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2018年04月22日07:36

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短編ながら秀逸〜肩ごしに投げキッス

*ネタバレあり
こやまゆかり著『肩ごしに投げキッス』 講談社 Kiss Comics

つき合っていた彼に振られた千夏(21歳だっけ?)は、ディスコで年下の中ちゃんと、職場では年上の高村と出会う。高校生の中ちゃんより、大人の高村の方が安定してそう。そりゃそうだろうな。社会人経験のない学生だとどうみても子供に見える。やっぱり社会人のほうがしっかりして見える、というか大人だ。

その高村には、学生時代からの恋人・悦子がいるものの、会話の少ない彼女に、振り回されている感があって、高村は疲れている。そういう時に明るくて、軽そうに見えて本当は軽くない千夏みたいな女の子と出会うとホッとするから、惹かれるよなぁ。出会いのタイミングもばっちりだもの。

1巻目の終わりで、別れ話を切り出した高村に、悦子は高村の子を中絶し、子供ができない体になったことを盾に結婚を迫る。高村が別れ話をしなければ、千夏という存在がなければ、中絶のことを告白するつもりなかったらしいけど、これは悦子のひとりよがりかな。28歳で仕事が面白くて、まだ結婚はしたくなくて・・・という彼女の気持ちはよくわかる。たぶん、男性だってこのくらいの年回りだと、まだ「結婚より仕事」という人は多いはず。女性として気持ちは分かるし、このくらいの年齢だと自分も悦子のような行動をとるとは思うけど、妊娠を相手の男性に伝えず、勝手に中絶するのはルール違反だと、今の自分にはわかる。だって子供はひとりでできるものではない。彼にも知る権利があると思う。中絶はふたりが話し合って出した結論であるべきではないかしら。

高校生だった中ちゃんの成長ぶりが著しい。大学で何が学びたいか分からないから、みんなが行くから自分も大学行く・・・より就職を選んだ。社会人になって、揉まれてしっかりした男性になっていく。相談にのっていた、のってもらっていた同僚の女性になびくことなく(これは女性側もだけど)、千夏に誤解されても言い訳するでもなく、つらい選択をして、荒波のなかに自ら飛び込んでいく。好きだからと、高村の存在に怯えながら千夏と一緒にいるより、ひとりになることを選ぶって辛いだろうに。なぁなぁの関係になって、長引きそうなのにな。中ちゃんの素質がいいんだろうな。だから人としての成長も早いのかもしれない。頼もしい。

途中で、同僚との仲を勘違いされて千夏とうまく行かなくなり、その同僚の女性も不倫相手とうまく行かなくなったとき、そういえば、こういう二人がくっつくという展開の話もあったなぁと思いだし、そう行くのかと思いきや、このふたりはいい友人のままとどまった。

高村と悦子、千夏と中ちゃん、幸せになってほしいな。

コミックの発表は1992-93年。あの頃はまだ、携帯電話はなく、家の固定電話で留守電、公衆電話だった。ディスコのお立ち台とかも懐かしい。時代背景にはちょっとレトロを感じるけど、話の内容自体は全然古くない。ふたりの男の間で揺れる若い女性、不倫と知りながらも一途に相手を愛する女性、恋人を信じてきたものの、長い付き合いの間に彼女を見失いつかれてしまった男性、どんなに努力しても「年下」の壁を越えられない若い男性、妻も恋人も平気で騙せる男性・・・今もどこかで起こっていそうな話だ。

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