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2016年11月19日23:33

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このせか!

映画「この世界の片隅に」観てきました。毎度ながらネタバレ気を付けますが、気になる方は上映館少ないけどはよ観に行きましょう。早速パンフ売り切れてたし。

●公式サイト
http://konosekai.jp

舞台は戦時中の日本で、主人公はおっとりとした性格の少女すずさん。絵を描くのが好きで、集中すると周りが見えなくなるなど、ちょっと内気な面がある。そんな彼女に突然縁談が持ち込まれ、すずさんは特に断ろうともせず流されるまま結婚し、広島の呉(軍港があり、戦時中に重要拠点の一つとして栄えた都市)に住む事となる。そんな彼女の日々変わりゆく日常と生活を描いた物語である。

最初に感じたのはテンポの良さ。上映時間が140分もあるが、長い説明シーンなどはほぼ入らず、人物同士のやりとりが軽妙かつ無駄がない。もっともそのぶん台詞の密度が濃かったり、バリバリの広島弁やら専門用語がポンポン出てくるんだけど、多少はその場の空気でなんとなくわかるから問題はないかと。親族付き合いなどで登場人物も多いけど、基本的にはすずさん身辺の人だけ覚えていればオッケーだし。絵の具を使ったような淡い色合いで塗られた風景とか、活気に溢れた人々の暮らしなど、ただ眺めているだけでも退屈しない。

もう一つ感じたのはシナリオ運びの丁寧さ。劇的なドラマでグイグイ引き込むのではなく、あくまで日常を重ねて、時々大きな事件で「おおっ」と注目させる展開。さっきのテンポの良さに繋がる部分でもあるけど、なんてことのないシーンが後に他のシーンに繋がったり、戦時中~戦後という大きな転換を迎える物語後半で、それがズドンと来る場面もある。ネタバレにならないネタバレで言うと、広島県物産陳列館(後の原爆ドーム)とか座礁した軍艦とか。

そして戦争の話なので人が死ぬ。それは意外な人であったり、全く予期しない時であったりする。その理不尽さやどうしようもできない無力さが、有無を言わさず突きつけられる。

ただ、本作に救いがあるのは、それでもめげずに必死に生きようとする人々の姿が描かれている所だろう。すずさんも度重なる空襲から辛くも生き延び、微かな復興の兆しを見せて物語は幕を閉じる。喜劇も悲劇も乗り越えた末の結末は、ただただ胸を打つのみ。エンドロールで涙腺崩壊。

また、監督が惚れ込んでオファーしたという、すずさん役ののん(元、能年玲奈)さんにも注目したい。あまちゃんでブレイクしつつも事務所のいざこざや改名騒動などを経て、気が付いたら「スライムの被り物した人」になっていたが、本作ではすずさんの一人称視点で語られるため、劇中でも喋るしナレーションでも喋る。そして抑揚を抑えながらも淡々と話す彼女の声が、おっとりしつつも健気なすずさんにピッタリで、監督の人選は間違いなかったと自信をもって言える。タレント声優が〜なんて人も安心してくれ!

そんなこんなで前評判通り面白かった「この世界の片隅に」。当初は上映館も少なかったが、評判に押されてか上映館は少しずつ増えていて、公式ツイッターには有名作家の感想リツイートがズラズラと。ただ題材的にモロ中高年向けなので(じいさんばあさん多かった)、ロングランはちょい難しそうだからやっぱり観れる時にササッと観に行った方がいいぞ!

「君の名は。」とまではいかなくても、監督も売れて再評価されてほしいなあ。「アリーテ姫」も「マイマイ新子」も良いんだ。
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