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2016年09月01日13:33

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10万年の意味

分かってコメントしているのか、分からずにコメントしているのかは知らないが、何も考えずに数字の大きさだけ見てコメントしているらしき人が多くて些か心配になる。まあSNSのコメントなんて法や公序良俗に反しない限り自由にやって構わないと思うけどさ。

10万年が何を意味するかというと、大雑把に言うと放射性物質の量が危険性なき水準まで減るには何年かかるかという試算の結果だ。
放射性物質にはそれぞれ固有の半減期があって、常々一定の割合で崩壊して減ってゆく。元の濃度と核種とが分かっていれば、一体どれだけの時間が経過すれば生物への影響を無視できる程度(物凄くざっくり言うと自然に存在する放射性物質と同程度)にまで減少するか割り出せる。それがsafety margin込みで10万年という訳だ。

ここまでが基礎知識。

では実際に何をするかというと、遮蔽だ。
放射線に高等生物(特にヒト)が曝露されるのを避ける。
つまり放射線を通さない物質で完全に密閉した上、高等生物が普通は辿り着かないような所に埋める。
原理としてはこれだけだが、何も考えずに遮蔽して埋めるだけでは、以下の如く曝露の危険が想定される。
・地震や噴火などの災害により、遮蔽物質の殻が割れてしまう。
・同じく災害により、地下深く埋めたものが地上ないし人の生活する領域に露出してしまう。
・人為的に遮蔽物質の殻が割られてしまう。
・人為的に埋めたものが掘り起こされて露出してしまう。

これらを予防するのが”放射性廃棄物の管理”である訳だ。

考え方としては天災の影響なき場所を選定すること、そして現実の生活で今後人間が立ち入る可能性なき深さまで埋めてしまうこと、その2つさえ満たしてしまえば、あとはどこに埋めたかさえ把握しておけばよい。
従ってどこに埋めるかを決めるのは慎重に慎重を期する必要があるけれども(天災を避け、かつ間違えて掘り出されたり良からぬことを企む輩に盗み出されたりできない場所を見極める)それされ適切であればあとは理屈では予測しがたき事態に備え、場所と対処法とを把握しておくので足りる。

細かいことを言うと前処理というか、埋める前にやっておかないといけないこともある。だから実際に埋めるまでは数十年はかかるというが、それでも長く見積もって1世紀程度の話だ。

10万年というのは、人類が今の繁栄を保ったまま存続する限りそれだけの期間場所を記憶し続ける必要があるという話で、それどころではない事態が起こって地球環境が一変してしまったり、人類が滅んでしまったりした場合、あるいは人類が衰退し技術的に埋めた所まで辿りつけなくなった場合には放射性廃棄物の問題などどうでもよくなってしまう。

そういう意味で現実的に問題となるのは最初に何をするかと、埋めるまでの百年間。その後の部分は記録をどう維持するかという問題だろう。人類が栄えている限りはさして問題になるまいし、人類が栄えていないならばそもそも問題自体が消滅してしまうだろう。

という訳で10万年という数字は衝撃的に見えるが、実際にそんな長い間とんでもないお荷物について腫れ物に触るような対応を求められ続ける訳ではなかろうよ。

その辺考えた上で疑義を呈する人のご意見には乞うてでも耳を傾けるべきだが、考えなしに数字だけ見て騒いでいる人の意見は聞くに値しない。この記事にコメントを寄せている方々には後者の方が多いように見えることが些か心配だ。



■制御棒処分、70m以深 国の管理10万年 規制委方針
(朝日新聞デジタル - 09月01日 03:49)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=4170724
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