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2016年10月17日16:28

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ショパンコンクールについての2冊の本を読みました

ショパンコンクールといえば、数あるピアノのコンクールの中でも、最高峰のひとつであり、5年に1度ポーランドのワルシャワで開催されます。他と大きく異なるのは、課題曲が全てショパンという点とです。そして、アルゲリッチ、ポリーニ、ツィメルマンなどの優勝者が出ていることから、権威あるコンクールとして知られています。
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私は2005年と2010年にワルシャワのフィルハーモニーで聴いて、あの緊張感ある雰囲気を実感するとともに、優勝したブレハッチとアヴディーヴァの演奏も聴くことができました。

2015年は残念ながら行けませんでしたが、今年リリースされたショパンコンクールに関する本を2冊読みました。

ムード「ショパンコンクール 最高峰の舞台を読み解く」青柳いづみこ(中公新書)

全体の8割方を、2015年のコンクールをワルシャワで実際に著書が聴いて、それぞれのコンテスタントの演奏についての評価を書いています。ピアニストとしての視点で、かなり詳細に演奏の特徴を書いていて、さすがに「物書きピアニスト」と自称しているプロの聞き方だと感心します。

さすがにピアノ業界の方だけに、審査員との会話やインタビューなどから、審査方法の問題点や今回の結果についても意見を明確に言っています。

とりわけ、ショパンコンクールは、二つの流派の戦いであったとの見方です。まずは、ポーランドvsロシアという構図が長らくあって、それが審査にも影響したという時代がありました。

もうひとつの対立は、「楽譜に忠実派」vs「ロマンティック派」との評価の違い、これが現在でも大きな路線の対立となっているとのこと。とりわけポーランドの審査員は、楽譜に忠実であることを好む傾向が強く、自由な演奏を拒絶するため、評価がわかれるとのこと。

また、フランスのピアニストのフィリップ・アントルモンが審査員にくわわっていましたが、彼は、一人だけ極端に低い点数を付けたり、今回も種々問題があったとのこと。なるほど、そういう問題もやはりあるのですね。

審査員の戦いという視点でも、コンクールの問題を指摘しています。2010年に優勝したアヴディーヴァは予備審査のDVD審査で落とされていたのを、審査員のフーツォンがねじ込んで、合格にさせ、その後、一次、2次、など勝ち上がり、優勝者となりました。DVD での評価についも問題提起しています

一方、2015年は、審査員のダンタイソンの教え子が本選に多数残り、話題となったとのこと。直接の教え子については、師匠は申告して審査から外れるルールですが、どこまでを教え子とするか、といった問題もあるとか

今回のチョソンジンの優勝については高く評価していますが、様々な視点から、問題を分析しており、これは刺激のある本でした。
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そして、もう1冊、ショパンコンクールの本が今年リリースされました。

ムード「ショパンコンクールを聴く」 船倉武一(アルファベータ社)

こちらの著書は、中学校の教師をしているというアマチュアで、ピアノをCD などで丹念に聴いているマニアのようです。この出版社は、クラシック音楽に関するマニア的な本を何冊か出しています。

全体の8割くらいがショパンコンクールの歴史、優勝者や入賞者が紹介されています。その中には、これまでのコンクールで起きた数々の事件も紹介されており、1980年のポゴレリッチ事件などが詳述されています。あまりに有名な事件で、ポゴレリッチの超個性的なショパン演奏に対して、拒絶反応を示した審査員が最低点をつけたため、予選敗退となりました。アルゲリッチはこの結果に納得せず、審査員を辞任したことで、ポゴレリッチは大変な評判となりました。

 <ショパンコンクール 10大事件>

1.ショスタコーヴィッチ落選事件(第1回)
2.くじ弾きで決まった優勝者(第2回)
3.採点疑惑 ハラシェヴィッチvsアシュケナージ(第5回)
4.優勝者ポリーニへの名誉審査委員長ルービンシュタインの発言(第6回)
5.ポゴレリッチ事件(第10回)
6.ブーニン・シンドローム(第11回)
7.優勝者なしの波紋(第12回)
8.またもや優勝者ない、スルタノフ事件(第13回)
9.ユンディ・リーの勝利(第14回)
10.ヤマハの勝利(第16回)

マニアらしく、ポーランドのショパン協会からリリースされている実況盤CD の紹介なども加えてあり、ピアノファンのリスナーのための本という感じです。

2015年のコンクールについては、ライブストリーミングで聴いたというそれぞれのピアニストの演奏に関する感想が書かれています。

なお、この2015年のコンクールについての部分は、青柳いづみこ氏からクレームがあったようです。それは、彼女がコンクールのレポートをブログに書いており、それと内容が酷似しているとのことです。アルファベータ社と船倉氏から、青柳いづみこの著作や他の参考文献は記載しているものの、参考にしたとの追加のステートメントをあらためて載せています。

次のショパンコンクールは四年後の2020年です。またワルシャワに行ってみたくなる本でするんるん
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