷をするものがあると聞いている。
その二三を挙げると、第一に私は王位を奪おうとの逆心を抱いているということ、第二に支那に心を傾け日本の不利を謀っているとのこと、第三に東学党と通じてこれを扇動しているということ、第四に外人を引き入れ親衛兵を訓錬しているということ、第五に外国人などと結託しているということ、などである。
しかしながらこれらはすべて少しも証拠のない虚報であって、私は甚だ迷惑している。
と言うのは云々」
と一々弁解したあと、さらに言葉を改め、
「このようなわけなのでだれがどんな事を申し上げましても決して御取り上げ下さらないよう願いたい。」
と申し出たとの報告がありました。
ところがその朝大院君から使いが派遣され
「本日午後二時頃訪問するつもりなので酒肴の準備をお願いしたい。」
と申し越しましたので待ち受けておりましたところ、三時過に来館、およそ三時間余りの談話中、始終冗談の口調であったが、その間に言葉を改め、
・最近大院君と日本公使館との間に離間策を講ずるものがあるので、これに惑わされないように注意すべきこと、
・また東学党鎮定については、同君が先ず尽力すべきことなので、我が兵の派遣を見合わせてほしいこと
・ならびに報聘大使は、私の勧告に従い、同君一家のなかから派遣し、以って両国の益々親睦に至ることを企図すべきである
との三件を話されましたので、本官より
「重ねて御一家のうちより報聘大使を派遣される事であればむしろ邸下(大院君の敬称)の孫、李�沛飴瓩鯒標�頂くことがよいでしょう。」
と勧告しましたところ、なお同君はうなずいておられたが、その夜ついに李�沛飴瓩之萃蠅靴燭板晶颪把銘里�ありました。
大院君は帰路杉村書記官の自宅に立ち寄られ、
「私は日本と協力して改革ヲ十分に行う決心であるが、議員等が党派を分かって相互に対立抗争をするので改革事業は一向に進まない。
なにとぞ彼等が相協和して改革を行うよう御尽力いただきたい。
また我が国勧めて内政を改革させ、その独立を鞏固にすることは、貴国公使の責任と考えている。」
などの談話がありまして其の要望は理解致しました。
また翌二十九日午後、李�沛飴瓩茲蠖�村書記官に外部衙門に赴いた帰路に帰路来訪を求め、その日午後本館を来訪、この時外部大臣も来訪して前日国分書記生に向かって行った言い訳とほぼ同様の談話がありました。
また外務大臣からは、
「近年貴我両国の間に情意が互いに貫徹しないことがあったために隔意を生じたかのという疑いがあり、ことに大院君と貴館との間を離間しようとするものがあったとか聞いている。
これは無責任な人物で、王命あるいは政府の意思と称して悪だくみを企てる者の口から出たものかもしれない。
よって今後は総理大臣、宮内大臣あるいは私から申し出た言葉でなければ、一切御信用にならないよう希望している。
最近李允用（イユンヨン 大院君の女婿）の責任を問い罰せられたのもこれらに原因がある。」
と申し出ましたので、私は
「大院君と当館の隔意と申されることは貴方のほうではどのように考えられているのかはしりませんが、私においては初めから少しも変った事はない。
もっとも貴政府のほうで先般外国人を採用して兵隊を訓練させられたという一事は、少々不快に感じている。
かつまた罰せられた李允用氏にはハ果たしてどのような不都合があったのか。
聴くところによれば、同氏のなしたことは職掌上当然為すべきことであったようだ。
そうすると何らの理由もなく、また取り調べもしないで重要な官員を責罰するのは不都合である。
貴政府の諸公は、口には文明的な改革を唱えながら、それｄもなお依然として野蛮な処罰法を残しておられるのはどういう考えなのか。」
と語りましたところ、李�沛飴瓩呂靴�りに弁解しようとしたが外務大臣はそれを遮った。
さてまた反対派の人々は、この数日形勢が次第に切迫してきたので、一面では各自の身辺を警戒し、また一面は李�沛亜淵ぅ献絅鵐茱鵝砲燐〃廚鯏θ�して禍根を絶とうとし、探偵を厳しくし、疑いのある者を捕えて取り調べを続けているのは、かえってその禍を速ナラシムル原因となり、去る二十八日大院君が屋敷を出る際、警務庁の巡査は新定礼法に従って敬礼を行ったといって、警部巡査数名を拘留して杖を加え、その夜ついにこれを知友として警務使・李允用の官位を剥奪した。
それにたいして大院君派が主張しているところは、彼らは大院君並びにその孫の李�沛阿鯑�本公使に訴え、その一族を滅亡させようと企てているのだと言っている。
この不法な処分は、官吏一般に非常に恐怖心を抱かせたので、私は本日大院君を訪門してその不法を咎めたところ、同君は一時抗論して承服しなかったが、後には次第にその色を和らげ穏やかに処分すべきだと申し出でられました。
そもそも大院君の反対派と称すべき人々は、機務処議員の中の重職の一部であって、金嘉鎮（キムガジン 親日開化派）、安駉壽（アンギョンス）、趙羲淵（チョフイヨン 日本式氏名は大村智三��）らを中心とし、金鶴羽（キムハグ） 及び李允用（イユンヨン 大院君の女婿）なども同志と見なされます。
これらの人物は議会と大院君とが衝突を起こした初めから、専門ら同君ににらまれているのを悟り、内では国王・王妃の庇護を求め、外には当館の保護に頼り、大院君を退けて彼等の動きを自由にしようと試みたのは、同君に益々これらを憎悪する気持ちを強召させたのだと推測されます。
さりながら長い間内部に隠れて表に出て来なかった軋轢は、近日の小破裂でほぼその形を表したので、いわゆる「雨降って地固まる」の比喩のように将来かえって治めやすくなるだろうと存じます。
結局海・陸両軍の勝利は反対派の心を強め、そしてその反動によって大院君を早く改心させ、最終的にこの小破裂に至ったのだろうと推測されます。
以上事件の経過を内申致します。
明治二十七年九月参十日
特命全権公使 大鳥圭介（＊発信）
外務大臣 子爵 陸奧宗光 殿
[別紙]
文書題目 [李允用 などに対する処分 伝��]
伝曰今日大院君行次ノ時守門ノ巡捕祇送ノ際無厳極マレリ当時措飭スル能ハサル所ノ警務使李允用施スニ刊削ノ典ヲ以テ該巡捕法務衙門ニ移送シ律ニ照ラシ厳処セシム
（＊私訳 意味がつかめない。仮に以下のように訳してみた。しかしこの訳では李允用に対する処分とはなっていないから間違いだろうと思う。）
次のように伝えられた。「今日大院君が出かける時、守門の巡捕（総督・巡撫などの地方長官に随行した官吏）がお送りする際に敬意を払うことがなかった。当時命令してたださせることができなかった警務使・李允用（イユンヨン）が法に随いこの巡捕を法務衙門に移送し法律に照らして厳しく対処させた。」
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