フランスの山奥にひっそりとたたずむ、
カトリックの中でも最も厳格な修道院の記録映画。
フェルメールみたいなスチル写真が気になり、
究極の断捨離映画、秘境映画としても見ておきたかったが、
岩波ホールの椅子に3時間も座るのはどうも気が進まず、
年明けのアップリンクでようやく鑑賞。
薄暗いし何をしているかわからないシーンも多いので、
ときどき気を失いながら(笑)、
でも、退屈というわけではなく、すがすがしい気分になれる。
なにしろこの映画、監督が修道院に撮影を申し込んだら、
「まだ早い」と断られ、
16年後にようやく許可が下りたそうです。
ただし、音楽、ナレーション、照明はNG。
修道院に入れるのは、監督ひとりだけ‥‥。
それでも何とか見所をつくろうと、
かなり苦労しているのがわかる。
もともと日常では会話が禁止されていて、
ただ黙々と祈り、食事をつくり、食べて、寝て、
起きてまた祈る、そんな毎日。
長い僧衣を着た修道士たちが夜中に蝋燭の灯りで
ミサを行っているところなんか見ると、ほとんど中世。
電気もなければ水道もなく、食料は自給自足。
散髪も自分たちでこなすDIY生活。
娯楽らしきものといえば、日曜日の午後の山歩きとおしゃべり。
究極のシンプルライフです。
何もないけど、退屈や倦怠とは無縁の、満ち足りた暮らし。
いいなぁ、美しいなあとほれぼれしました。
でも、修道士の顔は意外と人間臭いのです。
下手すると犯罪者?みたいな険しい顔つきの人もいる。
いろいろな苦難を経てここに居場所を見いだしたのでしょう。
今、何もかも捨てて修道院に入れと言われると困るけれど、
穏やかに死を待つ老師の揺るぎなさを見ると、
人生の最後はこういうところで暮らせるといいなあと
本気で思ってしまった。
DIE GROSSE STILLE/INTO GREAT SILENCE
2005年/フランス・ドイツ・スイス/168分
監督:フィリップ・グレーニング
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