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2015年01月03日07:22

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核ゴミ、原発つくるほど儲かる?東電が死守する総括原価方式

http://biz-journal.jp/2012/07/post_352.html

 東京電力は、福島原子力発電所の事故による電力供給不足を理由に、企業や国民に今夏の節電と電気料金の値上げを求めている。しかし、東電は節電や電気料金値上げをお願いする前にもっとやるべきことがたくさんある。そのひとつが、これまで東電の甘い収益構造を支え、電気料金を決める際の計算方式となっている「総括原価方式」を見直し、廃止することである。
 6月27日の東電株主総会をめぐり、「総括原価方式」の問題点を指摘する報道が数多く見られたが、まさにこの方式こそが、東電の企業体質を象徴的に示しており、それが一般企業といかにかけ離れた不合理なものかを端的に表している。
 東電は同社HP上で、わざわざ「総括原価方式における事業報酬に関わる報道について」と題する告知を出し、「総括原価方式は、電力の安定供給のために経産省に認められた権利」ともいわんばかりの態度で、どうしてもこの方式を死守したい模様だ。だが、そもそも安定供給が崩れたいま、説得力に乏しい。
 今回はおさらいの意味もかねて、この「総括原価方式」のカラクリと問題点をいま一度整理することを通じて、電力事業のあるべき姿を考えてみよう。
同じ民間企業でも異なる、「利益」の概念
 企業の売価、原価、利益の関係を表す次の2つの計算式を見ていただきたい。一見すると大変シンプルで同じようにみえるが、2つの計算式には、その意味するところに決定的な違いがある。
(1)競争市場の場合:売価ー原価=利益
 ・売価:市場(相場)で決まるもの。
 ・原価:改善努力で下げるもの。
 ・利益:原価低減で儲けを出すもの。
  ※この場合、企業は少しでも多くの利益を出そうと、原価低減(コスト削減)に必死に努力する。
(2)独占市場の場合:売価=原価+利益
 ・売価:市場で決まるのでなく、原価と利益を単純に加算するもの。 
 ・原価:下げるものでなく、計算するもの。
 ・利益:原価に上乗せするもの。
  ※この場合、利益はあらかじめ決められていて原価に上乗せするだけだから、企業は原価低減(コスト削減)の努力をしない。
 トヨタ生産方式をはじめ、日本の多くの企業の考え方は、基本的に(1)である。企業が利益を出すには、売上高を増やすか、原価を下げるかどちらかしかない。売上高増大はその時々の市場動向に左右されやすいが、原価低減はムダをとことん省き、改善を地道に積み重ねれば、利益を出すことができる。原価低減による利益創出は、企業の改善努力によるものだ。

原発をつくるほど事業報酬が増える?
 それに対して、東電の総括原価方式はどうか?
 それは(1)の計算式とは相反する、(2)の計算式に限りなく近いものである。総括原価方式を簡単に説明すると次のようになる。
 東電は人件費、燃料費、修繕費、減価償却費などのコストを、営業費として見積もっている。これが通常の一般企業の原価に相当するが、これに利益となる事業報酬が上乗せされる。
 事業報酬は原価低減によって得られるのではなく、発電用資産に対してあらかじめ報酬率が決められており、直近の2008年では3%だ。発電用資産が増えれば増えるほど、事業報酬は大きくなる。そのため、原発のような何千億円もする巨額な発電用資産を建設したほうが、事業報酬も増えることになり、原発建設推進の大きな誘因になっている。
ゴミも資産に含まれる
 不可解なことには、原発では資産の中に使用済み核燃料まで含まれていることだ。一般的にはゴミとしか思われない使用済み核燃料が、ここでは資産として扱われているのだ。
 営業費と事業報酬を合わせた金額から、同業他社へ販売した電力料収入を差し引いたものが「総原価(電気料金収入)」とされる。電気料金体系は企業(工場含む)と一般家庭では異なるが、基本的に
・総原価÷販売する電力量=電気料金の平均単価
となる。
<総括原価方式の計算式>
・営業費=人件費+燃料費+修繕費+その他(税金など)
・事業報酬=発電用資産×報酬率(3%)
・総原価=営業費+事業報酬−他社へ販売した電力料収入
・電気料金の平均単価=総原価÷販売する電力量
 
 前述した(2)の計算式に限りなく近い総括原価方式に基づき、東電が販売する電力の
 ・売価
 ・原価
 ・利益

に対する考え方を検証してみよう。
原価低減の意識が働かない
 売価にあたる電気料金の平均単価は、消費者のニ−ズを反映した自由な価格競争によって決まるものではなく、供給側の都合で決まる独占価格に近いものである。電気料金は単に計算するものに過ぎない。そこには、消費者の要求に応えて電気料金を少しでも下げようとする企業努力が働かない。
 コストに相当する営業費も、1円でも下げて利益を出そうとする仕組みになっていないので、原価低減やコスト削減のインセンティブが働かない。

 さらに、最も不合理なのが、利益に相当する事業報酬の算出方法である。一般企業では少しでも原価低減・コスト削減の努力をして利益創出に苦労するが、この方式では事業報酬はあらかじめ算出方法や報酬率が決められていて、単純にコストに上乗せするだけなのである。一般企業のように利益創出に向けた地道な改善努力や、苦労の多い営業努力はまったく必要ない。地域独占に支えられた電力会社にとって、総括原価方式は電力会社が損をしない、儲かる仕組みであるから、何かを改善しよう、新しい仕組みに挑戦しようといった、カイゼンやイノベ−ションの取り組みが企業内部から起こってこないし、それどころかそうした取り組みをつぶしてしまう。
 消費者の要求を無視し、市場競争のル−ルに反し、カイゼンやイノベ−ションを否定したこのような不合理な総括原価方式が、なぜこれまで認められてきたのか?
すでに破綻した地域独占の言い訳
 それは、ひとえに経済活動や国民生活に不可欠な、「電力の安定供給」のためだとされる。電力会社は安定供給の義務と引き換えに地域独占が認められてきた。しかし、東電は福島原発事故による電力危機でこの義務を果たしておらず、そのうえ節電や電気料金値上げをめぐって消費者の不信を買っている。ただでさえ、日本の電気料金は国際的にも割高であって、さらに電気料金の値上げとなると、それならば東電をはじめ電力会社の甘い収益体質や儲かる仕組みとなっている地域独占、総括原価方式もいっそ廃止すべきであろう。
 現在、自由化は時代の要請であり、もはや電力を独占供給する時代ではない。発電業務と送電業務を分離して、既存の電力会社以外の「新電力」とよばれる新規事業者の市場参入を促し、電気料金が自由な市場競争で決められる仕組みに改めるべきである。
消極的な総括原価方式廃止論
 ところが現実的には、「諸悪の根源ともいわれる、不合理な総括原価方式を廃止せよ」との声は聞こえてくるが、大手電力会社はいまだに拒否の姿勢を貫いたままだ。
 原発を建設することによって利益が生まれる、現在の総括原価方式を続ける限り、原発推進の動きはなくならない。原価低減による企業努力ではなく、あらかじめ儲けが決められた不合理な総括原価方式を廃止しない限り、東電の思い切った体質改善や抜本的な経営改革は行われない。
 東電の甘い収益体質を支える総括原価方式を、できる限り早く廃止して、消費者の要求が反映された自由な市場競争によって決められ、創意工夫に富んだ改善努力やイノベ−ションの取り組みが生かされる電気料金体系に、即刻改めるべきである。
(文=野口 恒/ジャーナリスト)
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