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2016年06月01日19:02

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5月の読書記録

ウーム…先月は読んだな…というのが、この記録を一瞥しての第一印象(笑)。
一頃の不調のリベンジを果たさんばかりに、半ば意地になって本をむさぼり読んでいたような気がする。それ程難解な代物ではなかったけれど、ナボコフの講義本四冊がいわば山だったという印象がある。今月もこの調子で本を読んでいきたいな…
後、ナイスも結構多かったか?

2016年5月の読書メーター
読んだ本の数:23冊
読んだページ数:6626ページ
ナイス数:86ナイス
http://bookmeter.com/u/4147/matome?invite_id=4147

■探究〈1〉
二十数年ぶりに再読。当時、変に勘違いしてわかったような気になり、知的気分に浸っていたという事実に赤面するくらい難解な代物だった。一体何をわかっていたというのだろう?ただ、難解というだけでなく、マルクスやヴィトゲンシュタインなどの思想家に対する著者の解釈がユニークというか、時としてアクロバティックでさえあるのも、理解しづらい要因だろう。また、改めて読み返してみると一貫した流れがあると思っていた各章の繋がりが、実はそれ程堅固なものではなかったということに気づかされた。そのゆえに更なる深読みが可能かも?
読了日:5月31日 著者:柄谷行人
http://bookmeter.com/cmt/56700982

■常識の路上
町田のエッセイ集を読むのは久しぶり。以前に比べると文章にキレがなくなってきたというか、町田の文体にも食傷気味になった嫌いがあるものの、それでもつい引き込まれて読み進め、時折笑いを漏らしてしまう。ただ、その一方で自分を戯画化した独自のスタイルとは別に等身大の著者を反映したタイプのエッセイを書き始めても良いのではないか?という気もした。夭折した高校時代の友人の思い出を綴った「長居駅」というごく短いエッセイが妙に印象的だったのが、そのことを象徴しているように思う。後、ベルリン滞在記が個人的に興味深く読めた。
読了日:5月31日 著者:町田康
http://bookmeter.com/cmt/56686039

■風よ、空駆ける風よ
母と娘。同性同士であるがゆえ、ある部分では理解しあいながらも、違う部分ではどうしても分かり合えない、時には言いようのない憎しみさえ抱いてしまう。それでも最終的には離れられない…主人公であり語り手でもある律子とその親友史子を主な軸として、時に複雑に交差する母と娘、あるいは男と女。中盤でかなりだれて、正直「もう少し短くしても良かったのでは?」という気にもさせられたが、姉妹のようにして育った史子の従姉妹清子の死からラストへの流れはかなり読み応えがあった。そして過去と現在が混在する最終章の大円団は圧巻。
読了日:5月30日 著者:津島佑子
http://bookmeter.com/cmt/56667978

■「私」
かなり短めの作品が収められているが、その内容はそれぞれ濃い。他の人も述べているとおり、その多くが「死」それも大抵は近親者のそれを扱っているため、それと無縁でいられない者としてつい身につまされてしまう。個人的には在日コリアンと結婚した男とその娘の独白を綴った「セミの声」がとりわけ印象深かったか。ダメ男を自称している父親だが、なぜかその口調にはどこか憎めないものを感じる。幼少時の娘を「コンケツ」と呼んでいたというエピソードも、なぜか微笑ましく思えるのが不思議。後、「母の場所」の重たさが何ともズシンときた。
読了日:5月26日 著者:津島佑子
http://bookmeter.com/cmt/56579373

■草叢―自選短篇集
本書を読了後、巻末の初出誌一覧をチェックしたところ、収録作品の半分が既読だったことが判明。しかし、ものの見事に読んだという記憶が抜け落ちていた…それはともかくとして、個人的にとりわけ印象的だったのは、表題作か。著者自身がかなりデフォルメされた形で投影されていると思われる主人公である妹。優秀な姉と常に比較される不器用で頑固でコミュニケーション能力に欠けた妹が不義の子をお腹に抱え、母と姉にあからさまな陰口を叩かれながら、草刈りに勤しむ姿には、今以上に不器用で要領の悪かったかつての自分を重ねてしまう。
読了日:5月26日 著者:津島佑子
http://bookmeter.com/cmt/56569115

■ナボコフの文学講義 下 (河出文庫)
本書を読み始める前は、取り上げられている作品の中で、唯一未読でかつ難解度の高い『ユリシーズ』講義に一瞬ひるんだのだけれど、いざ読んでみたら、意外なほどサクサク読めたのでちょっとびっくり。これを機会に原作に挑戦してみようかな…という気になった。また、『ユリシーズ』を評価する一方で、『フェネガンズ〜』を「文学史上最大最大の失敗」と評するところは、いかにもナボコフという感じて笑ってしまった。後、印象的だったのは、『変身』の主人公ザムザの家族に対する辛辣な言葉。そう言わせる背景があったのでは?と勘ぐってしまった。
読了日:5月25日 著者:ウラジーミルナボコフ
http://bookmeter.com/cmt/56556994

■ナボコフの文学講義 上 (河出文庫)
内容はともかくとして、取り上げられている作品を実際に読んでおかねばかなり読みづらいだろうな…というのが正直なところ。幸いにしていずれの作品も読んでいた僕でも、「あれ?」と思う箇所が少なくなかった。紙幅の関係もあるだろうが、日本版独自にある程度詳細な作品解説を別に設けた方が良かったのでは?それはともかくとして、言葉の魔術師という異名をとるナボコフだけあって、その精緻な読みは他の追随を許さないものがある。とりわけ『荒涼館』のスキムポール評には溜飲が下がる思いがしたが、同時に更に深く掘り下げて欲しかった気も。
読了日:5月21日 著者:ウラジーミルナボコフ
http://bookmeter.com/cmt/56470624

■私のミュンヘン日記―シュタイナー学校を卒業して (中公新書 (797))
特に物書きを志していたわけでもない二十歳過ぎの女性が、これだけの文章を世に出していたというのにまず驚き。日本ではまずあり得ないと思えるような奔放でいながら、同時に文化的でもある著者の十代の体験には、目も眩むような思いさえしてしまう。また、こうした日本ではなかなか受け入れられ難いような文化的バックボーンを抱えた著者が、その後どうやって日本の生活に馴染んでいったか?というのも興味深いところ。それと問題を繰り返す著者に心穏やかではなかった筈の両親が最終的に著者のドイツ滞在を認めたその決断力が見事だと思った。
読了日:5月19日 著者:子安文
http://bookmeter.com/cmt/56415313

■ナボコフのロシア文学講義 下 (河出文庫)
本書の半分を占める『アンナ・カレーニン』の解説がやはり圧巻。ただ、それと同時にあれだけドストエフスキーをけなしながら、こちらを持ち上げるのに、いささか首を傾げたくもなるが。著者はこの作品をジョイスに先行して無意識を記述したと述べていて、「まあそうなのかな?」と思いつつ、「でもあれって結局メロドラマだろ?」と突っ込みたくなる。ただ、注釈ノートはあの作品を理解するのにかなり役立つと思う。それから著者がアンナと同じくらいにリョーヴィンを重要視しているのが、少し嬉しかったか。そういう意見の人はあまりいないので。
読了日:5月18日 著者:ウラジーミル・ナボコフ
http://bookmeter.com/cmt/56408652

■ナボコフのロシア文学講義 上 (河出文庫)
冒頭の「ロシア文学という概念はごく短い間に形成されたもの」という指摘に虚をつかれたような思いがした。確かに十八世紀半ばから一九世紀にかけての充実ぶりはどこか異様なものがある。個人的にはゴーゴリの解説がやや退屈だったか?それとやはりナブコフのドストエフスキー観はある程度興味深くはあるけれど、どうしても受け入れ難い。できればそのあたりをバフチント語ってもらいたかった…などと無茶なことを考えたくなる。ただ、そういう受け入れ難い視点もある意味本書の魅力となっている。今後折に触れて手に取る価値のある一冊かも。
読了日:5月17日 著者:ウラジーミル・ナボコフ
http://bookmeter.com/cmt/56379494

■ケアその思想と実践 1 ケアという思想
各論考の出来にややバラツキはあったものの、概ね興味深く読めた。百歳を越える老人が珍しくなくなったという人類未踏の状況にある現在の日本において、ケアという言葉が持つ意味、そしてその実践は今後様々な試練に立たされ、熟慮されていくのだろうということを改めて実感。社会学的要素が強い論考はやや読み辛いものの、普段なかなか気づかない福祉の側面や問題点を提供してくれた。個人的には三好春樹の「ブリコラージュ〜」がとりわけ興味深く読めたか。レヴィ・ストロースの思想が老人介護と結びついていたとはまさに目からウロコだった。
読了日:5月16日 著者:
http://bookmeter.com/cmt/56358473

■夜のティー・パーティ (1979年)
内容云々というより、このエッセイを書いた人がもうこの世にいないという現実に何とも言えない重みを感じる。そして、本書に登場する著者の息子がその数年後に夭逝するという事実も何とも痛ましいものを感じる。当然のごとくこの時点で著者はそんなことを夢にも思っていない。そのことにときの残酷さを思わずにはいられない。それはそうと、著者が以前何かにつけ「男っぽい」と言われていたという事実がちと意外。確かに華奢で短めの髪だったから、そういう要素は皆無ではないが、かなり赤裸々に女性性を描いてきた著者のイメージとちとそぐわない。
読了日:5月14日 著者:津島佑子
http://bookmeter.com/cmt/56311093

■あぶない一神教 (小学館新書)
橋爪氏による後書でこの対談を「異種格闘技」と形容しているが、その割には予定調和というか、一つのトピックについて二人が交互に解説しているという印象を強く持った。とりあえず、三つの一神教について手っ取り早く知りたいという人には便利かも。後、一神教と資本主義との関係については、何かと考えさせられるものがあった。とりわけ、橋爪氏が資本主義の重要性について指摘する場面には虚を突かれるような思いがした。それから日本の教育現場の荒廃ぶりを指摘する箇所には、少なからず胸を痛めた。本物の知性と教養の重要性が見直されるべき。
読了日:5月13日 著者:佐藤優,橋爪大三郎
http://bookmeter.com/cmt/56284448

■あたらしい哲学入門―なぜ人間は八本足か?
先に読んだ『講義』を更に平易にした内容。例によって(?)突っ込みどころは少なくないが、とりあえず楽しんで読める。個人的には「人生には終わりがあるからこそ意味がある」という指摘が印象的だった。もちろん著者が最初に言いだしたわけではないけれど、まさにある種のニヒリズムがはびこっている感のある昨今だからこそ、このような指摘が価値を持つのではないか?それと本当はそれほど楽しいことがあるわけではないことを「楽しみでやっている」というのはどういうことか?について論じている箇所も印象的。人は損得だけで動くわけではない。
読了日:5月12日 著者:土屋賢二
http://bookmeter.com/cmt/56255993

■ミュンヘンの中学生―シュタイナー学校の教室から
八年間という長きに渡って担任変えもクラス変えもない良くも悪くも濃い環境の特異性に改めて驚かされる。その八年間を受け持つ教師のプレッシャーや責任感、そして時折味わうであろう深い挫折感を思うと、並の人間にはできないことだな…とつくづく思う。それだけに自我に目覚めた思春期の子供があからさまな侮蔑の態度をとるにしても、最終的には深い信頼をその教師に寄せている様子には感動を覚える。そして、この学校で提唱される点数主義へのアンチは、そのまま日本にあてはめるのは難しいにしても、重い警鐘として受け止めねばならない。
読了日:5月11日 著者:子安美知子
http://bookmeter.com/cmt/56238197

■ツチヤ教授の哲学講義
突っ込みどころが散見されたが、概ね楽しんで読めた。ただ、突っ込みどころがあるのは著者も承知の上であろうことは、著者自身偉大な哲学者に突っ込みどころかダメだしまでしていることから推測できるが。講義終盤の質疑応答が今ひとつ充実していないのが、個人的に不満。頻繁な質疑応答が行われることで、講義への理解が深まり、本書の内容も充実したものになったはずだが。後、ヴィトゲンシュタインの解説は簡潔で分かりやすかったが、彼が考える哲学的問題というのが何かが具体的に明らかにされていないのが残念。哲学のイメージは理解できる。
読了日:5月10日 著者:土屋賢二
http://bookmeter.com/cmt/56207962

■ブッキッシュな世界像 (白水Uブックス―エッセイの小径)
自身、高名な作家である著者による文学を中心とした評論を収めたもの。一部での文化論、文明論的な要素のある文章はある程度興味深かったものの、やや生硬で退屈という印象が拭えなかった。やはり本書の魅力は続く二部、三部にあると思う。例え、それが未読のものであっても、本好きによる本の解説や紹介というのは、多かれ少なかれ同じ本好きの興味を惹くものだということを改めて痛感。この読後感は丸谷才一や福田和也に通じるものだと思うのは僕だけか?『百年の孤独』の解説は未読の者には読みづらいが、『孤独』の読者には必読必携のもの。
読了日:5月9日 著者:池澤夏樹
http://bookmeter.com/cmt/56186405

■ミュンヘンの小学生―娘が学んだシュタイナー学校 (中公新書 (416))
本書の舞台となった時代から既に四十年以上を経た今も、日本の点数主義、詰め込み教育の偏向に大きな変化は無いように思える。要するに日本という国が、シュタイナー教育で育ったような人材を必要としていないということなのだろうか?そう考えると暗澹たる思いがする。実際のところ全ての人にシュタイナー教育が向いているわけでもないらしいのだが、それでもこのユニークな教育法が示唆するところは今日でも決して小さくないだろう。むしろ経済成長に陰りが見えた昨今だからこそ、成果に拘泥しないこの教育の可能性を模索すべきではないだろうか?
読了日:5月7日 著者:子安美知子
http://bookmeter.com/cmt/56146827

■かがやく水の時代
読み始めてすぐに「これは後の『火の山』に連なるものだな」と気付かされた。アメリカとフランス(パリ)で暮らす異邦人達。そしてあるいはそこで生まれ、あるいは亡くなり、出会いと別れを繰り返す人間模様。時として時間軸が前後し舞台も飛ぶので、筋を追うのが困難に感じられることもあるが、目の前にある現実、そして人々と向き合う著者を投影した主人公アサコの姿にある種の思い入れを抱かずにはいられない。また、そのアサコの年齢を通過した自分と家族との関係、それにやがてはくる親の死という現実に改めて向き合わされた気がした。
読了日:5月5日 著者:津島佑子
http://bookmeter.com/cmt/56087745

■ヤマネコ・ドーム
本書を読んでいて、「いつのまにか著者は父太宰を超えてしまったのではないか?」とふとそんな気にさせられた。時代的な制約があるとはいえ、著者が描いてきたグローバル的な視点や、少数者への眼差し、そして歴史の流れを組み伏せるような力強い筆致は、太宰がものにし得ないものだった。恐らく著者最後の長編になると思われる本書で、そんなことを思わされるのは、何かの皮肉なのか?それはともかくとして、次の作品への萌芽ともなるような幾多の要素を示唆しながら、同時に少なくない死の描写には、著者の死の予兆か?とも思わせられる。
読了日:5月4日 著者:津島佑子
http://bookmeter.com/cmt/56042773

■きつね月
ちょうど著者が自分のスタイルを確立する過渡期にある作品ではないか?という印象を抱いた。前の作品にあった上っ滑り感は拭えないものの、それと同時にどこか地に足のついたような安定感を覚えるのも確か。それは(おそらく)著者には珍しく「あとがき」を付しているのにも象徴されているのではないか?それにしても、「あとがき」といえば、本編で描かれる象徴的な世界を具体的な説明を加えるのが相場だと思うのだが、ある意味本編以上に象徴的な表現をしているのが著者らしいが(笑)。とにかく、言葉のイメージと戯れるのがいいかも。
読了日:5月2日 著者:多和田葉子
http://bookmeter.com/cmt/56005935

■ゴットハルト鉄道
一読して、「この作品から著者は自分のスタイルを本当の意味で確立してきたのではないか?」という印書を抱いた。先に読んだ初期の二作にあった、何とも言えないぎこちなさというか青臭さみたいなものが、本署ではかなり払拭されているように思える。表題作には幾分、前述の要素が認められるものの、残る二作には著者にしか描くことのできない独特の文学空間が構築されていて、何とも言えない安堵感を覚え、殆ど一気に読了してしまった。「無精卵」における同性愛的な要素を絡めつつも、微妙にそこを通り抜けてしまう描写が逆にエロチック。
読了日:5月1日 著者:多和田葉子
http://bookmeter.com/cmt/55978029

■新しい須賀敦子
タイトルが示す通り、まさに須賀敦子の新しい魅力を感じさせる。生前の須賀敦子と深く付き合い、なおかつその著作を読み込んで来た編者の須賀観には大いに感じ入るものがあった。そして、これまでの自分の須賀の著作に対する読みの浅さに恥じ入ることに。以前、須賀の著作を読み漁っていたときにも、須賀と父親との愛憎入り混じった独特の関係が強く印象に残っていたものだが、本書で改めてその関係性に鮮烈なものを感じた。とりわけ須賀の妹による須賀の父親に対する愛の深さを語る証言には、同感とも反感とも言えない複雑な思いを抱くことに。
読了日:5月1日 著者:江國香織,松家仁之,湯川豊
http://bookmeter.com/cmt/55969148


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