この物語は、艦隊これくしょん2015年夏イベント『反撃!第二次SN作戦』の内容を独自の妄想で書かれたものです。
オリジナル設定が苦手な人はお気をつけください。
前回
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【seen4】
静けさに包まれた海を行く少女たちの瞳には決意の火が灯る。
これから彼女たちが赴く海域には魔が潜んでいる。
ソロモン海。
そこでは過去何度も激戦を繰り広げている。
ある者は友を失い、またある者は使命のために己の命を燃やす。
この魔の海域での戦い、ただで済むはずがない。
しかし誰一人欠けることなく突破し、次に続く者たちに運命の襷を渡さなければならない。
そんな緊張に包まれる中、一人だけ困惑する者が一人いた。
「ね、ねぇ、長門提督代理さん」
『どうかしたか?』
通信の先から聞こえる長門の声に足柄は疑問を投げかける。
「敵の主力に備えて連合艦隊で出撃するのはいいとして、この第二艦隊は何なの?」
『何・・・・・・とは?』
足柄の目線の先には三人の艦娘の姿がある。
いや、三人という言葉には御幣があるかもしれない。
「第二艦隊を編成する6人中、なんで三人もロボットが紛れ込んでるのよ!」
そう、この第二艦隊には水ポンとアスファルトカッターの二人が用意した、ロボ艦娘が試験的に配属されていた。
「ヤマナイ雨ハナイサ」
「北上サン、一緒ニガンバリマショウ」
「駆逐艦?アア、ウザイ」
今回、作戦の直前まで部隊編成が決まらないでいた。
提督不在ということもあり、今後の戦力配分を考慮した上で、決めかねているのだと思っていた。
その結果、ギリギリのタイミングで発表されたため、お互いに細かい打ち合わせをする暇がなかった。
長門の話によると、連携の確認は現地に着くまでに海上でせよとのことだったが、今にして思えば三人のロボ艦娘に対しての抗議をさせないための作戦だったのかもしれない。
『編成発表前に軽い演習で性能確認をしたところ、性能面において問題はなかった』
「だからといって、こんなのに背中を預けろって言うの?」
いくら性能面で問題はないと言われても、相手は血の通わぬロボット、どうしても不安が拭えないでいる。
演習の結果を自分の目で確認していないのも心配の一因である。
「まぁまぁ足柄さん、ロボットと出撃なんて滅多に経験できないんだから楽しみましょうよ」
「白露、お前は何でそんなに楽観視できるんだ」
「だってもう出撃しちゃってるし、今から帰還して再編成してる時間も無いじゃない。なら楽しんだモン勝ちかなじゃない」
「大体あなた、妹のロボットなんて勝手に作られてなんとも思わないの?」
「いやー、ホントよく出来てるよね」
「ボクニ興味ガアルノ?」
さすが個性豊かな白露型の長女なだけはある。
この状況を楽しんでいる姿に足柄は絶句する。
「足柄さん、そろそろ敵勢力圏内に入ります、諦めて頑張りましょう」
「そ、そうね」
能代に促されて、しかたないと肩を落とす足柄であった。
【seen5】
「本当にあれでよかったの?」
足柄からの通信を終え、確かめるように長門に問いかける陸奥。
今回の作戦はかなりの大規模である。
作戦で言えば第6フェイズまで予定されている。
SN海域に集結している深海棲艦の群れを撃破した後、可能ならばその先の敵棲地まで制圧したいと考えられている。
中心部に行けば行くほど、より過酷な戦いが待っているのは予想するまでもない。
ならば現段階で主力を全て投入するわけにはいかず、少しでも戦力を残すために手を尽くすのは当然といえるだろう。
偶然にも建姫の好意で優秀な戦力が追加されたなら、投入するしかない。
また、これでロボ艦娘の活躍がかなりの成果に繋がるなら、今後も建姫にロボ艦娘の量産化を頼むかもしれない。
それらを見定めるためにも、まだ敵勢力が本格化されてない現状で様子見をしようということになったのである。
「問題ない、第一艦隊にはそれなりの主力を投入しているし、ロボ艦娘が想定以下の性能でも勝利を掴める計算だ」
足柄の言い分もわかる。
死ぬか生きるかの戦場で背中を預けるなら、少しでも信頼できる仲間に預けたいと考えるのは当然だ。
しかし、先日改二装備を実装した足柄なら、なんとか上手く立ち回ってくれるに違いないと信じている。
実力を認めているからこそ、多少無茶な任務でも任せられるのだ。
「本当なら私が出撃できればいいのだが」
代われるものなら代わってあげたい、長門も同じ鎮守府の艦娘の負担を軽減させてやりたいと思う。
しかし今の提督代理という立場がそうさせないのである。
「本部より入電よ。本作戦に参加した他の鎮守府の艦娘たちが消息を絶ったそうよ」
「なんだと!?」
本部からの通信を伝える陸奥の言葉に長門の表情は凍りつく。
今回は各鎮守府から連合艦隊で出撃している。
戦力的に劣ることは考えにくい。
不安がよぎるが、この鎮守府の艦娘たちも出撃した後。
今は信じるしかない、彼女たちの無事を。
【seen6】
ソロモン海は戦火に包まれていた。
本来なら静かな海が、艦娘と深海棲艦の砲撃音が響いている。
各鎮守府の艦隊と連携をとりながら、大阪湾鎮守府の艦娘たちも海域奥地に歩を進めていた。
「思ってたよりはロボ艦娘もやりますね」
「そ、そうね。私たちと艦隊を組むなら、これくらいやって当然ね」
能代の言葉にバツが悪そうに答える足柄。
実際のところ、ロボ艦娘たちはよくやっていた。
プログラミングされた内容に沿って行動しているだけなのかもしれないが、一緒にいる艦娘たちのクセに合わせた攻撃は見事な連携を生んでいた。
そのせいもあって、彼女たちは他の鎮守府の艦隊よりも戦果を挙げ、敵指揮官の場所にまで迫る。
「ニドトフジョウデキナイ・・・シンカイヘ・・・シズメ!」
そこに待ち構えていたのは軽巡棲鬼。
大規模作戦のたびに彼女たちの前に立ちはだかってきた強敵である。
「あれ?なんかすっごい怒ってる?」
その名の如く鬼の形相の軽巡棲鬼に圧倒される白露。
しかし強敵とはいえ何度も戦ってきた敵、今回も負けるわけにはいかない。
「サッキノヤツラノヨウニ・・・オマエタチモ・・・タオシテヤル!」
後ろからの声に振り向くと、そこには戦艦棲姫もいた。
「え?マで?敵さん本気編成なんですけどー!?」
戦艦棲姫。
深海棲艦の中でもかなり上位の存在であり、その戦闘力は大和型の艦娘にも匹敵するといわれている。
そんな強敵に前に恐怖を感じるが、白露の目に戦艦棲姫が小脇に抱えている少女の姿が入る。
「え?・・・・・・嘘・・・・・・それって・・・・・・江風?」
「オマエタチモ・・・コイツノヨウニ・・・シマツシテクレル!」
江風は改白露型の駆逐艦娘、言わば白露の妹に当たる。
その妹が戦艦棲姫に生死もわからぬ状態で捕らわれてる。
「江風を・・・・・・江風を離しなさい!」
妹を捕らわれた状態で冷静さを保てるはずもなく、激昂した白露は単騎で戦艦棲姫に突撃する。
一撃、二撃と砲撃を撃つが、精密さを欠いた攻撃を戦艦棲姫はいともたやすく回避する。
「コッチガ・・・ガラアキダ!」
「うあっ!」
孤立した白露に軽巡棲鬼の攻撃が襲い掛かる。
「妹を・・・・・・お姉ちゃんの私が助けないと・・・・・・」
「簡単な相手じゃないんだ、一人で突撃するな」
被弾してもなお敵に向かおうとする白露を日向が抑える。
「今、お前が一人で飛び出したら敵の思う壺だぞ」
「でも、でも・・・・・・」
「しっかりしろ!」
なおも食い下がろうとする白露に平手打ちが入る。
「白露、まずは落ち着くんだ。そして顔を上げなさい。そこには何が見えるかしら」
怒りと悲しみがない交ぜになった思考を落ち着かせ、顔を上げる。
「仲間が、仲間がいるよ」
彼女を支える日向。
彼女の方に手をかける伊勢。
そっと頭をなでて慰める足柄。
心配そうに見つめる古鷹。
決意の表情を見せる祥鳳。
彼女を守るように敵に対峙する五十鈴と大淀と能代。
みな白露を心配し、陣形を崩してでも守ってくれている。
「江風を・・・・・・江風を助けたいの。お願いみんな、私に力を貸して!」
「当たり前よ、あなたの妹なら、それは私たちの仲間よ」
「仲間は絶対に助け出すわ」
「でもそれは貴女一人の力でじゃないわ」
「私たち全員でよ!」
先ほどまで悲しみに満ちていた白露の瞳に光が燈る。
迷いが晴れ、信頼する仲間との絆を確認した彼女に力が燈る。
「陣形を立て直せ、一気に決めるぞ!」
日向の声に全員が配置につき攻撃態勢に入る。
まずは第一艦隊の祥鳳の攻撃隊が強襲をかける。
軽空母の彼女の繰り出す艦載機が、敵陣を風のように駆け抜け翻弄する。
続いて伊勢と日向の航空戦艦の主砲が火を噴く。
陣形が乱れた敵に対して、古鷹と五十鈴と大淀が随伴艦を各個撃破していく。
「コシャクナ・・・・・・マネヲ!」
「シンカイニ・・・・・・シズメテヤル!」
軽巡棲鬼と戦艦棲姫の猛攻に耐えつつ、第二艦隊のロボ大井とロボ北上が魚雷を発射。
足柄と能代が砲撃で道を切り開く。
「白露、行きなさい!」
ロボ時雨の援護を受け白露が疾走する。
繰り出される連携攻撃に戦艦棲姫が怯み隙が生じる。
「イッチバーンお姉ちゃんをなめないでよね!」
突撃する白露は戦艦棲姫の腹に零距離射撃を見舞い、バランスを崩した隙を見逃さない。
「江風は返してもらうわよ!」
「オノレ・・・・・・」
深手を負った戦艦棲姫はよろめきながらも距離をとる。
「コノママデハ・・・・・・ココハイッタンヒク・・・・・・アトハマカセタゾ」
軽巡棲鬼にそう伝えると、戦艦棲鬼は海中にもぐり姿を消す。
「オノレ・・・・・・タダデハスマサン!」
「ただで済まさないのはこっちの方よ」
荒ぶる軽巡棲鬼に全員で照準を合わす。
「この海域から出ていきなさい!」
伊勢の号令で集中攻撃を開始する。
さすがの軽巡棲鬼もこの猛攻は耐えれない。
全身の艤装から煙をたちこめ、仰向けに倒れる。
「アア・・・・・・ソラガ・・・・・・キレイ」
沈み行く軽巡棲鬼を見届け、戦いは終わる。
第二作戦終了の報せを本部に送信。
しかし彼女たちの心は晴れない。
「江風、江風!返事をしてよ!」
悲痛な叫びを上げる白露の姿に誰も声をかけれない。
身内を、妹を失った痛みは本人にしかわからない、下手に同情するわけにもいかない。
しかしほとんどの艦娘には姉妹艦が存在する。
戦いの中で、いつ誰が姉妹を失うかわからない。
彼女たちはそういう戦いをしているのだ。
「むにゃむにゃ・・・・・・海風の姉貴、もう食べられないって・・・・・・」
「・・・・・・」
深海棲艦との戦いで傷つき倒れたと思った江風から、思わぬ声が飛び出す。
「・・・・・・江風?」
「むにゃむにゃ・・・・・・ン?あれ?白露の姉貴?」
目を開けた彼女は状況が掴めないのか、それとも寝ぼけているのか、何故白露に抱きかかえられているのか理解できないでいるようだ。
「バカ・・・・・・心配したんだから」
「白露の姉貴、何で泣いてんだ?」
「江風が無事で、今日イッチバーン嬉しいのよ」
海はもう静かに凪いで、空から光が差し込んでいた。
【E-3編へ続く】
今回、更新速度から察してもらえるとは思いますが、かなり難産でした。
・特に苦戦もなくストレートにクリアした事実。
・クリア報酬の江風の演出。
この二点を盛り込みつつ、いかにドラマを組み立てるかで悩みました。
決してキレイにまとまったとは思いませんが、これが今の私の限界です。
戦闘シーンについてもかなり悩みました。
艦娘の行動を一つずつ細かく書いていると、長くなるしスピード感が出ない。
かといって簡略化し過ぎると、状況が全くわからない。
個人的には戦隊モノのスピード感溢れる戦闘をイメージしながら書きましたが、ビックリするくらい力不足でした。
いやホント難しいわ。
今後の展開としては、次はE-3なのですが、全くネタが思いついておりません。
E-3も特に苦戦することなくクリアできたので、ドラマ性が無いんですよね。
さてどうしたものか。
今回はたまたま白露が編成に入ってて助かりましたが、攻略中は何も考えてませんでしたからね。
ちなみにE-4の構想は既に決まってます。
相変わらず話が長くなりそうですが、イメージが固まってるのでそれほど苦戦しないと思っております。
ホントE-3編どうしよう。
そんなわけで、続きます。
ここまで読んでくださってありがとうございます。浲浲
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