船戸与一氏「イスラム国が一面の真理を突いているのは確か」
2015年04月02日 07:21 NEWSポストセブン
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満州国という人工国家の成り立ちから終わりまでを、歴史に翻弄された四兄弟の
生き様を通じて描き切る船戸与一氏の大河小説『満州国演義』(新潮社)全九部が
ついに完結した。
この小説は、歴史とは何か、国家とは何かという大きな問いを読者に突きつける。
今の時代とどんな関係があるのか。
作家・高山文彦氏が船戸氏に聞いた。
──満州国という人工国家を考えた場合、どうしてもいまのイスラム国を連想してしまう。
船戸さんはどう見ていますか。
船戸:イスラム国は確かに狂犬集団と言っていいと思うし、それで片付けるのは簡単だよ。
だけど一方で、イスラム国がある一面の真理を突いているのは確かなんだよ。
それはまさに、第一次大戦後のアラブを、つまり、オスマントルコ帝国の分割を
どうするかとして、ヨーロッパがああいう国境を決めた。
以来、第二次大戦後の中東の争いというのは、一つはイスラムをどうするか。
もう一つは、アラブ民族をどうするかということだよ。似たように見えるけど、
これは違うと思うんだよ。
イランイラク戦争のときに、イラン首相のバニサドルが最高指導者のホメイニから
更迭されるわけ。
それは、バニサドルが「戦争に行って、イランのために戦え」と言ったことが、
ホメイニの逆鱗に触れた。
「なぜおまえはイスラムのために戦えと言えないのか」と。
つまり、中東情勢に関しては、アラブ民族主義でいくのか、ないしはイスラム主義で
いくのかというふうに、いつも分かれる。
そのなかで、民族主義でいくというのが、代表的にはイラクのサダム・フセインであり、
宗教でいくというのがイランのホメイニなんだよ。
アラブ民族主義とイスラム主義が常に競合しながら、これまでのアラブはあった。
そのなかでイスラム国のバグダーディーが言っているのは、
「オスマントルコの版図まで戻す」ということ。
要するに、イスラム国はオスマントルコを認めることで、アラブ民族主義ではなく、
イスラム主義で行くと明確に定めた。
そして、第一次大戦後に定まった、ヨーロッパによる秩序体系を壊すというわけだ。
この「歴史修正主義」は、やはりヨーロッパに対してはとてつもない恐怖だと思うんだよ。
※SAPIO2015年4月号
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