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2015年12月16日23:59

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孤立主義も楽じゃない

英国の対中接近について解説を試みる記事がありました。

■中国に接近する英国 アジアとは違う対中目線
(THE PAGE - 12月16日 17:01)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=177&from=diary&id=3762998

要約すると欧州の中国観はアジアとは違うんだよって内容で、特に目新しくもなく…それより個人的に注目したのは記事に貼られた画像です。
恐らくキャメロン首相が習主席をパブに招待した時のものと思われますが、ビール好きかつたまに英国パブに顔を出す身からするとこの写真から言えることは一つです。

キャメロンさん、表情固い。いや、固すぎ(笑

パブは英国の居酒屋であってそこで寛ぐときの表情はこんなものではありません。実際、自分が見てきた中でもパブでこんな不味そうにビールを飲む人間は見た覚えがないです。
これは隣の習主席の表情を見ても分かることで、このキャメロン首相の表情は明らかにわざとなのです。しかしパブには首相が招待したはず。例え体裁だけの話であったにしても、このような写り方を、しかもわざとするのは礼に欠ける行為です。

そもそも今回の訪英で、出迎えた英国側の人間の写りは大なり小なりこんな感じです。ネットのニュースを見ても、手袋をつけたまま握手するエリザベス女王にトイレ前にしつらえられた会見場、国会での演説をいかにも暇そうに聞き流す人たち……
本音では歓迎していないのを表現したいのは分かります。しかし英国人というのは本来もっと老獪な人種だったはず。例え嫌でも、こんな一目で分かるような嫌がらせに出るのはらしくありません。
何故嫌気は腹の底にしまいこみ、表面上だけでも笑顔で取り繕うことが出来なかったのでしょうか?これは言い換えると、このような大人げない態度に出ることでしか中国に一矢報いることが出来ない、つまりそれだけ英国が中国相手にフリーハンド な状態だということを如実に表しているのではないでしょうか。

もとより英国にとって、現在の中国は決して相性のいい相手ではありません。経済力や軍事力では勝ち目がないですし、自国資本の製造業がほぼ壊滅した英国は、フランスやドイツのようにモノを売って中国で稼ぐことも難しい状態。
しかも中国は海外覇権を狙いアメリカと角つき合わせています。英国はアメリカの産みの親(?)である立場を活用し、多分にアメリカの威を借りて大英帝国の威光を演出していますから、中国に不用意に近付きアメリカの不興を買いなどしたら墓穴を掘る結果になりかねないのです。
歴史的には、確かに過去に英国は中国を蹂躙し近年まで香港を植民地として持っていましたが、これだけ力の差が不均衡になるとこれは弱味でしかありません。実際日本に対してほどでないにせよ、中国は英国に過去の問題を交渉カードとして切ってくることがあるそうです。
外交巧者の立場は似た者同士といえるも、こと英中に関して中華人民共和国発足以降のその使い方と結果は好対照かつ明暗が分かれます。英国の戦後外交は一言で言うと守りの外交でした。戦前は日の沈まぬ帝国だったのが植民地が次々と独立して領土を失い、その中でも戦後の世界経済の成長に追いすがり欧州の大国の地位を保全し続けたのですから個々の場面はどうあれ総括するとその足取りは守り以外の何物でもありません。
これに対して、中国の外交は当然攻めです。何しろ中華人民共和国は戦後の建国、その母体である中国共産党は第二次大戦中には主権国家どころか安定した領土すら持っていなかったのに、国際社会の力学を巧みに操り現在では“戦勝国”の一員に収まっているのです。
ヴィクトリア時代にまでプライドの出所を遡る英国人が、先の戦争で顔を合わせたことさえない相手に同じ勝ち組のテーブルにつかれ、大きな顔をされるのは気分がいいはずがないでしょう。

英国には「栄光の孤立」なる考え方があるそうです。元々は他国との同盟関係から距離を置く思想ですが、自国で経済活動を完結できなければ取れない行動であることから大国意識の称揚でもあり、英国人には一定の思い入れがあるようです。
オバマ政権下のアメリカ外交が決断力に欠けると評される中で対米追従のタガが緩み、またぞろ英国人の冒険意識が目覚めた結果がこの明らかに金目当ての中国接近なのかな?と思いますが、しかし一連の写真を見るとつくづく孤立主義も楽ではありませんね。
巷でよく見られる煽り文句に「失敗を恐れるな」なんて言葉があります。でも自分に言わせてもらうなら、本当に失敗そのものを恐れてる人間など実はそんなにいないはずです。なら人は失敗に何を恐れるのか?失敗に伴う責任を恐れていると思うのです。
「失敗を恐れるな」という人はいても、「失敗に伴う責任を恐れるな」「失敗の責任を取る必要はない」などと公的に言う人は自分は見たことがありません。少なくとも社会人には失敗と責任は表裏一体なのですからある意味では論理のすり替えをしている訳で、そう考えると実に無責任な物言いだと思わざるを得ません。
さて英国に話を戻すと、アメリカの機嫌を損ねるリスクを負い、国力では丸きり上で外交でも太刀打ちしきれるか分からない、いけ好かない、信用も十分にはない相手である中国にのめり込む。これは間違いなく冒険的行為です。
そしてそこには成功は必ずしも約束されていない。下手を打ったら中国に一杯食わされて英国の国庫を開け放った大馬鹿者として、あの粘着質の英国人の間に子々孫々まで語り継がれるかもしれない。今英国の指導者達が直面しているのはそういう選択です。
それでも英国は賭けに出た訳ですが、あの写真。あれってひょっとしたら、失敗したときのための保険と言うかアリバイなのかもしれません。だって満面の笑みで中国を迎え入れて、結局騙されたり破綻に付き合わされたと歴史に記憶されたらそれこそが、失敗の後についてくる半永久的な責任となり得るのです。
もっとも普通、そういう責任は国におっ被さるもので指導者達が個々人で負うものではないですが、失敗した場合に責任が誰にあるか、と今の時点から積極的に演じていると見なすとまた見方が変わります。英国のことですから有権者向けのポーズでもあるでしょう。

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