mixiユーザー(id:2958687)

2017年07月01日11:30

382 view

6月の読書記録

先月は引越しに伴うあれこれで、何かとバタバタしていたが、それでも何とか5百頁いったか。あと、ナイスも100を超えたということで、まずまずと言った感じか。

2017年6月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:5024ページ
ナイス数:120ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■天使とは何か キューピッド、キリスト、悪魔 (中公新書)
同じ天使という言葉でくくられる「エンジェル」と「キューピッド」に真逆と言っていい程の違いがあるということに驚き。というより、「天使」という概念そのものが、非常に多義的であり、それだけに人々の想像力を刺戟するものであったということを認識。また、キリスト教において、天使は非常に大きな役割を持つものであるのにも拘らず、どこか等閑にされているというのも気になる。つまり、前述のように非常に多義的な存在であるため、扱いが難しいということなのだろう。本書を嚆矢としてキリスト教側からの新たな天使論の展開を期待したい。
読了日:06月30日 著者:岡田 温司
https://bookmeter.com/books/10530149

■待ち望む力: ブロッホ、スピノザ、ヴェイユ、アーレント、マルクスが語る希望
時折首を傾げたくなる記述が散見されるが、概ね興味深く読めた。平易な語り口に促され、ついすいすいと先へと読み進めてしまうが、その内容はかなり深くかつ重いもので、それなりの熟読を要する。昨今の閉塞的で先が見えない時代にあえて「希望」を語るということ。ともすれば、ただの世迷言と受け取られかなねいテーマにあえて真摯に取り組むというその姿勢だけでも評価したい。また取り上げられている思想家が全てユダヤ人であり、何がしかの絶望や無力感を味わったに違いないであろうことを思い合わせると、本書の持つ意味は、一層大きくなる。
読了日:06月29日 著者:的場昭弘
https://bookmeter.com/books/6743219

■パウロ 十字架の使徒 (岩波新書)
言うまでもないことだが、聖書研究及び解釈は様々な制約があるうえ、そこにどうしても研究者の思い込みや主観が入り込んでくるため、非常に微妙な問題を孕んでしまう。本書を読んで、改めてそのことを痛感。恐らく著者なりに様々な研究成果を踏まえ精緻な読み込みをしているのだろうけれど、どうしても「本当にそういう解釈が可能なのか?」とつい素人目線で思ってしまう。だからこそ、本書だけでパウロをわかった気になるのではなく、各々の読者が他の研究所を読み、また聖書を読み込んだ上で、自分なりのパウロ像を作り上げていかねばならない。
読了日:06月26日 著者:青野 太潮
https://bookmeter.com/books/11259434

■お春
意外なことに恐らく初めて読む著者の時代物。著者が日本の古典に通じていることを思えば、かなり不思議。それはともかくとして、読了して一言。「何、これ?」。母親から受け継いだ淫蕩の血のゆえに思わぬトラブルに巻き込まれてしまう主人公お春。それに幕末という時代背景が絡む。そこに何がしかの著者の意向が反映されている筈だが、その点についての言及がないのがもどかしい。それは読者への宿題ということだろうか?半ば唐突に登場するイケメン侍とのエピソードのあっけない幕切れに口あんぐり。ラストでの孫三郎の男前ぶりがお見事だった。
読了日:06月24日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/11059319

■弔いの哲学 (シリーズ 道徳の系譜)
百数十頁にも満たない小部な一冊なのにも拘わらず、内容は深く重く、そして多くの示唆に満ちている。読み進めていく上で「あれ?」と思ったり、納得できなかったりする箇所も散見されるが、「死」とは何か?を考えていくうえで多くの問題提起がなされていることに間違いはない。一つの観念となった「死」に対して、死体が持つリアリティ。普段忘れられがちなこの事柄の乖離について、改めて考えさせられることになった。また、他者の定義を巡る、デリダとレヴィナスの論争はとりわけ興味深く読めたか。今後このテーマはますます重くなっていくはず。
読了日:06月22日 著者:小泉 義之
https://bookmeter.com/books/389526

■見て読んで書いて、死ぬ
ストレート極まりないタイトルにまず惚れる(笑)。ブログで公開していた書評を収めたものだが、後書きにもあるように、洋書も取り上げられているため、最初は若干とっつきにくかったのは否めない。それでも、著者の軽妙で時に挑発的、そして何とも言えないユーモアに引き込まれて読んでいたという塩梅。著者が呪文のように繰り返すマニエリスムなるもののイメージが前より明確になった気がするのが収穫。それと、マイナスのイメージばかりが取沙汰にされがちな人文系学問だが、じつはまだまだ可能性があるという著者の言葉に勇気づけられる。
読了日:06月21日 著者:高山宏
https://bookmeter.com/books/11248210

■ナイルパーチの女子会
読み進めるうちに真綿で首を絞められるような息苦しさを覚えるのに、先が気になって、頁を繰る手を緩めることができない…こんな読書体験はそうそうない。コミュ力…それも特に同性とのそれが欠落した栄利子と翔子。一瞬芽生えたかに見えた二人の友情も、二人が抱えた闇が故、長くは続かない…その関係の崩壊へと至るプロセスが、どうしようもなく痛々しい。特に栄利子の自分への客観性が欠落した言動のイタさは目を覆いたくなるほど。それでも、小説のラストでは、それぞれ新たな道を見出そうとする姿に仄かな希望が伺える。とにかく重い一冊。
読了日:06月18日 著者:柚木 麻子
https://bookmeter.com/books/9370680

■イエスの宗教
内容はともかくとして、従来のキリスト教教義から切り離して、イエス自身がどのような宗教を目論んでいたかを明らかにするという著者の意図は残念ながら成功しているとは言えないのでは?というのが正直なところ。どれだけ、聖書原典を微に入り細に入り読み込んだとしても、結局読み手の主観が入ったイエス像が構築されるだけでは?という気がしてしまう。ただ、そうした各人なりの原点回帰的な読みを実践することによって、新たなイエス像が露になり、それが形骸化した信仰を活性化する契機になるとすれば、それはそれで意義があるといえる。
読了日:06月16日 著者:八木 誠一
https://bookmeter.com/books/292754

■パリの胃袋 (ゾラ・セレクション)
新聞連載という制約のためか、人物造形やストーリー展開にやや難があるが、全体としてはすこぶる面白い。解説にもあるが、様々な描写の巧みさにはとりわけ舌を巻く。まさにその情景が頭に浮かぶような生き生きとした叙述に「自分にはとうていこんな文章は書けないな」と思わされることしきり。それと強烈なのが、本書に登場する女性の狡猾さ、したたかさ。それに比べると男性陣のなんと愚直なまでにお人よしなのか…なかでもサジェ婆さんのキャラクターの強烈さは飛びぬけている。主人公フロランはその女性達の犠牲になったといっていいだろう。
読了日:06月15日 著者:エミール ゾラ
https://bookmeter.com/books/24258

■百年の散歩
著者お得意の言葉遊びを随所にちりばめた、エッセイ風連作小説といえばいいのか。正直、このタイプの作品はやや食傷気味に思っていたのだけれど、本作にはいつになく言葉の切れが感じられて、思いのほか楽しめた。また、時折隠し味程度に触れられる同性愛的エピソードも効いている。それと、何度も言及されながらも、結局その実像が全くと言っていい程明らかにされない「あなた」の存在も、読者に何とも言えない余韻を残す。これは文庫サイズの物を手元に置いて、気が向いたときに拾い読みするのに適したタイプの本ではないかという気がする。
読了日:06月10日 著者:多和田 葉子
https://bookmeter.com/books/11578637

■読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]
他の人も言っていたが、主に本は図書館で借りて読む者にとっては、参考になる、あるいは実行可能な部分はかなり限定されてしまう。ただ、読んだ本の感想を始め、本に関することは全て一つのノートに落とし込むという作業だけでも、使えそうで、今すぐにでもやってみようという気になる。後、一読しただけでは理解できなかったことをノートに整理する習慣を実行しただけでも、本の内容を血肉化する上で、かなり有効だろうし。後、読書メーターのようなサイトをいかに活用するか?という項目があってもいいと思うのだけれど…更なる完全版を望む。
読了日:06月10日 著者:奥野 宣之
https://bookmeter.com/books/7702520

■日本でいちばんイスラームを知っている中田考先生に、灘高で同級の勝谷誠彦が教えてもらった! 日本一わかりやすいイスラーム講座
内容はともかくとして、この表紙はいかがなものか?これでは勝谷氏がバカ代表みたいな誤解を与えてしまう。本書では、講師役である中田氏の説明を補足したり、要約したりと、ただの生徒役以上のことをやっているのに…それはさておき、イスラム講座と銘打っておきながら、前半はテロ事件絡みの話が大半を占め、イスラムの本質に今一つ踏み込んでいないのが残念。後、イスラム教の発祥と宗派へと枝分かれする過程、そしてそこからどうしてテロへと発展するのか?という因果関係が未だにうまいこと理解できない自分の頭の悪さに嫌気がさしてしまう。
読了日:06月08日 著者:勝谷誠彦,中田考
https://bookmeter.com/books/9836190

■悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)
どうして人を殺してはいけないのか?たとえその相手がどれだけ邪悪で、自分自身を損なうものであっても…主人公文宏はその問いを投げかけながらも、自分自身が犯した殺人の意義を全面否定していない。そこの本書に重層的な深みを与えているように思う。終盤、ややご都合主義的な側面が見受けられるが、物語というのは本来そういうものであると思えば、納得がいく。以前の『悪意の〜』に連なる作品ともいえるが、あの作品に登場した祥子を思わせる吉岡恭子の存在が陰惨なエピソードが連なるこの作品に仄かな温かみを与えているように思える。
読了日:06月07日 著者:中村 文則
https://bookmeter.com/books/608170

■王国
謎が謎を呼ぶ…というのは、あまりに陳腐な言い方だが、とにかく主人公が嵌まり込んだ出口のない迷宮は、読む者を形容しがたい不安を与える。幾度となく、窮地に立たされ、何とかその場を切り抜けるも、それでも最終的な解決に至らず、半ば宙ぶらりんの状態で迎える結末。そのラストでの子供とのエピソードは一体何を暗示しているのか?それは読者それぞれが考えるべき問題なのだろう。全てを失ったといいながらも、最後まで生への執着を捨てきれない主人公。その執着を弄ぶ謎の男木崎。その不気味な存在感と言動が読者に強烈な印象を与える。
読了日:06月07日 著者:中村 文則
https://bookmeter.com/books/4189749

■何もかも憂鬱な夜に
先に読んだ『悪意の〜』と同じく、罪を犯した人間は救われるか?がテーマと思われる。常に回想のなかでのみ登場する「あの人」の存在は、恐らく本作品の中で神と同義なのだろう。そう思わされるような絶対性を感じる。後、個人的にとりわけ深い印象を残したのが、絞首刑の実態。刑執行後完全に死ぬまで数分かかるという事実には、「やはり死ぬっていうのは、そうそう簡単にいかないもんなんだな…」と思わざるを得ない。そして、死刑を巡る矛盾と理不尽に満ちた現状は、読者に様々な疑問を投げかける。最後の、十八歳の死刑囚からの手紙は圧巻。
読了日:06月05日 著者:中村 文則
https://bookmeter.com/books/479636

■船出(下) (岩波文庫)
これ程の大作が処女作という時点で、著者の才能がいかに卓抜したものだったかが窺い知れる。レイチェルとテレンスとの恋愛を軸に、叔母ヘレン、テレンスの友人ハーストが微妙かつ複雑に絡んでくる。下巻でもヘレンの美魔女キャラが際立っている。それに比べ、その夫リドリーの存在感の無さが気になるけれど(笑)。後一瞬煙に巻かれるような場面がいくつかあり、これは訳の問題か、自分の読みが浅いのか、それとも著者の意図的にしかけたものか?というのが気になった。幾分すったもんだがあった後の恋愛の顛末に思わず突き放されたような気分に。
読了日:06月04日 著者:ヴァージニア・ウルフ
https://bookmeter.com/books/11600981

■船出(上) (岩波文庫)
幾分粗削りなところ、散漫な所ははあるものの、文豪の処女作はかくあるべきと思わせるものがある。主要な登場人物が若干多めで、ストーリー展開を辿るのが、幾分難儀なのだけれど、それだけの登場人物を描き分けるというの著者の類まれな才能を感じさせる。後、他の人も述べているとおり、処女作であのダロウエイ夫人が登場しているのが驚き。著者はある意味この時点で完成していたのかもしれない。個人的には本作の副主人公ともいえるヘレンが印象的。主人公のメンターでありながら、今でいう美魔女的な要素もあるその存在感は特筆に値するのでは。
読了日:06月03日 著者:ヴァージニア・ウルフ
https://bookmeter.com/books/11452841

■ケアのリアリティ―境界を問いなおす (現代社会研究叢書)
一通り読んだ後目にしたタイトルが、まさに新たなリアリティをもって映ることに驚かされた。「はじめに」で触れられているように、一口にケアといっても、その状況や文脈で様々な意味を持ちうる。そのリアリティを追究したため、本書の内容は必然的に多岐にわたることになる。個人的にとりわけ身につまされたのは、患者の死を体験した看護師を扱った章だったか。一般的にはケアル側と認識されがちな、看護師だが、患者の死と向き合うことによって、少なからず傷つき、しかも従来の慣習から、その悲しみを癒す機会がないという現実は非常に重い。
読了日:06月01日 著者:三井 さよ,鈴木 智之
https://bookmeter.com/books/4716366


▼読書メーター
https://bookmeter.com/

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2017年07月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     

最近の日記

もっと見る