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2017年01月14日05:48

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 【質問】 第二次大戦ハンガリー軍の少数民族出身兵士について教えてください.(下書き)

 【回答】
 21世紀のハンガリーからはちょっと想像し辛いことだが,第一次大戦後のトリアノン条約で解体されるまでは,ハンガリーは多民族国家だった.
 スロヴァキア人,クロアチア人,ルーマニア人,その他様々な少数民族がいた.
 トリアノン条約によって,非マジャル人のほうが多い地域はたいていが独立したり,他国の一部になったりしたが,だからといってきれいさっぱり少数民族がいなくなったわけでは勿論ない.
 加えて,ヒトラー陣営にハンガリーが与すると,ヒトラーは昔はハンガリー領だった地域を一部ハンガリーに戻してくれたので,それら地域の非マジャル人は「新興独立国家の主要民族」から「ハンガリーの少数民族」に逆戻りしたりした.

 第二次大戦が始まると,大して人口が多いわけでもないハンガリーでは,当然のことのように彼ら少数民族も徴兵の対象となった.
 大戦勃発直前,ハンガリー陸軍では一線級師団でさえ多くが基幹人員のみの状態だったので,大幅な増員が必要だった.
 3個軍ある中で,開戦当時の装備最優秀部隊だった第2軍でさえ,20%が少数民族出身兵士となった.

 これは深刻な問題をもたらした.
 彼ら少数民族出身兵士の多くがハンガリー語を話すことができず,一方,ハンガリー人下士官には少数民族言語に精通した者など殆どいなかったので,意思疎通に齟齬を来した.
 また,どこの国でも殆どそうだが,教育は主にその国の主要言語で行われることから,必然的に少数民族は教育でも不利な環境に置かれる.
 よってこれら少数民族出身兵士の教育水準も低く,それは当然ながら兵器操作など様々な場面で悪影響を与えた.

 加えて戦況も悪化の一途.
 そんな環境にあって,兵士達の士気が高くなろうはずがない.
 「名誉ハンガリー人」としてハンガリー軍に属して戦ったロシア人やウクライナ人,ポーランド人などの義勇兵のほうが士気が高かったくらいだ.

 士気の低い彼らを軍は引き締めにかかる.
 すると彼らの中から脱走兵が相次いだ.
 国民意識の薄い人々が,その国家のために命を張ってくれると思うほうが本来おかしいのだが,しかしそんな正論では軍が成り立たない.

 そこでハンガリー軍上層部は,対策をとることにした.
 彼らのとった方法は,「兵士の家族を人質に取る」というものだった.
 すなわち,脱走した兵士がいれば,その兵士の家族に対して,
・従軍手当の即時停止
・拘留
・スラブ系民族出身兵士の脱走者の家族はロシアに強制送還
・財産没収

 これらの措置は,脱走防止に効果があったのか,どうなのか.
 少なくとも,ブダペシュトが包囲されたころには効果が薄くなっていたことは確かだ.
 政府が瓦解し始め,ハンガリー人兵士にさえ脱走者が増えていたからだ.

 戦後,体制が大きく変わった東欧諸国の中にあって,彼ら少数民族「元ハンガリー軍兵士」の運命が気になるところだが,筆者にそれを知るすべはない.

 【参考ページ】
南塚信吾『図説 ハンガリーの歴史』(河出書房新社,2012)
http://napitortenelmiforras.blog.hu/2016/01/07/_a_nemzetisegiek_most_mar_magyarok_csak_eppen_mas_nyelven_beszelnek_nemzetisegiek_a_magyar_kiralyi_h
http://napitortenelmiforras.blog.hu/2016/01/12/_a_magyar_nyelvet_elsajatitani_sem_tudjak_nemzetisegiek_a_magyar_kiralyi_honvedsegben_ii
http://napitortenelmiforras.blog.hu/2016/01/20/_keszen_all_arra_hogy_minden_magyar_erdeket_szabotaljon_nemzetisegiek_a_magyar_kiralyi_honvedsegben_
http://napitortenelmiforras.blog.hu/2016/08/08/_tiszteletbeli_magyarok_ruszki_pista_az_eletmento_lengyel_huszar_es_vaszil_az_idegenlegios
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