ディア・ハンター

マイケル・チミノ監督が亡くなったとか。もはや旧聞に属するのかも知らんが、今年はどんどん凄い人たちが逝くので、もう訳がわからない。

『天国の門』『イヤー・オヴ・ザ・ドラゴン』・・・彼の名作多々あれど、私はどうしてもコレ。『ディア・ハンター』。
田舎町の製鉄工場で働く若い仲間。共通の趣味は鹿狩り。結婚式、延々と続く「君の瞳に恋してる」。出征前が尺の約半分。
そして戦場は地獄。狂気と、前半の対照が効いた、そら恐ろしい映画。

ヴェトナム戦争が終わったとき私は中２。サイゴンの、旧南ヴェトナム政府官邸に北軍の戦車がきゃらきゃら這入ってゆくのをニュース番組で観たとき、ある種の感慨を覚えたものだ。
が、そこに至るまでには凄まじいことどもがあったのだろう。本作はそれらを象徴的に表しているのであって、数多の報道写真、惨状を伝え聞いていたから、『ディア・ハンター』が絵空事とは到底思えぬ。

マイケル・チミノといいボウイといい、グレートメン、ソウルメン、クオリーメンが鬼籍に入る今年は、時代の転換点なのかも知れない。明日は参院選。

※テーマ曲は、おだやかで美しい調べ。なので却って狂気と悲惨が浮き彫りに。
この曲はチミノ監督のレクイエムか。はたまた、人類の葬送曲となるか。